テラーノベル
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人と付き合うのは正直億劫だった。
自分のペースを乱されるのも嫌だったし、どうしても付き合うとなるとついて回る恋人同士の行為が好きじゃなかった。実際押し切られて付き合っても、いざセックスになると呆れられて振られるとか日常茶飯事だった。
もう面倒くさい、俺恋愛向いてない。
そう思ってたんだけど。
「翔太ぁ、付き合おうぜ」
「は?ヤダ」
「そう言うなって、お試しでいいからさ」
「やーだ」
俺に迫ってるのは佐久間だ。これだけヤダって言ってるのに食い下がってくる。
「なんでそんな嫌なんだよぉ。俺の事嫌い?」
「え…」
急にしおらしくされて調子が狂う。長いこと一緒にいるメンバーだし、嫌いとかは全然ない。
「そうじゃないけど」
「じゃ、何で?メンバーだから?」
「そうでもなくて……」
段々歯切れが悪くなってくる。はぁ、とため息をつくと佐久間がおずおず覗き込んできた。
「付き合い長いし言うけどさ」
「うん」
「俺、マグロなんだよ」
佐久間がきょとんとした。
「何つーか、あんま相手にあれこれしたくねぇの。恥ずかしくて避けてたら尚更できなくなって、いつも相手に愛想尽かされんの」
俺が悪いのわかってるけど、もう勝手に期待されて勝手に幻滅されて面倒くさいから付き合うとかしたくない。とそこまで言うと
「お前何言ってんの?」
と佐久間が口を挟んだ。
「え?」
「いや、ネコになればいいじゃん。てか俺相手にお前自分がタチだと思ってたのかよ」
「え?えっ?」
「まぁまぁ、俺に任せろって。ほら行くぞ」
頭の中が整理できないまま、佐久間に手を引かれていく。今日の現場から美味しいラーメン屋が近いから、仕事の後行くつもりで車で来ていたらしい。
駐車場に辿り着いて、佐久間の車が見えてきて、助手席に押し込まれるようにして座る。
エンジンをかけながら佐久間は『とりあえずメシ行こうぜ』といつもの笑顔を見せた。
「…おぅ」
俺がままならない思考のまま気の抜けた声で返事をすると、車はゆっくりと発進した。
コメント
5件
いきなりぶっ込んでる笑笑
いきなりセンシティブに向かってて最高