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その後、神官に連れられて到着したのは大きな扉の前。
神官がその扉を開けるとそこは、大きな広場になっていて、その真ん中には噴水があった。
「わー! とっても綺麗な場所ですね!」
私は感動して辺りを見渡していた。
空気も澄んでいるし、水の音以外聞こえないとても静かな場所だった。
「ここは、特殊な魔法がかかっているので部外者は入れないようになってます。なので、ここならどれだけ魔法を放っても大丈夫ですよ」
「こここ、壊してもですか!」
「はい」
神官は笑顔で言った。
先ほど水晶玉を壊してしまったせいで、私は少し不安になったが、気にしないことにした。
だって、ここで使っていいって言ってるもんね。
神官は、壊してもここにかけられてる魔法によって修復されると説明してくれたため、私は安心した。話は嘘くさいけど、信じることから始めよう、何事も。
多分この辺一帯壊れても修復されるよね?うん。きっとそうだ。
そう私は自分に言い聞かせた。
「聖女様、試しにあの木に向かって魔法を放ってみて下さい。火でも水でもかまいません。勿論、燃えても折っても問題ないですから」
と、神官は大きな木を指さした。斧で一日中切りつけても切れないような大木だ。
(というかこのおじいちゃん神官さん物騒なこと言いすぎなのよ)
私は神官を見ながら溜息をつき、取りあえず大木の前に立ってみた。しかし――――……
「魔法ってどうやって発動するんですか?」
振り返り、後ろにいた三人を見た。
リュシオルとルーメンさんは顔を合わせて困った表情をしている。神官に至っては苦笑いをしていた。
神官は、聖女様は魔力を持っているはずですが……と呟いていた。
私はそんな事言われても、魔法の使い方なんて知らないし教えても貰っていない。ヒロインストーリーでもボタンをポチッと押すだけだったし。
(リュシオル! ヘルプ!)
私は、リュシオルに助けてと目で訴えた。
すると、彼女は呆れたように溜息をつくと親指を立てて微笑んだ。
(使えない! 何よ! グッ…じゃないの! こっちは本当に困ってるんだから)
そして終いにはリュシオルは、聖女のくせに何も出来ないのかと言わんばかりの表情でこちらを見ていた。
もういい、こうなったらヤケだ。
私は大木の前で祈りを捧げるような格好をした。ゲームではこんな動作なかったけれど、祈る気持ちがあれば何か起きるはずだ。
私は目を閉じ、魔法を放つ自分を想像してみた。
(さすがに燃やすのはちょっとあれだから……そうね、雨でも降らせようかな。雨よ、降れ!)
私は心の中で唱えると、次の瞬間空から水が勢いよく落ちてきた。
私だけじゃなく、その場にいる全員の頭上に流れ落ちる大量の水。それはまるでバケツをひっくり返したかのように……いやこれは――――
(滝じゃん――――……!)
雨、ならぬ滝が止む……消えた頃には大木は倒れ綺麗な虹が出来ていた。
服も髪もびしょ濡れになった私と神官はお互いを見て固まった。
(え? これって、本当に私がやったの? 祈っただけで?)
私は目の前で倒れている大きな木を見る。
私はただ雨を降らそうとしただけなのに……こんな。
私が固まっていると、リュウオルとルーメンさん、そして神官が駆け寄ってきた。
「大丈夫! めぐ……エトワール様」
「聖女様! お怪我はありませんか? ご無事ですか?」
三人とも心配そうな顔をしている。
私は自分の手をまじまじと見つめ、そして神官の顔を見ると彼は目を丸くしていた。
「あ、あの……」
「さすがです! 聖女様! これなら砂漠をオアシス都市に……いいえ、海に沈めることすらできます!」
「え……えぇ」
神官は私の言葉を遮るように声をあげた。
ううん。だから何かスケールが大きいというか物騒というか。
私はまだ困惑していたが、神官の言葉を聞き流しておいた方がいいと判断し、そのまま聞き流すことにした。
神官が言うには、魔法はイメージ、つまり想像力が大事らしい。
魔法を使う時は、呪文を唱える必要は特にないらしく、しっかりとどんな魔法をどのように使うか明確にイメージできれば良いのだそうだ。
それなら、私の得意分野である。妄想や想像は大の得意だ。
けれど、さっき私がイメージしたのは、小雨だった。それなのに、滝が何もない空間からいきなり現れ、しかも大木まで倒してしまった。
体内の魔力が有り余っていると言うことだろうか。
まあ、何はともあれ結果オーライである。
私はホッとして、三人に笑顔を向けた。すると三人共私に笑顔で拍手をしてくれたので、私は少し照れて頬を掻いた。
「聖女様、今日はありがとうございます。またいつでもお越し下さい」
神官はそう言って深々と頭を下げたので、私は慌てて「はい!」と答えた。
取りあえず、今日のメインイベントはクリアした。魔力測定とプラスで魔法の試し打ち。
「あ、あの……こちらこそ、いろいろお世話になりました。絶対またきます」
と、私は神官に頭を下げた。
後ろでリュシオルとルーメンさんも同様に頭を下げているのが気配で分かった。
神官は、そんな私たちの様子に笑みを浮かべながら見送ってくれた。
「そうだ見学!」
私は噴水のあった広場を出た後、騎士の訓練場を見学するんだったと思い出し、ルーメンさんにこの後の予定はないか念のため確認した。
すると、特に用事はないとのことだったので、私は二人を連れて訓練場に向かうことにした。