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剣術、魔法学、その他もろもろ。
馬術から、何から何までの基礎を教わった。それも、お父さんが率いている騎士団の団員の方にだ。これほどまでに贅沢なチュートリアルがあっていいのだろうか?
目まぐるしく一週間は去っていった。
服もタイトで、〇〇ちゃんに似合いそうな寒色系の服にした。アクセサリーだってハートとかリボンとかではなく、デザイン性のあるものにした。
メアリ「〇〇お嬢様〜?もうそろそろですよぉ」
間延びしたメアリの声とは裏腹に、私は酷く焦っていた 。
何故かって?
だってもう私は、婚約者、、、。グルッペン・フューラーという名のラスボスに合わなければならないからだ。
なんで私なんかがお国の権力持っちゃってる系男子の婚約者にならなかんねん。
あぁ、、この緊張すると胃がキリキリなるのは前世から引き続きかよ。
死んだら全部振り出しにしてくれないとか不親切なゲーム(?)もあったものだ。
「、、、はぁ、、気が重い」
正直、この一週間で〇〇ちゃんがどれほど傲慢なやんちゃお姫様かはわかった。きっと、貴族さん達の中では“そういう方向”で有名な子なんだろうなぁという一言に尽きる。
だからこそ、今回の婚約者イベには少し期待する面がある。
あそこまで酷いことをしていた〇〇だ。印象としては最悪だろう。ここらで、一言「この婚約は両者のためにならないと思う」と言えば相手も「あぁ、そうさせてもらおう」というに違いない。
本編ではこんな傲慢お嬢様に好かれて大変だったろうから、ちょっとは楽させてやろう。うん。私ってなんて優しいんでしょう。もう涙がちょちょぎれちゃうわ、、、。
、、、、。
別に私が怖いからとかじゃないからな?
オリヴァ「〇〇?準備はできたか?」
思考の海から強制的に引き摺り出される。
「ビクッ)はッ、はい!できてます」
オリヴァ「そうか、なら出てきなさい。フューラー家の後継息子が〇〇を待っているぞ」
「しょ、承知いたしましたぁぁぁ」
どんどんか細くなり頼りなくなっていくのは、間違いなく私、〇〇・ヴィルヴァルトの声だ。
メアリは、扉を静かに開ける。
お父様は、行こうか。と一言。
私は、息を呑んで一歩一歩に気遣いながら廊下を歩く。
大丈夫だ。この美貌だ。自信を持て。1人で生きてけるタイプの私だろ?
そう、今は、、1人で無謀にもラスボスを倒しに行こうとしている騎士だ!
なんて、頭の中では勇敢なフリをしているが前で上品に組んだ手は未だ震えている。
オリヴァ「さぁ、ついたぞ」
ついに来てしまった、、、、。
扉の両サイドについていた執事はさっと、仕事をこなす。
扉が開く。
あー、、、神様、仏様、RPG様、、、。私は前世でなんの罪を犯しましたか?
友達との約束した時間を1時間間違えたことがそんなに罪になりますか?一生処女を守り抜いたことがそんなに罪になりますか?男友達の自家発電を間違えて見てしまったことがそんなに罪になりますか?
泣目になるのを、前世での罪になりそうなことを数えながら必死で堪えていた。
開かれた扉の奥は嫌というほど明るかった。
まるで、彼の登場を祝うかのように。
「っ、、、やぁ、凄いな、、(ボソ)」
逆光すらも味方につける美貌。
金色の絹のようにしなやかな髪の毛と、そのしなやかさとは反対に自己主張が強めな血の色をした瞳。
少年のあどけなさを残しながらも、彼はメガネの奥から鋭い視線、、いや、どこか暇そうな視線を私に向けてきた。
オリヴァ「改めて紹介します、うちの娘の〇〇・ヴィルヴァルトです」
「は、はい。、、、すー」
深呼吸だ、、、。ここは取引先、ここは取引先、ここは取引先、、、、。
「今日は、わざわざそちらからお足を運んでくださり誠にありがとうございます。ご紹介に預かった通り、〇〇・ヴィルヴァルトと申します。以外よろしくお願いいたします」
よし、大丈夫そうだ。何一つ間違えなかった。
前世でのOL知識をふんだんに詰め込み、取引先での挨拶をそのまま使った。この判断能力の速さ。私じゃなきゃ見逃しちゃうね。
グル「!、、はい、よろしくお願いします。、、、あ、私は、グルッペン・フューラーです、、」
私が挨拶をした後、彼の目は大きくなりどこかぼーっとしながら私から目を離さずに自己紹介をした。
なんだ?システム以上か?叩けばなo((
そんな感じで変な時間が流れていると、フハハハッという悪魔的、魔王的な笑い声がその空気を切り裂いた。
グルパパ「ハハハッ!やはり、噂というのは鵜呑みにしてはいけないな!こんな礼儀正しいお嬢さんが傲慢とは、世も末だな!ハハハハッ!」
オリヴァ「滅相もございません、、。〇〇」
「はい?」
オリヴァ「せっかくなんだ、屋敷を案内してやりなさい」
「はい」
yesmanになってしまおう。そして、ストレスを軽減させよう。
お父様は、私達を廊下に出した。
「、、ぐ、グルッペン、、様?、、あの、どこから案内しましょう?」
この異様すぎる空気をどおしてくれよう。
私は目が合わせられないが、彼自身は私に穴を開けるかのように見てくる。
WTF??????シュール爆発してるけど大丈夫そ?
