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光と闇の魔法は均衡を保っているという話は先ほど聞いた。
しかし、私が思っていた以上にこの世界に魔法というのは特殊だった。
そもそも、魔法は皇族や貴族、ある一部の人間しか使えない稀少なものらしい。そのため、平民で魔法が使えるものは非常に珍しいとのこと。
魔法を扱える人間は、魔力量が高ければ高いほど優遇され、運がよければ皇帝直属の魔道士騎士団に入れたりもするらしい。
そして、魔法を使うために必要なものが、オドとマナと呼ばれるもの。
まず基本的には、体内のオド(これが魔力量というものらしいが)を使い魔法を発動させる。その量は個人差があり、体内のオドの量で使える魔法も決まってくるらしい。
またマナと呼ばれる自然界に存在する魔力を使ってでも魔法を発動できるらしい。
マナは空気中にも存在し、それを体内に取り込むことで魔法を発動させる。しかし、大抵の魔道士は体内のオドを使って魔法を発動させる。理由は簡単だ。空気中のマナを使うことでその周辺の環境に影響を及ぼすからである。マナは生き物だけではなく植物の成長、維持にも必要だからである。
「聖女様は、体内の魔力量が非常に多いですので、普通なら発動できない魔法でも使うことが出来るでしょう」
「あーはい……」
今の時点で頭が痛い。
オドとかマナとか分からない。えっと、要するに体内にある魔力を使って魔法を発動するか、自然界の魔力を使って魔法を発動するかって事よね。
私はちらりとリュシオルを見た。リュシオルは真剣に話を聞いていて、如何にも分かってます見たいな顔をしていた。実際の所は分からないが。
「すみません、前置きが長かったですね。そして、光魔法と闇魔法ですが……」
光魔法。
一般的な魔道士は皆、光魔法の適性者である。
光魔法の最大の特徴は日が出ている、若しくは光を浴びている間のみ使用することが出来るということだ。暗い洞窟や夜間は豆鉄砲並みの魔法しか使えず、その効力は格段に下がる。
そのため、光魔法の適性者はライトやランプなど常備し腰からさげていることが多い。
光魔法という大きな組み分けの中に火や水や木、風や土といった様々な属性がある。しかし、基本どの属性の魔法も威力や規模は変わらない。
ただ、得意不得意はあるため、自分の得意とする属性を重点的に鍛える人が多い。勿論日が出ている間しか力は発揮できないが。
闇魔法。
これは負の感情を糧にして行使される魔法である。そのため、負の感情が大きすぎると闇魔法が暴走し、最悪の場合、闇に飲まれる可能性がある為、忌み嫌われている。呪術や洗脳といった魔法は闇魔法しか使えない。
光魔法と真逆で日が沈んだ、光のない空間でその力を発揮する。日が出ている時間帯は、呪術や洗脳といった魔法も成功率が格段に下がる。
光魔法同様、火や水などの属性がある。ただし、光魔法と違い魔法の色が汚い。
そして、闇魔法を使い続けると、負の感情に飲まれ、闇落ちし人間は理性を失う。そうして、本能のままに行動する。そうなれば、もう手遅れで……
「光魔法を使う者でも感情に左右され、闇落ちし暴走する可能性もあります」
神官はそう言ってため息をついた。闇落ちした光魔法の魔道士はかなり厄介らしい。何せ、日が出ていようが出ていまいが魔法を行使できるのだから。
(ということは、エトワールは後者ね……きっと)
もし、一人も攻略が出来なければ私は闇落ちすることになるのかもしれない。
闇落ちしたらどうなるのかな? と気になったけれど、これ以上深く考えないことにした。恐ろしくて考えたくもない。
「詳しく説明して下さってありがとうございました。とても分かりやすかったです!」
「いえ、お役に立てたようで何よりです」
神官はにっこり微笑んだ後、私をじっと見つめた。
何か、顔についているのかと私は顔中ベタベタと手で触る。その様子を見ていたリュシオルに何もついてないから大人しくしなさい。と背中を叩かれてしまう。
「それでは、早速で申し訳ないのですが、聖女様の力を見せて頂きたいのですが宜しいでしょうか?」
「えっ、今からですか!?」
「はい」
私は横にいたリュシオルを見た。
「いいんじゃないでしょうか。エトワール様。この後予定も入っていませんし。これから、災厄を迎え撃つことになると思いますし自分の力を知って損はないと思います」
確かにそうだ。リュシオルの言うとおりだ。
でも、まだ心の準備が……と私が言う前に神官はついてきてくださいと歩き出してしまった。
引き止めようにも、既に行ってしまったので私は諦めてついていく事にする。
部屋を出て廊下を歩く。
長い通路を歩いていると、ふと剣を振り下ろす音や叫び声が聞こえてきた。そこには数人の騎士と思われる人達が汗を流しながら、訓練をしていた。
その様子に思わず見入ってしまう。
すると、後ろから咳払いをされた。振り向くと、リュシオルが少しだけ呆れた表情で立っていた。早く歩けと急かしてくる。
「気になりますか? 聖女様」
「あ、はい。えっと、彼らは騎士……なんですか?」
私は気になっていた事を尋ねた。神官は縦に首を振って、神殿の横に訓練場があると教えてくれた。
神殿の横にあるんだ……と不思議に思いつつも、興味本位で覗いてみたいなあと眺めていると私の心を読んだのか、神官は後で見学しても良いですよと笑ってくれた。
「最近、平民だった者が騎士団に入団しまして。実力があるからこそ入団試験を合格できたのですが、平民と言うだけで……」
と、神官は難しい問題だと眉間にシワを寄せた。
やっぱり平民上がりの騎士って、いい風に思われていないんだ。グランツもそうだったし……
そこまで考えて、私は神官にもう一度尋ねた。
「え、その平民上がりの騎士……? ってここにいるんですか」
「え、ええ……そうですけど、それがどうかされましたか?聖女様」
私はまさかと思い、リュシオルを見ると彼女はそうだろう。とコクンと頷いた。
「わ、私、その終わったら見学させて貰います!」
「……ええ。どうぞ。騎士達も驚くことでしょう」
神官は目を丸くした後、嬉しそうな顔をした。
私の知る限り平民上がりの騎士はグランツしかいない。これでようやく、リース以外の攻略キャラに会えると心の中でガッツポーズを決めた。