コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「それで!!悩みって何?」
「…特に無いよ」
案外、畑葉さんはしつこい。
「琉叶!教えてよ!」
「なんで急に呼び捨て…」
心臓に悪すぎる…
呼び捨てすると悩みを言ってくれるとか思ったのだろうか。
「…出てくるんだって」
「何が?」
『出てくる』ただそれだけ伝える。
当たり前だが畑葉さんは不思議そうな顔を向けてくるのみ。
「昨日遊んだ子供たちが夢に出てくるの」
「へ〜…楽しそうでいいじゃん!」
「いや遊びじゃなくて…」
遊びと言えば遊びなのだが…
あの言葉が頭に染み付いてるのが原因で…
でもそれは絶対に言えない。
言ってしまえばきっと楽に伝わるんだろうけど、なぜか喉で引っかかって出てこない。
「遊びじゃない?あ!分かった!!」
「 “ イタズラ ” でしょ?」
「イタズラ?」
「前も居たんだよね〜って…」
「ぁ…」
慌てて口を塞ぐ畑葉さん。
前も居た?
誰のことを言ってるのだろうか。
「それよりこれ!!バレンタイン!」
無理やり話を逸らすようにポケットから出したチョコレートを渡してくる。
しかも丁寧にラッピングがされているものを。
「…前も居たって何?」
「えっと〜…」
「それは…」
明らかに目を泳がせている。
「言いたくないならいいけど…」
そう言いながら貰ったチョコを口に含む。
「あ、美味しい…」
「本当?!」
「だからあんまり耳元で声出さないで────」
「それ、私の手作りなの!」
「美味しかった?!味見してないんだけど…」
「え?」
味見してない手作りのものを僕に食べさせたってこと?
なんて奴なんだ…
ていうかてっきり買ったものを渡してるんだと思ってた。
手作り…
「あ、畑葉さん」
「ん?なに〜?」
「今日って暇?」
「私はいつでも暇だよ?」
えっへんと誇らしげにそんなことを言うが、
何も偉くない。
何か趣味でも見つけたらいいのに…
「一緒に前に言ってた桜のゼリー作りしない?」
「する!!」
僕がそう言ったと同時に畑葉さんの表情は明るくなる。
「ゼリー作り♪桜のゼリー作り〜♪」
鼻歌混じりで。
スキップ混じりで。
共に僕の家へと向かう。
「そういえば畑葉さん、最近カメラ持ってるの見てないけどどうしたの?」
そう。
いつも首にかけていたカメラ。
使わないのに何故か持っていたカメラ。
が、最近は持っているのを見ていない。
もしかして失くしたりとか…?
「あ〜…」
「飽きちゃったんだ…!」
少し僕から目を逸らしながらそんなことを言う。
「飽きた?せっかく買ったのに?」
「お金の無駄じゃん」
そう僕が言うと
「知ってる…」
「知ってるよ!!」
「けど、ちょっとしか撮れないし…」
なんて言う。
「そのカメラがいいって言ったの畑葉さんじゃん」
「そうなんだけど…」
そう言った後、
不満そうにブツブツと独り言を零す。
「あ!家ついたよ古佐くん!!」
そう言って家主である僕を置いて、
真っ先に僕の家へと入っていく。
今日は話を逸らしてばかりの畑葉さん…
「ね、これ何?これは?!」
「見たことないこれも何?!」
次々に材料を指差しながら聞いてくる。
「これは寒天」
「そっちは食用着色料」
「絵の具?」
「絵の具じゃない」
わざわざ説明してるのになぜ『絵の具』なんて聞いてくるんだか…
明らか人の話を聞いていない人の特徴だ。
「なんでゼラチンと寒天2つあるの?」
「どっちかで良くない?」
まぁそうなんだけど…
「実験的な?」
「ふ〜ん…」
そう納得するかのような声を出しているが、
絶対理解していないような気がする。
気のせいだろうか。
「じゃ、ここで畑葉さんに問題」
「何?」
「この桜、全種類の名前分かる?」
そう言いながら花が咲いた桜の枝を並べる。
「もちろん!!簡単だよ!」
そう言って次々当てていく。
「右から順に『カワヅザクラ』『カンヒザクラ』『修善寺寒桜』でしょ?」
「正解…すごいね……」
少し引き気味に褒めると『えへへ…』と照れる。
可愛すぎる。
「あっ!花言葉も知りたい?」
「教えて貰ってもいい?」
「うん!!」
久しぶりの畑葉さんの花言葉話だ。
久しぶりのせいか、僕は何故かワクワクしていた。
「カワヅザクラは『思いを託す』で」
「カンヒザクラは『誤魔化し』修善寺寒桜は
『あなたに微笑む』っていう花言葉なんだよ!」
なんかこの花言葉…
畑葉さんを象徴しているみたいで不思議だ。
「出来た!!」
大変だった…
畑葉さんってば全部の工程を無視して全部一気に入れようとしたりするから…
「食べてみて?」
そう僕が言うとすぐさまスプーンですくって口に運ぶ。
「ん〜っ!!美味しい!!」
「桜の香りがすっごいするし!!桜色で綺麗だし!!」
そんな言葉を聞いて、僕も口に運ぶ。
と、寒天を使った桜ゼリーはサクリとした歯ごたえがある。
けどゼラチンを使った桜ゼリーは口に含むとゆっくり溶けていく。
「畑葉さんはゼラチンと寒天のゼリー、どっちが好き?」
「悩みがたい…」
「けど、私は寒天かな!!」
「食べた感がして美味しいし…!!」
そう言いながらガツガツと食べる。
あっという間になくなってしまいそうだ。
「あ、古佐くんはどっち派?」
「僕?僕はゼラチンかなぁ…」
「口の中でゆっくり溶けるのってなんかロマンがあるし…」
自分で言ってて『何言ってんだろ』なんて思ってしまう。
「ロマンかぁ…」
「私は美味しければ何でもいいかなぁ…」
畑葉さんらしい。
「そういえば畑葉さんって嫌いな食べ物とか無いの?」
「う〜ん…特に無いけど……」
「強いて言うなら…昆虫食、?」
「…それは僕も嫌かな」
なんか気分的に嫌。
でも少し試してみたいなんて気持ちがあるのがもっと嫌。
「古佐くんは?」
「僕は舌に刺激を与えてくる系が嫌かな…」
「刺激?全部舌に刺激与えてくるじゃん」
「甘味もうま味も全部舌で感じてるんだし」
急に正論で返され、何も言えなくなる。
「そう、だね…」
無理やり声を出すも、
そんな答えしか返せない。
「…辛いものとか苦いものが僕は嫌かな」
少ししてからそう言うと
「え〜?苦いのも辛いのも美味しいじゃん!!」
と返してくる。
なんか畑葉さんって何でも美味しく食べてくれそう。