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一時の感情に身を任せ

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一時の感情に身を任せ

19 - episode18

♥

30

2025年06月05日

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episode18 後悔しない




ブライドside



「あら、随分とまぁ自信があるのね。でも、自信だけじゃあたしには勝てっこないよ!」


映矢輝の前に無数に広げられる魔法陣。全身の皮膚で感じる、恐ろしいまでの魔力。

魔法で攻撃してくるだけではなく、近づいて斧でも攻撃してくるため厄介極まりない。

無言で魔法を打ち続ける彼女の目に光は宿っておらず、まるで何かに乗っ取られているかのような。そんな予感がした。

幸い、所夜の空間の中にいるおかげで暴れ回っても叱る者は誰もいない。魔法に対応しつつ、映矢輝にも攻撃を仕掛ける。

だが、与えられる傷はどれも致命的になる物とは言えない。せいぜいできてもかすり傷だ。

こちらの攻撃をいとも容易く避けるため、一方的に押されているという状況。映矢輝の強さは自分と天と地ほどの差があるのだと自覚する。

それでも、やはりと言うべきか子供の姿で戦う映矢輝には若干の隙がある。私には映矢輝に勝る技術が少なからずある為それを活かして隙を見抜くのだ。

「中々にやるじゃん。でも大丈夫?疲れ具合が違うみたいだけど。」

ついに無言の体制に飽きたのか映矢輝が口を開く。

「まぁ、そりゃ種族が違うからな。でも、それだけで勝ち誇るにはまだ早いぜ?」

先生に……師匠に教えてもらった、体術、立ち回り方、気配の消し方、武器の扱い方、、、

それらを全て使いこなし、的確に映矢輝に応戦する。

それから数時間、、、魔法の軌道も少なからず読めてきたし、映矢輝の戦い方も分かってきた。

だが、慣れれば慣れるほど油断は大敵。師匠が言ってくれた「大丈夫」と言う言葉を糧に私は刃を振るう。

この武器と一番相性が悪いのは恐らく火の魔法だ。この刃は衝撃には強いものの熱には弱い。

火は打ち返さない。避けて所夜に当たらないように守る。

相性がいいのは木と水だ。水は火の応戦に使い、木はこの刃で切り裂く。

映矢輝はあまりこの月火水木金土日の7属性以外は使ってこない。それぞれの性質を理解しつつ、映矢輝に反撃を試みる。

少なからず、映矢輝も弱っては来ている。戦場で鍛えられたその忍耐力と集中力だけは誰にも負けない。

どれだけ怪我をしようと、傷を増やしても、負けそうになっても、逃げたくなっても、戦場において逃げるという事は許されない。

私の辞書の中に撤退の二文字は存在しないのだ。これは私の、私にとってのあいつへの恩返し。

「絶ってぇ、おめぇなんかに負けるかよッ!!!」






映矢輝side


早い。

この人間、動きが早すぎる。

その脚力は一体どこから来ているの

私の魔法に対しても既に対策を打ってきてる。

若干押し気味とはいえ少しまずいかもなぁ。

斧での攻撃も刃の使い方に慣れてるあいつとはあんまり差がつかないから不利になるかもだし

魔力回復したと言えこんだけ連発してるとさすがにちょっと魔力が足りなくなってきてるし。

まあでも、種族違うからなぁ。怪我、負わせたもん勝ちか。

足潰しちゃえばこっちのもんでしょ

一瞬にしてこれほどの思考をめぐらせることは映矢輝にとっては造作もなかった。

魔法を出す杖から、斧へと武器を持ち替える。

己の背丈の低さを利用し、極限まで姿勢を低くして近づく。

敵の足に向けて斧を回した。もうこの距離では避けられまいとふんでの特攻だ。

口角を上げる。これで映矢輝は勝利への大幅な1歩を踏み込んだのだ!

