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やがて、そうした狂信じみたファンは、だんだんと膨れ上がるみたいに増えていった。
あたしが、コンサートやテレビなんかで、パフォーマンスでウインクや投げキスをすると、
それを自分だけにされたものだと、勝手に思い込む──リオちゃんが、ボクにしかわからないようなサインを、ヒミツで送ってくれているんだと──。
そんなわけもないのに、彼らは本気だった。
ただのファンサービスのウインクが、彼らにとっては、『2人だけで会いたい』というあたしからのプライベートなメッセージにすり変えられ、
挙句には、『約束をしたのに、なんで会ってくれないんだ!』と、怒りにまかせたDMとかを、リオのオフィシャルアカウントに送り付けてくるようにもなった。
無視をして、向こうから引くのを待っていても、いつまでも同じような危ないメッセージばかりを書き込むファンは、事務所がブロックをしたけれど、
ブロックをしても、また新しいアカウントを作っては攻撃を仕掛けてくるだけで、ただのイタチごっこでしかなかった。
この頃からあたしは、既にファンが恐くなっていた。
リオを応援してくれる、うれしい存在などではなく、
七瀬リオに執着して付け狙っている、ただの気もちの悪い存在にしか、思えなくなっていた。
こんな手紙を送ってくるような人が他にも何千何万もいて、テレビの中の自分をいつもそんな目で見てるんだろうかと考えると、体の震えが止まらなくなるほどだった。
アイドルなんて、楽しいだけのものじゃない。
あたしは、いつしかそんな風に思わずにはいられなくなっていった……。
けれどまだ、実際には絡んでこないだけ、当時はマシだったのかもしれないと、
あたしは、まもなく気づかされることになる──。