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もしその場の勢いで適当に言ってるだけだったら、俺一人でがっついてるみたいで恥ずかしいし…
一応、念のための確認を、と思ってそう聞いてみると。
尊さんは、また可笑しそうに笑って言った。
「逆に誰がいるんだ」と。
「で、ですよね!俺、一人で浮かれてたらどうしようと思って……あはは」
「あのとき、目合ったろ?気づいてたからな」
尊さんが少し肩をすくめて微笑むと、手元の缶コーヒーをゆっくりと傾けた。
「犬みたいにあからさまに嬉しそうな顔してたの」
「そ、それほどじゃ…!!」
恥ずかしさで一気に頬が熱くなる。
でも、こうして二人きりで並んで喋るのは、どんな高級なレストランで食事をするより楽しくて。
「た、尊さんとディズニーとか…妄想膨らんじゃって…つい」
「変態」
「そ、ソッチの妄想じゃないですよ?!」
「ふっ…冗談だっての」
「もーーーっ!またからかって…」
冗談を交わしながら過ごすこの時間は、砂時計の砂のように一粒一粒が愛おしい。
昼間の賑わいとは違う、静かな夜の空気が俺たちを優しく包み込んでいくようだった。
◆◇◆◇
最終日の10月19日の朝。
ホテルをチェックアウトし、俺たちは首里城へと向かった。
2026年の完成に向けて復興作業が進む正殿。
「見せる復興」として公開されている骨組みや職人さんの作業風景。
巨大な素屋根の中で進む緻密な作業は、今この時期、この瞬間にしか見られない貴重な姿だ。
「形を失っても、こうしてまた作り直されていくんだな」
尊さんが、自分自身に言い聞かせるように呟く。
その言葉は、一度壊れかけたものを自分たちの手で修復し
前より強くしていこうとする俺たちの関係にも重なる気がして、不意に胸が熱くなった。
たとえ形が変わっても、本質はより強くなっていくんだなと。
最後は国際通りで自由行動となった。
お土産屋さんがひしめき合い、修学旅行生や観光客で溢れる中、俺は周囲の目を盗んで尊さんと合流した。
「紅いもタルト、思わず買っちゃいました。尊さんは何か買いました?」
「俺はこれだな」
尊さんが見せてくれたのは、意外にもシーサーの小さな置物だった。
沖縄らしい赤と黄の鮮やかな彩色が目に飛び込んでくる。
勇ましいのに、どこか愛嬌がある。
「可愛い……!尊さんこういうの好きなんですね」
「お守り代わりと記念にな」
そう言って、尊さんはそれを大切そうにポケットに仕舞った。
◆◇◆◇
空港に向かうバスの中では、もうすでに心地よい疲れが回ってきていた。
窓から見える街並みは、徐々に夕暮れの色に染まってゆく。
帰りは運よく尊さんが隣の席で、よりリラックスすることができた。
「長く感じる三日間でしたけど……帰るとなると寂しいですね」
「…疲れたか?眠そうだな」
「はは…こんなに楽しい社員旅行、初めてだったので…今、すっごく充実してる気がします」