「はっ、そう来ると思ってたぜ?この足はおとりさ!」

「えっ、?」

ブライドの足には斬撃が入った。

しかし、それと同時に、背中に刃物が突き刺さった。



ブライドside

少し前、まだ私と所夜が2人で任務を始めた時のこと。

「あなたの脚力は私を超えているかもしれませんね」

いきなりそう言われた。昔から脚力には自信があったし、足も早かった。でも大妖怪という人間離れした種族より上なのかという疑問が八割だった。

そして先程映矢輝が魔法で火の術を出し、所夜の前にでて庇った時急にそのやり取りが脳を掠めた。

もしあいつの言ってたこれがホントなら。映矢輝を騙して致命傷をあたえられるかもしれない。

頭がよく、元兵長のブライドにとって臨機応変に作戦を立てることは簡単だ。

わざと映矢輝の前で避けに徹して自分の脚力を見せつける。

そして最も先に潰すべきは足だと認識させる。

足を攻撃する一瞬の隙に背中を一打ち。

このまま押され気味のままでも体力が無くなって負けるだけ。もうやるっきゃねぇ。

作戦通り映矢輝の背中を刺すことに成功した。神である映矢輝に通用するか、、、。というのが鬼門だったが何とかなった。

「なん、で、??たか、が、、人、間ふぜい、、が、、。」

「あたし、、に、、刃を、、立て、られる、、の、、よ、、?」

映矢輝は小さな声でそうつぶやく。

『 人間ふぜい』私はこの言葉に強い違和感を覚えた。

少し考えていたら、ナイフが飛んできた。

よっと、、まだこいつ攻撃する元気あんのかよ。

そう考えていると、バッと映矢輝が一気に距離をつめる。

「殺す、!殺す殺す殺す殺す!!!!」

「あたしは、、あたしはパパのためにっ、!今ここであんたを殺さなきゃ、、ダメなの!!!」

感情的になっている、これじゃどんだけ考えて避けても当たるぞ、!?

近距離になると愛武器は使えない。これは本格的にまずいと脳が警告を出す。

大粒の涙を流しながら映矢輝は斧を振り回す。以前にも確かこのような事はあったような、、。

先程の口調、以前家に泊まりに来た時に聞いた話、どことなく感じる既視感、会う度に豹変する態度、所夜と私に対しての懐き方、初めて会った時の父親との会話、、、。

その瞬間、ハッとした。すべてのことが一本の線で繋がった。

少し考えれば、簡単な事だった。むしろ、今までなぜ気が付かなかったのか。

自分も似たような境遇だったからだろうか、それがおかしいということに気づくのに時間がかかってしまった。

映矢輝は自分では父親を慕っている。むしろ好いて懐いている。

だが父親は違う。映矢輝を支配して自分の力にしようとしているだけだ。

飴と鞭を使い分け、幼い子供の精神を操る悪魔なのだ。

こいつの体は完全に父親の言いなり。今私ができることは映矢輝に攻撃をして正気を取り戻させること。

おかしいのは自分の父親だと気づかせるのが一番の最善。

だがどうする。あいつが感情的になっているこの状況下であいつを正気に戻すのは至難の業だぞ。



『 ねぇえーちゃん!』

『 見てみてえーちゃん!可愛いでしょ?」

『 うわぁ!!ありがとうえーちゃん!』

パッと浮かぶのはいつも笑顔な映矢輝だけど













「助けてっ!えーちゃんっ!!!」

こんな必死な顔を見たら動かずに居られねえだろ。









(こっちもちと、感情的になってみっか!)




映矢輝side


「おお、!神がお見えになられたぞ!」

「どきなさい。この子は私が直々に引き取るのだ、、、。」

そう言われたのは多分二十年くらい前のこと。

暗い暗い闇に封印された私にひとつの光が見えた。

久しぶりに見た光は、あたしにはあまりに眩しすぎて。その光を見ようとするので精一杯だったのをよく覚えている。

地獄に封印されて数十年。長いこと地獄にいたせいで自分はどうやら神の力を手に入れてしまったらしい。

運が良かったのか、はたたまその力を手に入れたおかげか。あたしの力がみるみるうちに可視化され、閻魔が興味を持ったらしい。

その後、閻魔の屋敷に連れていかれ、食事や住処、服やベッドなどを用意して貰えた。

地獄を魔界で見た本でしか知らないあたしは本当にこの人が地獄の閻魔なのかと疑った。本当に優しかったから。

それが1ヶ月ほど続き、あたしはこの閻魔を実の父のように慕った。大好きだった。尊敬していた。

でも、そんな生活が3ヶ月ほど経ったある日。

「映矢輝、地獄の神としての仕事はどうだ?」

「ちょっと大変なときもあるけどもう慣れたよ!心配しないで!」

「さすが、私の娘だ。これからも期待しているよ。」

娘。その言葉をあの人の口から初めて聞けた。

飛び上がるくらい嬉しくて、仕事も苦に思わなくなった。

でも、その期待が膨れ上がっていることにあたしは1mmも気づいていなかった。

閻魔…パパと暮らし始めて2年くらい。

突然、パパの態度が変わった。

期待に応えられなかったり、ヘマをしたりしたらチョーカーから電流のようなものを流された。

時には暴力だって振るわれた。でもその次の日にはちゃんと謝ってくれて、お菓子を作ってくれて、また期待をしてくれるんだ。

そのおかげで信仰者も増えて、そのおかげで仕事もできるし強くもなれた。今のあたしがいるのは全部パパのおかげなんだ。

だから、パパの期待には答えるし、お願いも聞くし、あたしにできることは何でもするの。

それ以外は聞く気にもならないしやる気も起きない。信仰者はまぁ別としといて。

それがもう当たり前になった時、パパから言われた。

「世界を地獄が支配する世界にしよう」って。

パパが言ったことだから従う。従う以外の選択肢なんて残されてるわけないけど。

それからあたしは小さな村からどんどん襲った。

生き物は殺さない。後にはきっとあたしの信仰者となるから。

人の悲鳴や、怪我を見ても、可哀想なんて思ったらダメ。心を鬼にしないとパパはダメって言ってた。

こんな事正解なの?したくないよって、心の奥では思ってる。でも、パパが言うならきっと正しいんだよね?

