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#BL
kaede🍁
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おその★
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「入って。」
阿部が小さくそう言うと、目黒は「お邪魔します」と返して玄関へ足を踏み入れた。
いつもなら二人で並んで笑い合う部屋。
けれど今日は、どこか空気が違う。
部屋はきれいに片付いているのに、生活の気配だけが薄かった。
「……あべちゃん。」
「ごめん。ちょっとシャワー浴びてくる。」
泣き腫らした顔を見られたくなかった。
何日も家から出ていない自分が、少しだけ惨めにも思えた。
「うん。その間に適当に片付けてる。」
阿部は小さく頷くと、浴室へ向かった。
浴室のドアが閉まる音を聞いてから、目黒は持ってきたエコバッグをテーブルへ置く。
スポーツドリンク。
ミネラルウォーター。
栄養ゼリー。
ヨーグルト。
プリン。
風邪でも食べやすいものばかり。
冷蔵庫を開けて、目黒の手が止まった。
「……。」
中は驚くほど空だった。
ペットボトルの水。
卵が1個
調味料が少し。
それ以外には食パンが一枚残っているだけ。
「これ……。」
阿部がほとんど食べていないことは、一目で分かった。
静かにため息をつき、買ってきたものを冷蔵庫へしまう。
戸棚を開ける。
米は少しある。
「……よかった。」
鍋を取り出し、米を洗う。
冷蔵庫にあった卵と、白だし、醤油、みりん。
優しい味のおかゆなら、今の阿部でも食べられるだろう。
コトコト、と小さな音が部屋に響き始める。
その音を聞きながら、目黒は苦笑した。
「本当に、いつも一人で抱え込むんだから。」
___________
シャワーを浴び終えた阿部は、洗面所で固まっていた。
「……あ。」
着替えようとして、手が止まる。
着るにはどれも大きすぎる。
スウェットも。
ジーンズも。
全部、男だった頃のサイズ。
「……着られない。」
その一言が、想像以上に胸へ刺さる。
髪が長くなったことよりも。
鏡に映る姿よりも。
今まで当たり前に着ていた服が、一枚も着られない。
その事実が、「もう元には戻れないのかもしれない」という恐怖を現実のものにした。
阿部はタオルを身体へ巻き付けたまま、その場へしゃがみ込む。
「元に戻れなかったらどうしよう……。」
涙がまた溢れそうになる。
その時だった。
「……あべちゃん?」
リビングから目黒の声が聞こえた。
「おかゆできたよ。」
返事がないことを不思議に思ったのか、足音が近付いてくる。
「どうした?」
洗面所のドア越しに優しく問いかけられ、阿部は唇を噛んだ。
「……めめ。」
「うん。」
「服……。」
その一言だけで、目黒は察した。
「着られない?」
沈黙が答えだった。
目黒は少し考え込むと、穏やかな声で言う。
「今日は俺のパーカー着なよ。」
「え……?」
「袖は長いかもしれないけど、今着てるタオルよりずっと暖かい。」
阿部は思わず笑ってしまう。
「それに。」
目黒は少し照れくさそうに笑った。
「あべちゃんが、俺の服着るのメロい。」
その何気ない冗談に、阿部の頬が少しだけ緩む。
女の子になってから初めて浮かんだ、小さな笑顔だった。
コメント
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みらさん、第4話拝読しました……。 もうね、冒頭の冷蔵庫が空っぽだったシーンで胸がぎゅっとなりました。阿部ちゃんがどれだけ食べられずにいたか、目黒くんの手が止まる一瞬で全部伝わってくる。 そして「着られない」――以前の服が一枚も入らないと気づく場面、すごくリアルで切なかったです。でもそこで「俺のパーカー着なよ」「メロい」って冗談で返す目黒くんの優しさ……あのやりとりで阿部ちゃんが初めて笑えたんだなって思うと、読み終えたあとじんわり温かくなりました🌸 小さな変化を丁寧に描くみらさんの筆致、とても好きです。続きが気になります!