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🎭「おい」
🧣「いや…あなたの、来客…」
🎭「さっさと来いって」
🧣「…」
☀️「い、飯綱くーん!」
🍶「気張ってきぃ」
🦐「わーいってらっしゃーい」
今は昼休み。飯綱、凛太郎、晴明、恵比寿の4人は仲良く弁当を食べていた。参組の生徒の話で盛り上がったり、凛太郎にさっさと5000円返せと迫る飯綱を止めたり。割と楽しく過ごしていたが、突如学園長がやってきた。最近も例に漏れず校舎をぶっ壊し3時間正座させられていた。心当たりしかない3馬鹿は青ざめ、恵比寿は青ざめた3人を見て笑っている。しかし、今回は校舎破壊の件ではないらしく、飯綱の抵抗虚しく首根っこを掴まれ学園長室へ引き摺られて行った。椅子から落とされた時点で、というか仮面を外し『蘆屋道満』その人としてやってきた時点で、飯綱は抵抗もめんどくさくなったのか、大人しく学園長室へ引き摺られて行った。その顔は恐ろしく無表情で、虚空を見つめていた
☀️「どうしたんだろ…」
🍶「来客いうとったから…接待やろ」
☀️「接待?!」
🍶「晴明くん…飯綱くんと過ごして何をまなんだん」
☀️「?」
🍶「あれはコミュ力が服着て歩いてるようなもんやろ?」
☀️「はっっっ!!!」
🍶「せや。僕らとは真反対の世界の住人や」
☀️「学園長慣れてそうなのに…」
🍶「疲れるやろ?」
☀️「うん」
🍶「そういうこっちゃ」
🦐「前もあったんですか?」
☀️「…あった?」
🍶「今年は…まああったけど、晴明くん授業出てた時やったなぁ」
☀️「へー」
🦐「無視ですか?」
晴明と凛太郎は、友達が多かったわけではない。凛太郎も、飯綱経由で仲良くなることが多かった。圧倒的に飯綱に負けているもの。衛生観念でもなく経験でもなく。コミュニケーション能力の差である。秦中飯綱を一言で表すならそうなる。圧倒的陽キャ。それでいて周りにはすぐ馴染むし、秒で友達も作る。最早共通の敵とも言えるだろう。凛太郎は恵比寿のことなど視界に入れていないようだ。凛太郎は恵比寿を毛嫌いしている節がある。こうして恵比寿といる時だけは飯綱のたかはし明アレルギーも頷ける
🍶「ま…有り余るコミュ力使ってせいぜい苦しめバカ中」
☀️「ない方の気持ちも考えろー!」
🦐「わーすっごい理不尽な恨みつらみだね」
🧣「(後で晴明と凛太郎は切り刻んでやる)」
🎭「…飯綱くん。茶請けをお願いしても?」
🧣「分かりました」
何やら不愉快な気分になった飯綱は腹いせに晴明と凛太郎をぶった斬ろうと考えながら学園長室の冷蔵庫の中から菓子を選んでいく。これは雇われた時からの仕事だった。飯綱はコミュニケーション能力がずば抜けて高く、おまけに動物妖怪である。勘がよく、こうした交渉の際には非常に使えるのだ。飯綱も学園長がそういう目的で自分をこんな睡眠導入音楽室のような場所に同席させるのも理解しているし、学園長も飯綱が人知れず眠気と戦っているのを知っている。学園長としての自分のところに来る妖怪など、政治的な話など、交渉関係がおおい。飯綱にとっては英文を10倍速で流されているようにしか聞こえないだろう。飯綱の頭が底抜けに弱く、情報が漏れないのもまたこうした場に同席させる理由だ
🧣「お待たせしました」
🎭「…ありがとうございます」
飯綱が冷蔵庫から出してきたのはクッキーとロールケーキであった。学園長は、仮面の下で眉を寄せた
🧣「お、終わった…」
🎭「…『クロ』、か」
🧣「はい。視線的にも…貴方何したんです?」
🎭「さあな。何だと思う?」
🧣「…手出しちゃいけないやつに手出しましたね?」
🎭「ったく…わかってんならいちいち聞くんじゃねえって…」
🧣「あんたも俺らが校舎壊した後に理由聞いてくんじゃねーか」
🎭「それとは話が違うのに気づけ」
🧣「俺の脳みそ幼稚園児以下っすけど?」
🎭「んな幼稚園児いたら天才だっての…」
