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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。三者連合との戦いを無事に終えて、更にあの日についての情報を得ることが出来ました。それに、負傷者こそ出しましたが死者を出さずに戦いを終えることが出来たのは幸いでした。
マクベスさんは今回の戦訓を取り入れた訓練と部隊の再編に取り組んでいますし、ドルマンさん達のドワーフチームも新兵器の開発に邁進しています。
情報部はラメルさんとマナミアさんを中心に部隊の拡大を急いでいます。先ずは防諜体制の充実を目指すのだとか。情報を制するものは戦を制すると言いますし、頑張って頂きたいところです。
内政に関しては多少の混乱はありましたが、幸い大きな暴動などは起きずに町も平穏を取り戻しつつあります。経済的な損失も最小限で済みました。と言うよりは。
「マジかよ」
「マジだよ、こんなに稼げるなんて私も思わなかったよ」
「俺としても嬉しいけどビビるぜ」
執務室に私、ルイ、エレノアさん、ロメオくんが集まって交易の成果を確認しています。
今回の交易ではロメオくんの開発した薬草を調合して作った回復薬を試験的に販売してみました。
その結果、何と一瓶が星金貨一枚で売れたのです。今回試作した回復薬は百本。回復薬だけで星金貨百枚の売り上げです。
「何があったんですか?」
「いや、一瓶を使って見せたんだが、その効果が凄くてねぇ。重傷者に一瓶飲ませたら見る見る傷が塞がって大騒ぎさ」
なんと。
「何作ったんだよ?ロメオ」
「いや、身体の回復力を活性化させる作用がある薬草を組み合わせてみただけだよ。欠損なんかは治せないけど、飲んだり塗り込んだら傷が塞がる速度を上げる効果がある筈なんだけどな」
「あれはそんな生易しい代物じゃなかったよ。あれじゃまるで魔法さ。そしてそれを見てた彼方さんがその価値を正しく理解したって訳だ。貴族なんかに売り捌くつもりらしいよ」
さすがはお兄様、抜け目がない。アルカディアの金持ちに売り払っても、我が国は痛くも痒くもありません。だって薬草の利用を全面的に禁じるような国ですからね。いや、医学界が保守的なのが要因ですね。
「予想以上の成果ではありますが、悪いことではないので引き続き調合をお願いします」
「薬草をかなりの量使うことになるけど、良いのか?」
「何か問題が?既にロウには薬草園の更なる拡張を依頼しているので、必要な量は確保できる筈です」
「帝国では売らないのかい?ロメオの発明は医者達の度肝を抜くよ?」
「あんな連中に見せても意味はないさ。むしろ必要の無い敵を増やすことになるぞ」
「ロメオくんの意見に賛成します。あくまでも交易と黄昏での使用に限定します。商人がいくら欲しがっても回復薬だけは売らないようにお願いします。エレノアさんもご苦労様でした」
私はエレノアさん達を労い臨時の報酬を約束して、館を出て工房エリアに向かいました。そこでドルマンさんと進捗について話し合いました。
「嬢ちゃんか。試作品についてなら、改良にもう少し時間が掛かるぞ。こんなのは初めてだからな」
「構いません、ドルマンさんの判断にお任せします」
ドルマンさんには前回の遠出で手に入った『飛空石』を使った空飛ぶホウキの開発を任せています。これまで何度か実験を繰り返しましたが、どうやら私の保有する魔力はかなりの量みたいで、制御が非常に難しいことが判明。
私自身が魔力をコントロール出来るようにマスターの下で修行を重ねる傍ら、ドルマンさんもホウキの改良に尽力してくれています。
「すまんな。他の試作品も平行して開発してるが、嬢ちゃんの訓練次第だな」
「頑張ります」
