「他の奴らは逃げたが、シュウ…おまえは、どうすんだよ?」
カイが、シュウの目をじっと睨み据える。
「……おまえが、この俺にたてつくとか……」
「たてついてるわけじゃない……俺は、俺の居場所が、欲しいだけだ……」
言いかけるシュウを、カイが制して告げる。
「自分の居場所が欲しいのは、あんたも同じだろ……」
カイの思わぬ言葉に、シュウが、「なんだと……」と、低く声を漏らす。
「……。……おまえは、俺の代わりなんかじゃねぇだろ……おまえは、おまえだろうが……」
「何を言ってる、カイ……」
シュウと真正面から対峙しつつ、
「……俺がキラのヴォーカルになったからって、おまえはいなくならない……。
俺がいても、いなくても……おまえは、おまえだ……」
カイが淡々と言い含めるようにも話した。
「おまえに、俺の何がわかる……」
シュウが、カイの胸ぐらをおもむろにつかみ上げる。
「殴りたいなら、殴れよ…」
カイの挑発に、シュウがギリッと拳を握りしめる。
「殴れよ…ほら…」
さらに煽るように、カイがわざとシュウに顔を迫らせる。
シュウの拳が、カイの鼻先に振り上げられるも、
「……殴らねぇ……。……おまえなんか殴っても、俺の場所は見つからない……」
その寸前で、拳は力なく下ろされた。
「……俺は、俺の居場所ぐらい、自分で見つけてやる……」
ギッと強く睨み付けて言うシュウを、カイが「ふん…」と、軽くあしらう。
「とっとと、見つけろよ」
微かな笑みを浮かべて口にするカイに、
「おまえに言われなくても、見つけてやる……この俺が、おまえになど、劣るはずがない……」
シュウが唇をグッと噛み締める。
「ああ……だったら、もっとのし上がって来いよ。俺なんかいなくても、KILLAをもっと上にまで、引き上げろよな、おまえが……」
「……言われなくても、そうしてやる……」
シュウがようやくカイから離れ、背中を向けた。
「俺はもう、キラを脱けるからな」
カイがその後ろ姿にそう投げかけると、
「……ヴォーカルは、俺だ。……おまえなどいなくても、いい……」
シュウが、振り向くことなく返した。
「……シュウ」
「……なんだよ?」
行きかけていたシュウが足を止める。
「……今までのことには、感謝もしてる……」
ささやかなお礼を口にするカイに、
「……うるせぇよ」
シュウが一言を呟いて、
「……感謝すんなら、ひとりでも力見せてみろよ…」
カイをふっと一瞥すると、廃屋から歩き去って行った──。