昼休みも残り10分を切り掛けた頃。ようやく客は帰った。しかし、飯綱が出した菓子は、『クロ』と言った。こういう来客の際に飯綱の勘を知るためにクッキーとロールケーキ、シュークリームとロールカステラは必ず冷蔵庫に入っている。ちなみに、賞味期限が近づくと飯綱にあげている。といっても、子供達にあげているのだろうが
🎭「黙ってついて来い」
🧣「…もちろん」
🎭「…」
🧣「…あ、そういえば、イイのが入ってましたね?」
🎭「ほんっとクソガキ…持ってけ。どうせ雛鳥どもと食うんだろ?」
🧣「雛鳥て…」
🎭「金と部屋の衛生的なものが杜撰な長男」
🧣「あんたもだろ」
🎭「街を歩くたびに不良に絡まれる次男」
🧣「…」
🎭「好き嫌い多い三男…おら、ちゃんと面倒みろ 」
🧣「へーへー…。あ、学園長も一緒に食べます?」
🎭「…食うわ」
🧣「学園長と菓子くおーぜー」
🍶「よくもまあ学園長から巻き上げれんな」
☀️「ね」
🎭「…」
🦐「おかき…」
🧣「あーほらっっ。まんじゅうやっから我慢しろ」
🦐「ありがとうございます」
飯綱が学園長からお菓子を巻き上げてくるのは最早恒例行事だ。というか、普通学園長がお菓子を買ったかなんて気づかないのだ。そして、学園長相手にお菓子を巻き上げてくる遠慮のなさと半殺しにされる覚悟。これら3つを満たすのなんて飯綱くらいだ。3つ目に関しては、学生時代しょっちゅう拳骨から絞め技、回し蹴りにアッパー。様々な学園長流教育的指導を受けてきたため、そこらへんの感覚が麻痺っているのだろう。それは凛太郎にも言えるはずだが、なぜ飯綱だけなのか。理由は簡単。飯綱は反省しないのだ。怒られている時も普通におっさん呼びするし、じじいと呼んでぶっ殺されかけても次の日にまたじじいと呼ぶ。まはや反省しないというより覚えていないのではと思いたくなるが、覚えているのにその行動にでるのだ。それ以上琴線に触れないようにしていた凛太郎の努力を無に還すのも飯綱だ。むしろ、もうちょっと取ってきてもらわねば学生時代に巻き込まれてついでに殴られたわりにあわない
☀️「おいしい!」
🧣「いいやつ買いましたね」
🎭「だいたいお前は高いのから持ってくじゃねーか…」
🧣「あー…?まあそうなのかもっすね」
🍶「これしかなかったん?おかきて、じじくさない?」
🧣「あーあるにはあったけど…多分これが1番高いやつ。それにじじくせえって言われても買ったの俺じゃねーし」
🎭「クソガキども。俺が優しいうちに言っとくことがあんじゃねーのか?」
🧣🍶「?あんたが優しかったことってあったっけ?」
🎭「ちっっ」
見事、2人揃って琴線に触りまくった。結果、アイアンクローにより頭を割られている
🧣「ってぇ…」
🍶「ぐすっっっっ…学園長のいけず〜」
🎭「数分前のてめえらを恨め」
きっかり4分ほどアイアンクローを喰らっていた飯綱と凛太郎。飯綱は顔をさすってはいるもののお菓子を食べ続けている。凛太郎は泣いている横で
🍶「そういうことじゃないねんクソジジイ!!絶対僕の方が強かったで?!」
☀️「り、凛太郎くん…」
クソジジイ。怒りからか禁止ワードを気にする余裕がないのだろう。晴明はただおろおろするばかりである。横の飯綱を見たが呑気にお菓子を食べ続けている。恵比寿も止めてくれる気配はない
🎭「てめえ鬼なんだから多少強くても問題ねえだろ」
🍶「飯綱くんは殺しても死なへんで?!」
🎭「……………………右利きだからな、俺」
🍶「その沈黙が語ってんねん」
🧣「?俺はアレじゃないぞ?」
☀️「いや…君も違う意味で死なないと思うよ…」
アレ…飯綱曰くアレはゴキブリの生命力も凌ぐらしい。多分殺しても数秒で生き返る、というのがアレに対する飯綱の評価だった。しかし、晴明からすれば、虫に恐怖した凛太郎の全力ビンタを食らっても、職員室の壁にめりこまれても、職員室の壁にヒビが入るほど頭をぶつけてもケロッとしている飯綱も大概死なないと思っている
🦐「でも確かに、学園長って秦中先生のこと気に入ってますよね」
🍶「こんなメガネの何がいいっちゅうねん!」
🎭「仕事早い。1人なら問題起こさない。家事できる。コミュ力高ぇ 」
☀️🍶「ぐはっっっっっ」