そんなこんなで村を破壊していたある日、2人の女が邪魔しに来た。

でも、どこか普通の人間とは違った。

ポニーテールの女は気配からして人間じゃない。絶対に強い、、

そして身長が高い女は気配的には人間。でも、なにか懐かしい。心地よい。気が狂いそうな程に。

興味はすっかり2人に吸い込まれたんだ。

でも、、、、

でも、パパの言うことも聞かなきゃ、

でも、2人はあたしにすごく良くしてくれた。敵のはずのあたしに。

でも、パパが悲しんじゃう、

そうだよ、パパの言うことを聞かなきゃ。

2人と戦う時は毎回こういう思考に陥る。

なんでだろうなぁ、やっぱり2人のことも大好きだからかな?

でも、でも、あの二人は立場上はパパの敵。殺さなきゃ、殺さなきゃだめだよね?

攻撃してパパの役に立たなきゃダメだもんね、?

でもさぁ、なんでかな、パパの言うことに従ってるはずなのに、楽しくないよ。嬉しくないよ。

苦しいよ、こんなことしたくない!あたしは人間とも、パパともら仲良くしたいのに!

ポロッと涙がこぼれる。泣いたら怒られるけど、でも、止まんない!

目の前の女には攻撃をしないとなのに、!さっきまで指示を貰ってさっきの女は倒せたのに!

攻撃したくない、でも体がゆう事を聞かない、えーちゃんごめんね、ごめんね、ごめんね

もうどうすればいいの?わかんないよ、、。

「助けてっ!えーちゃんっ!!!」


その時、あたしの体は

ふわっと軽くなった


「えーちゃん、、?」

気がつけば、えーちゃんに抱きしめられてて。抵抗しようとしても、その心地良さに抗うことは出来なかった。

「映矢輝。私はな、お前の家族がどうとか、お前の環境が悪かろうが辛かろうが何も思えねぇ。」

「人に関心を持てねぇんだよ。だから、お前と初めて会った時はお前のことなんざさぞかしどうでもよかった。」

「でも、気づいたらお前を助けてた。所夜の影響だよな、間違いなく、、w」

「そこから、1夜だけお前と私と所夜と、3人で過ごした時のことが頭から離れねぇんだよ。不思議だけど、何一つ嘘じゃねぇ。」

「お前はどうなんだ?聞かせろよ。」

「……っ!あたしはっ、!」

「世界で1番……あの時が大切に思えたよ!あたしも嘘ついてない!」

「そうか、、、。私はよ、お前みたいに大切とか世界一とか、そんなのよく分からねぇけど。」

「お前といた時間は少なくとも、楽しいと思えたような気がするよ。」

「だからよ、私と、、、所夜と一緒に帰ろうぜ。お前のいないあの家が静かすぎてムズムズするんだよ。」

「えーちゃん……ッ!」

まただよ、また、涙が止まらない。

止まってよ、こんな汚い顔、見せられないじゃない。

「映矢輝、無理に決断しろとは言わない。私の思いつきだし、これが正解かも分からねぇ。だが、気が向いたら。私と一緒に、アイツ……お前の父親を倒そうぜ?」

「所夜が起きるのを待っていても、あいつはずっと寝てるし。元々、今回の全ての原因はお前の父親だしな。」

今まで考えたことの無い、新たなる選択肢。

パパを倒す、?それって殺すってこと?

それは嫌だ、、、でも

あの痛い思いや苦しい時間は本当に愛だったの?

私のためって言われたことは本当に私のためなの?

あの行動の数々は、その本当の目的はまさか、、

あたしを利用するため?でもそしたらなんであたしを助けたの?

あの日々は偽りだったの?パパと過ごした、思い出も、全部嘘なの?

嫌だよ、パパを殺すなんてできっこない!

でも、


「お前といた時間は少なくとも、私は楽しいと思えたよ。」


千ちゃんやえーちゃんと居られなくなるのは、もっと嫌だ!!!



「決めた!もう迷わない!後悔しない!後戻りしない!」

「あたしは自分を信じる!えーちゃん、一緒にパパを倒そう!!」

「そう言ってくれると思った。」

「案内してくれよ?お前の父親がいるであろう」

「地獄にな。」

「もちろん!それはそれは分かりやすく。」
















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