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「お、あけおめ」

日中の様子からは想像もできないほど静かだった俺たちの空間を破ったのはこの時期、この瞬間しか聞けない言葉だった。

「もう明けたのか。おめでとう。」

口を開けば喧嘩ばかりである俺たちも、新年早々荒ぶりたい訳では無い。これが、マッシュ達と一緒に盛り上がっていたのなら話は変わっていただろうが、年明けと言っても消灯時間は消灯時間。実家に帰省をしていない生徒にとってそのルールは変わらないのだ。

だから、隣には赤いやつがいる。

同室だから。

それ以上でも、それ以下でもない。

「今年もよろしくな」

そう顔をこちらへ向け初日の出かという程眩しい笑顔を振りまく。

…今ここで言ったら、この顔はもう見れないんだろうな。

そんなことはわかっていたが、止まらなかった。詩的に表現すると“気持ちが溢れた”というのだろう。

「それは、友達として、か?」

「…は?」

「俺は、そのつもりではない。」

口角を上げたことで細くなっていた目がみるみるうちに大きく見開かれ、きょとん。と効果音が付きそうな顔に変化する。

「っは、なにそれ?口説いてる?」

今度は先程とは違う、挑発のような笑み。

満更でもない。と受け取ってもいいんだな?

「ああ、」

夜だから、とおりている前髪を梳くようによけ、額にキスを落とす。

「はははっ!展開がはえーっての! 」

「文句を言いつつ楽しそうじゃないか」

「そう?新年でテンションおかしくなってんのかもな、」

新年だから。か、別に。

今はこれでいい。非日常なイベントの力を借りてでも、その表情が見れるのなら。

いつか、いつかはその表情を、日常の中で、俺が支えるから。

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