(あいつどこ行ったんだよっ…!)
本来なら大声で叫んだ方がいいのかもしれないが、俺らはそこそこ有名なのでここであいつの名前なんて叫んだ日には多分ネットニュースどころの騒ぎではない。
俺は街の外れの海岸に向かっていた。あいつは海が好きだからもしかしたらというちょっとした期待だった。浜辺に人はおらず、静かだった。海の方を見ると遠くに肩くらいまで水に浸かってる人がいた。顔は見えなかったけど確信した。あれは涼太だ。
履いていたサンダルを脱ぎ念の為と持っていた2人分の鞄を投げ捨て、浜辺にダッシュし涼太がいるところまで近づいた。そして俺はあえて涼太の所に行かないでそのままそっと海に入り首らへんまで海に浸かった。足はギリ届くか届かないかくらい。実質自ら溺れに行ってるようなもん。そうすれば、
「翔太っ!!!!!」
って涼太が慌てた様子で俺の所にくるから。
「何してるの翔太…!」
「…ははっ、さみぃな。お前こそ何してたんだよ…こんな所で。」
「…っ」
涼太の目から涙が零れて海に落ちる。綺麗だな…
「しょ、た…震えて…」
「…あぁ、お前みたいに、海に入ったりしねぇ、しな…今、まだ、ギリ冬、だし…」
「…陸、行こう、ねぇ、行こうって…」
「…先、戻っててくんね?寒くて、ねむ、い…」
「翔太っ…!!」
自分から海に入ったくせに体冷えて動けないとかだせぇな。そう思いながらも眠気に抗うことはできなくて、そのまま意識を手放した。
目が覚めると見えるのは白い天井。明らかに俺ん家じゃない空気感。
「あ、翔太!起きた?」
「…阿部?」
「うん。翔太ね、低体温症になってて舘さんが陸まで運んでくれたんだよ。」
「っ、そうだ、涼太、涼太は?」
「…舘さんね、翔太を運んだあとそのまま気を失っちゃって。低体温もだったけど、それ以上に精神的なダメージが大きかったみたいで…」
「…どこにいんの?」
「隣の病室で寝てるよ。ただ、誰も入れないんだよね。」
「何で。」
「翔太より状態が悪かったし…さっきも言った通り精神的ダメージが大きかったし、ここに来る前も何か思い悩んでいるようだったからってお医者さんに言ったら暫くは人に会わせない方がいいって話になったの。」
「…そう。」
「うん…あ、翔太は暫く入院ね。後数分助けるのが遅れてたら死んじゃうところだったんだから!」
「え…マジで?」
「マジ!だから大人しくしといてね!」
「…うい。」
その後はメンバーがきて怒られたり泣かれてしまったりと少し自分のした行動に反省をした。
コメント
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マジでこの物語好きです…