晴明と凛太郎は、自分ができないことをストレートに揃えられ、ダメージを受けた。1人なら問題を起こさないのは2人には当てはまらない。晴明は生まれながらの不幸体質で校舎が爆破されるか黒板や壁に穴をあける。凛太郎は虫がでれば壁をぶち抜くし、校内で酒を飲もうものなら…。その点飯綱は大人しかった。学生時代は類が友を呼びまくって学園長の胃痛の原因トップ3は飯綱の友達であった。凛太郎、柳田、信。信は目だった騒ぎは起こさなかったが、やはり治安が悪かったからだろう。飯綱とともに喧嘩に巻き込まれてれることが多く、遠慮もなく校舎に穴を開けていた。クラス単位でみれば間違いなく弍年参組がぶっちぎりの校舎破壊額だが、個人単位で見れば飯綱達の世代の記録など超えられるとは思えない。しかし、真面目に働くという命をかけた誓約の元、しっかり飯綱は真面目にはたら…こうとしている。会議資料も昨日言えば今日の朝には持ってくる。勉学はからっきしでも仕事はできる飯綱を重宝しないわけがない。なんせ自分の仕事も減るのだから
🧣「便利屋じゃねーんだけどな…」
🎭「てめえ食うのやめろや」
🧣「せっかく高いの食べてるので」
🎭「…」
🦐「絶対それだけじゃないですよね?」
🎭「…あ?」
🦐「重宝する理由は分かりました」
🎭「…」
🦐「気に入っている理由が知りたいのですが」
学園長と恵比寿の間に剣呑な空気が流れ始め、晴明と凛太郎は飯綱を盾にするように後ろへ周り、ついでにおかきも飯綱の後ろから食べている
🧣「あれだろ。ほら、学園長1000年生きてんだろ?26なんて孫みてーに見えんだろ」
🦐「…」
🧣「それに、俺が学園長の部屋片付けてるしな」
🦐☀️🍶「は?」
🎭「…」
🧣「逆にお前ら、学園長に生活能力があると思ってんのか?」
🍶「…!やから飯綱くんたまに駅と逆の方行くんやな?!」
☀️「ああ〜!そういうことか!」
🎭「おいクソガキどもどういうことだ…?」
納得する晴明と凛太郎の頭をかち割りたくなる学園長だったが、それよりも
🎭「てめえほとんど食ってんじゃねえか」
🧣「だって。学園長から菓子巻き上げてもあんま食えないですし」
🎭「巻き上げんな。…いや、だいぶ持ってってないか?」
🧣「晴明たちが食いついたら譲ってるんで。今回食いつき悪いですし、俺も食べようかと思って」
🎭「…」
🧣「!やべえ授業だっっっ」
🍶「早よいえや秦中!!!」
🧣「俺はてめーの母親じゃねーんだが?!」
☀️「もうそんなもんじゃない!」
騒がしく職員室を出ていく三馬鹿ども。その背を見送り、恵比寿に向き直った
🎭「で?なんだよ。…あんだけしつこかったんだ。なんかあんだろ?」
🦐「いや〜…本当に、アレだけで気に入っているんですか?」
🎭「他があっちゃまずいのか?」
🦐「そうですね〜…。場合によっては、ね?」
🎭「…忠告だ。あのガキどもに…いや、今回は飯綱か。飯綱に手を出してみろ…。たとえ神だろうがぶっ殺すぞ」
🦐「そうですか。えらく肩入れしてるんですね。教育者としてそうなんです?」
🎭「…あの3人に関しては、俺として…蘆屋道満として付き合ってんだ。優しい学園長は休業してんだよ」
🦐「…」
🎭「とにかく…手を出すな。万一は、俺が全責任を負う」
🦐「ほんっっと…ムカつく」
🎭「お互いにな」
恵比寿と学園長…道満は互いの本当の思惑を探り合ったが、双方探りきれはしなかったらしい。恵比寿は、学園長のあの3人の気に入り方…特に飯綱はまた別の意味で気に入られているというか…肩の入れ込み方が違う。もちろん、晴明にもまた違う肩も入れているが、恐らく同じくらいには深く肩入れしている。元大陰陽師・蘆屋道満…今はぬらりひょんであるが、そんな簡単に誰かの肩を持つとは思えない。それ故に探っていたが、1000年生きているだけあって、恵比寿であっても上手くは探れなかった。道満も、執拗に追及してくる恵比寿に違和感を感じていた。3人の中でなら、恵比寿がよく話しているのは飯綱だった。一重に飯綱の面倒見の良さが現れたものだと思っていたが。今回の言動から、恵比寿が何かしら飯綱から感じ取ったのかもしれない。最悪、勘づかれている
飯綱達の知らないところで、黒い影はうごめいていた。