テラーノベル
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春の少し冷たい風がスタジオの入り口を吹き抜ける。
朝七時。
まだ眠そうなスタッフが機材を運び、メンバーも一人、また一人と楽屋へ入ってきていた。
💜side
「ふぁぁ……」
欠伸を噛み殺しながらソファへ倒れ込む。
昨日寝たのは夜中の二時。
ゲームをしていたら気付けばそんな時間になっていた。
「眠……」
そう呟いた瞬間、頭の上に何かが落ちてくる。
コツ。
「いった」
顔を上げると、スポーツドリンクを片手に立っていたのは岩本照だった。
💛「朝飯」
💜「食べてない」
💛「やっぱり」
照は呆れたように息をつく。
だけどその顔はどこか慣れたものだった。
コンビニの袋を机へ置く。
中にはサンドイッチとおにぎり。
そして、俺が好きなヨーグルトまで入っていた。
💜「……え」
💛「昨日どうせ夜更かししてただろ」
💜「なんで分かるの」
💛「顔」
即答だった。
💜「エスパー?」
💛「違う」
💜「じゃあ超能力者?」
💛「違う」
💜「すごー」
笑いながら袋を開ける。
サンドイッチを一口頬張ると、照は満足そうに頷いて自分の席へ戻ろうとした。
その背中を見送りながら、ふっかは小さく笑う。
(ほんと面倒見いいなぁ)
昔から変わらない。
ダンスレッスンの頃も。
ジュニア時代も。
自分が何か忘れれば照が持っていて、体調を崩せば誰より先に気付いてくれる。
だから今さら特別だなんて思ったことはない。
“照だから”
ただ、それだけだった。
その様子を見ていた向井康二が笑う。
🧡「朝から夫婦してるやん」
💜「違う違う」
🧡「照くん、お母さんみたいやもん」
💛「誰がお母さんだ」
楽屋中に笑い声が広がる。
照も苦笑しながら肩をすくめた。
だけど。
“お母さん”
その一言だけが、胸の奥に静かに引っ掛かった。
────────
💛side
別に、お母さんになりたいわけじゃない。
世話を焼きたいわけでもない。
ただ。
深澤がちゃんと飯を食ってるか。
寝不足じゃないか。
無理して笑ってないか。
それが気になるだけ。
昔はこんなこと思わなかった。
なのに最近は違う。
誰より近くにいたい。
誰より最初に気付きたい。
そんな自分がいる。
「……重症だな」
誰にも聞こえないくらい小さく呟く。
この気持ちを自覚したのは、ほんの数日前。
だからこそ余計に苦しい。
十年以上隣にいた相手を、今さら好きになるなんて。
友達のままなら、ずっと隣にいられたのに。
恋なんて知らなければよかった。
そう思ってしまうくらいには、もう遅かった。
ゆんしょ
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絶対辰哉
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コメント
1件
第1話、読み終えました…! もうね、冒頭の朝の風景からふたりの距離感が伝わってきて、すごく好きです。 照くんが深澤くんの寝不足をすぐ見抜いて、ヨーグルトまで用意してるところ、優しすぎて胸がぎゅっとなりました。 「重症だな」って自分で呟くシーン、切なくて何度も反芻しちゃいました。 友達のままでいたいのに、もう気づいてしまった恋。この先どうなっていくのか、すごく気になります…!