もちろんホウキ以外にも様々な形状のものを開発して貰っています。幸いドワーフチームもいつの間にか四十人を越えるようになりましたから、生産力には余裕があります。
……お酒の消費が凄いので、ロウにお酒の材料専用の区域を更に拡大して貰う羽目になりましたけど。
「空を飛びたいなんて言い出した時は、嬢ちゃんの無茶振りも極まったと思ったもんだ。だが、実現すれば面白い事になるぞ?」
「期待していますよ、ドルマンさん」
工房を後にした私は、そのままダンジョンへと向かいます。
「ベル、後は待機していてください。夕食までには戻りますから」
私はダンジョンの入り口で護衛をしてくれたベルに解散を伝えます。
「あいよ、お嬢。時間はちゃんと護ってくれよ?シスターがソワソワするからな」
「分かっていますよ。では、行ってきます」
私はダンジョンの入り口から中へ入り、分かれ道を右へ向かいます。ちなみに左側は石油が産出される泉への道です。
少しだけ歩くと、まるで王城のような荘厳な空間が広がる広間に出ました。
「マスター、お久しぶりです」
私が声をかけると、法衣を纏った骸骨さんが振り向きます。我が師でありアンデッドの王、ワイトキングです。
『来たか、勇敢なる少女よ』
威厳に満ちた声が響きます。
「しばらく来ることが出来ず、申し訳ありません」
『諍いの最中であったことは承知しておる。しかして成果は如何に』
「失ったものは少なく、得られたものは多大でした」
死者を出さず、金銭的な損失が出たくらいです。それも直ぐに挽回できる程度ですからね。完勝とも言えます。
『それは善き知らせである。ならば憂いはあるまいな?』
「はい、早速お願いします!」
「ガァアアアッ!!!!」
「やぁああっ!」
牙がぎっしりと生えた大きな口が迫る中、私は素早く左へステップし、すれ違い様に魔法剣を振り抜きました。光輝く刃は大口の主、アースドラゴンを文字通り真っ二つにして、上下に両断された巨体が私の後ろで轟音を立てながら倒れますが、私にそれを気にする余裕はありません。何故ならば。
「ギャアアアアッッ!!!」
前方から十体のゴブリンが襲い掛かってくるのですから。
私は素早く魔法剣の柄を向けて、意識を集中させます。
「サンダー・レイ!」
バチバチバチィッ!っと柄から無数の雷が放出され、ゴブリン達を焼き付くし。
「フレイム……ショット!!」
振り向き様に、今まさに私へと触手を向けた食人植物へと巨大な火球を放ちます。
「はぁ!はぁ!」
短時間に二つの異なる魔法を使い、息は乱れ汗が頬を伝います。私が何をしているかと言えば、修行です。
マスターは理論的な説明をした後は、ダンジョンの主であることを活かして様々な魔物を召喚。実地訓練を行うのです。ハッキリ言います。いつも死にかける日々です。
だってアースドラゴンなんて、普通現れたら軍隊が出動して、更に腕利きの冒険者達が招集されて討伐に当たるレベルですよ!?
そんなのを修行としてポンポン出される私の身にもなってほしいです。そりゃ度胸が付きますよ!よっぽどの事がない限り驚きませんよ!
『ふむ、この程度は容易に成し遂げられるようになったか。そなたには緩い環境を提供してしまった。師の不明を許せ』
「いや、死ぬかと思いましたけど」
振り向いたらアースドラゴンが大口開けて突っ込んで来てるんですよ?普通なら人生諦めますよ?
『より上位の魔物を当たらせねば、そなたも満足すまい』
「お話を聞いてほしいです、マスター」
『これならばそなたも満足しよう』
急に風景が代わり、大きな石造りの広間になりました。そして私の目の前に居るのは……。
「ォオオオオっっっ!!!」
真っ赤で堅牢な鱗に覆われた巨大を持つ……。
「レッドドラゴン!?」
災害級の化け物を出してきた!?
『不足はあるまい、勇敢なる少女よ』
あっ、これ死んだ。