あの目で見られると嫌でも肩をすくめてしまう。
冷や汗ダラッダラの状態で彼の横に立つ。
グル「、、、貴方の部屋に行きたい」
「わ、私の部屋ですか?」
グル「ダメでしたか?」
「い、いや!そんなことはありませんよ!こ、こちらです」
大人びた少年は、嬉々として目を輝かせた。
わぁ、、なんだこの顔面、、、、。この人生になって二週間だけど、、、なんなんこの世界。顔面凶器(褒め言葉)しかいないんか?顔面で人殺せるやんこんなの。
なんて思いながら自分の部屋へグルッペンを案内させる。
チラリとグルッペンの方を横目で見ると
グル「、、、、、、」
ジッと見つめ返される。なんだかくすぐったくて目を逸らした。
なんだこの、変な空気。この雰囲気耐えられんわ。あの数秒は数秒なんだけどね、、、。
丁寧に歩きながら、失礼のないようにできる限り早く歩いた。
「ここです」
グル「、、、、、随分質素なんだな、、、」
「へ!?あ、、まぁ、そのなんか、あまり派手派手しいのは苦手でして、、、」
グル「!、、それは、本当なのか?あんなに、パーティ好きと聞いていたんだが、、、」
「あぁ、まぁその、もうそろそろちゃんと自立できるようにならないとなぁと思いまして」
グル「、、自立ですか、、」
彼は、私の部屋をぐるりと一周する。
まぁ、一応あのリボンとかピンクとかでゴテゴテしてた部屋を完全に変えたくて今は必要なものしか置いてない部屋だからな。
ドレッサーも木製の黒いのにして、アクセサリー台も大きくして、ベッドもピンク!ダブル!みたいな派手なのから、落ち着いた濃い青色のものにした。本当に色々変えた。あのピンクと白と赤で統一された頭が痛くなるような部屋ではなくなって完全に私だけの世界にしてやった。
ごめんな、〇〇ちゃん。私の自我が芽生えたが故、君の自我を殺してしまった感があるよ、、、。
私は、ミリ単位の罪悪感を抱えながら、革製のソファの方へ移動して、彼の行動を取り敢えず見とく。
めちゃめちゃ面倒くさい。どうしよ。
なんか変に気い使わなかんこの感じ、めっちゃめんどくさい。
グル「!〇〇さん」
「は!はい!」
思考の海で漂っているとグルッペンは、少し遠くから声がかけられた。
グル「チェスをやられるんですね」
「え?あぁ、まぁそうですね、、。趣味程度ですよ?」
窓際に置かれたチェス台とその二つの向かい合った木製の椅子。 彼が片手を一つの椅子の上に置く。
本当に趣味程度で前世でもよくやっていた。
中学、高校とテスト期間という欲を強制的に辞めさせられる数週間があるのだよ。その時に、親にスマホやらパソコンやらを取り上げられた挙句、大好きな漫画たちまで奪われた。そんな時に目に止まったのが、棚の下にあったチェス版だった。
なんとなく気休め程度に始めたそれが、まぁぁぁぁぁぁぁ楽しかった。おかげでテスト赤点とって怒られたけど、それはまた別の話。
グル「ほぉ、俺も実はやるんですよ」
あ、一人称が“俺”になった。
「そうなんですね」
グル「どうですか?」
そう言いながら少年は小さい手で、チェスの駒を丁寧に版の上に置いていく。
はぁ〜、、、油絵みたいな光景。
なんで少年なのにこんなに、色気っていうか、なんか魅力があるんだろう。異様なまでの落ち着きとか。でも、ゲームだと死ぬほどゲバってだけどな。正直今目の前にいる彼を見ると、子供らしさというのが欠けすぎていて気持ち悪い。
というより、殻を被りすぎている。
違和感等に顔が引き攣るのを耐えながら彼とは反対側に座る。
グル「、、さぁ、始めようか」
「そ、そうですね、、、」
グル「先手、どうぞ?」
「あ、ありがとう、 ございます」
なんだ、この、奇妙な圧力。負けた方がいいのか?いや、当然だろ。それ以外考えるな、、。
でも、意図的に負けたと気づかれたら?あの暴君戦争大好き五歳児だぞ?わかった途端、この部屋が戦場になる。やめとこう、、、。勝ちに行きたいけど、それもそれで血を見ることになりそうだ。
とんだ地雷系男子で草
ただ単に自分の苦手タイプの彼に面倒くさくもなりながら、ゲームはゲームだ。楽しくやろう。
それから、どんどん時間は経って、久々のゲームに肩入れしすぎたようだ。
「、、、、、、、ちぇ、チェックメイト、、、」
グル「、、、!ほんまや、、、はやない、、?」
やばい冷や汗というか、なんというか、色々気持ち悪いしヤバい、、、。
手をグーにして膝に押し付けながら下を向く。〇〇ちゃんの綺麗すぎる髪の毛がちょうど顔を覆ってくれて、同様で目がバタフライしているのを隠してくれているようだ。
グル「ふ、ふふ、、ハッハハハハwwww!!」
「、、、はい?」
グル「はぁ、ここまでとはなwwwなんや、こんなにおもろいなんて聞いてないゾ?www」
「あ、チェス、、はい、面白いですよね、、」
あなたに勝ちさえしなければ私だって楽しかった。
なんでこんなに上下関係って面倒いんやろ。
グル「チェス?あぁ、チェスは面白い。しかし、今話してるんわお前のことダ、〇〇さん?」
ニヤニヤしながら、彼は自分のコマである黒色のクイーンをつまみ私の目の前に置いた。
グル「なぁ、もう一試合、しようや。いやぁ、あんなに楽しいとわなw」
わぁ、、まずい。完全にこいつのペースに飲まれてる。