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「そうだ、この後は少し散歩にでも行かないか? 夕暮れ時の散歩もなかなかいいものだから」
「あ、はい、行きます!」と、即座に返事をして、お散歩で気分を変えたら言えるかも……と、密かに考える。
コーヒーを飲み終わって、彼と連れ立って部屋を出た。
手を繋いで、夜風が穏やかに吹く中を、二人並んで歩く。
お風呂から見た時には、やや暮れかけていた空は、もうすっかり日が沈んで濃紺に色づいて、「……綺麗」と呟いて見上げた先には、一番星が輝いていた。
「ああ、とてもな」
──ポツポツと会話をしながら歩いてきた道なりには、広く大きな河に沿って遊歩道が伸びていて、川面には対岸に立ち並ぶビルやネオンの光が反射して、キラキラと煌めいて映し出されていた。
「そこのベンチに座らないか?」
促されて、川辺りのベンチに腰かけると、
「……何か、話があったんだろう?」
そう彼の方から問いかけられた。
「……気づいていて」
「ああ、何でも聞くから。言ってみてくれないか」
私が話しづらそうにしてたから、彼がわざわざ外に連れ出してくれたんだと、今になって気づくと、その心遣いにせめても応えたいと感じた。
でも今度こそはと意気込んでみたものの、何からどう言えばいいのかがまるでわからなかった。
だって、合鍵がほしいと甘えたなお願いもしづらいけれど、かと言って、ストレートに合鍵をくださいと告白をするのは、もっと難易度が高い気がして……。だったらどう言えば……と考えれば考えるほど、ドツボにハマっていくみたいで、
「えっと、ですね……」と、切り出してみたのはいいけれど、その後が全く続けられなくて、私はまた口をつぐむしかなかった。