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六魔将サンドルという名を聞いた瞬間―――
冒険者全員は震えて固まってしまった。
「六魔将サンドルだと…。」
フラムはその名に聞き覚えがあった。
―――と言うよりもここにいる全員がその名を知っている。
500年前の魔王アリスの率いる最強の魔王軍その幹部クラスを六魔将と言い、その伝説級のつよさからお伽噺として、ヌバモンド全土に伝承されているためである。
ヌバモンドで暮らしている者なら子供でも知っているほど有名だった。
「六魔将サンドルと出会ったら死を覚悟しろ。サンドルは非道の鬼…。」
そんな伝承が存在していたが、実際にその伝説上の存在の本物に出会うとは思ってもいなかった。
しかもこんな新しく発見されたダンジョンの奥底で。
―――と思考したフラムはハッとあることに気付く。
「ここに来ていた時からずっと感じていた違和感はこれだったのか―――」
「なぜ、最近発見されたにしては普通のダンジョンと同じくらい、いやそれ以上に古びているのか?」
「教えてやろうか?」
サンドルは、その疑問に答えた。
「それはここが既に500年前から存在するダンジョンだったからだよ。」
「何だと…!?」
「こんなところは数百年も発見されないのはおかしいだろ!」
「ここは俺様の結界で隠遁していたから誰にも発見されなかった。」
「俺様はアリスが勇者と相打ちしてからずっとここで眠っていた。」
「だが、最近とんでもない魔力を感じて起きてしまった。」
「その時結界も解いてしまったから人間共が発見したんだろうな。」
「さぁ疑問も晴れたことだし、遊びの続きをしようぜ!」
サンドルは、両手を広げこちらの攻撃を歓迎している。
「フラムよ。気持ちは分かるがここは引かねぇか?」
レッドカーネーションのジャンが提案した。
「みんなは転移石逃げろ!僕はコイツを殺す!」
「無茶よ!?みんなで逃げましょう。奴は伝説上の存在よ!」
エリアもジャンの提案に賛成する。
逃げるための算段をしていると、サンドルは絶望の一言を放った。
「おいおい!逃がすと思っているのか?」
「さっきここに結界を張った。」
「だから転移石は使えないぞ!」
「!?」
一同は絶望した。
冒険者の中には死をリアルに感じたため、失禁した者や嘔吐した者も少なくない人数いた。
「想定外だ…。このダンジョンにここまでヤバい奴がいたなんて…。みんな済まない!!」
フラムは誠心誠意冒険者一堂に詫びた。
「今は絶望している場合じゃないでしょ!」
「転移石が使えないなら、奴を倒すしかないでしょ!」
ジャンは、震える自信を奮い立たせ、剣をサンドルに向けた。
「そうだな!奴は二コラの仇、絶対に僕が倒す!」
「行くぞ!ジャン!」
「おう!」
フラムとジャンはサンドルに向かっていた。
「いいね~そういう意気込みが大事だよ。」
「その人間のほんの少しの希望に縋りついてから絶望する表情に変わるまでがたまらなく好きなんだ。」
「うおおおおぉぉぉ!」
ジャンはサンドルに連撃を振るうが、サンドルは全て人差し指で受けきる。
そのすぐ後方でフラムが魔法を詠唱していた。
「赤魔法:フルブレイズ!」
フラムの右手から超高熱の火柱が放たれた。
「ほう、人間にしてはなかなかいい魔法だ。」
「だが俺様には効かない!」
「灰魔法:魔法却下(ロストマジック)!」
その瞬間フラムのフルブレイズがかき消された。
「何だと…!?」
魔法が消えるなんて現象を初めて目の当たりにしたフラムは絶望してしまった。
「おいフラム起きろ!奴の攻撃が来るぞ!」
ジャンは絶望したフラムに喝を入れる。
「灰魔法:生命消失(ロストライフ)!」
サンドルの右手がフラムに向かって行く。
「フラム!!」
ジャンがフラムを庇って、サンドルの右手が捕まれる。
「うああああああぁぁ!!」
ジャンの悲鳴にも聞こえる断末魔がダンジョン内に響く。
ジャンはサンドルの魔法により、その生命力が奪われ、ミイラのように干からびて絶命した。
それはほんの一瞬のことだった。
「きゃあああああああ!」
ジャンが死んだことによりエマが悲鳴を上げて、サンドルに向かって走った。
それはジャンが死んだことによるショックとサンドルに対する恨みからくる行動であった。
「なんだ小娘?貴様も死にたいのか。」
「灰魔法:生命消失(ロストライフ)!」
「あああああああ!」
エマもジャンと同じように生命力を奪われ絶命した。
「さっそくおもちゃが二つ壊れたか…。」
フラムはさらに絶望の顔で表情が歪んだ。
「う~ん。俺様の魔導ゴーレムを倒した者がいると思って少しは楽しめると思ったのだが、思い違いだったか…。」
何のことを言っている…?
フラムは既に思考することを放棄しかけていて、その疑問を深く考えていなかった。
「フラム!立つんじゃ!」
「セヴラン…。」
絶望の表情をセヴランに向ける。
「全くこれだから若いもんは!」
「なんだ爺さん!」
「この若造を庇うってのか?」
「死ぬのはおいぼれの方がいいに決まっている!」
「赤魔法:紅蓮炎舞(ぐれんえんぶ)!」
セヴランの手から強力な赤魔法が詠唱され、6匹の炎の竜がサンドルに向かって攻撃を仕掛けた。