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俺は自分の声のせいで周りから嫌われてきた。何が悪いのか全然わからなかったが、ある日、研究者を名乗る男が現われ、俺の声には特別な力があると言った、なんでも、その男の発明した機械を使えば、俺の声なら完全な催眠術をかけられるらしい。男はその機械をスマホに入れていた。
その男といっしょにやった実験は成功した。男は催眠術がかかりにくい女を用意していたが、一発で催眠状態になり、試しに服を脱がしてみたら、簡単に全裸になった。
そのまま俺は男を騙して催眠術をかけ、そのスマホを手に入れた。そこからは、このスマホを使っていろんなことを試してみた。けれど、人に見つかるとやっかいなことになる、と思って、思い切ったことはできなかった。だんだんそれがめんどくさくなってきた。
そこで俺は、この町の住人に片っ端から催眠術をかけて、町全体を催眠術の実験場にしようと考えた。ただ、これはなかなか大変だった。まず町の人全員にかけるとなると、かなりの時間が必要になる。それに、俺の能力は声をかけた人に「声をかけられたのは自分だ」と思わせる必要がある。そうすると、例えば町ゆく人に「ちょっとそこの人」と呼びかけると、近くの人は反応してくれるけれど、少し離れていると無反応だったりする。だから、思ったほど多くの人は催眠術にかからなかった。何かいい方法を考えないとなぁ。
とりあえず俺は少しずつ計画をすすめていくことにした。とりあえず、今日はこの噴水のある公園にいる人に催眠術をかけていこう。
それから数時間後。
「さてと、これで今日の目標は達成かな?」
公園にいた人には催眠術をかけ、新しい人が来たら教えてくれるように言っておいた。さらに、これから起こることは家に帰ったら忘れるよう命令した。これで準備万端だ。今まで出来なかった派手ないたずらをするぞ! そんなことを考えているうちに新しい女の人がやってきたようだ。
「こんにちは」
「え? こんにちは」
よしよし、反応した。これで催眠術がかかったぞ。じゃあ早速実験をしよう。これまでは命令をして言うことを聞かせるということばかりやってきた。今回からは催眠術で錯覚を起こさせる、というのをやってみたいのだ。俺は目の前の女性に話しかける。
「あなたは今、自宅の風呂場にいます。今日は暑いですね。水浴びをしましょう」
「はい……」
彼女は素直に従った。よーし、成功だ!これで今、彼女にはこの公園の噴水が自宅のお風呂に見ているはず。
あれ、私公園に散歩にいったんじゃなかったっけ? いつの間に家に戻ってたんだろ?
まあいいか……私はシャワーを浴びようとお風呂場の扉を開ける。そして中に入り、服を脱ぐために上着に手をかける。なんだか遠くで誰か騒いでいる気がするけれど、気のせいかな?
まあいいか。私は服を脱いで裸になる。ん?なんか変な感じがするようなしないような……でも別に気にするほどでもないよね。それより早く体を洗ってしまおう。
シャワーを浴びると私は湯船に浸かった。水が冷たい。なんだかお風呂の作りがいつもと違う気がするけど、気のせいだよね。それと、遠くから聞こえてくる騒ぎがまた大きくなった気がする。何か事件でもあったのかな?
公園の噴水を自宅の風呂場だと錯覚した女性は、その場で服を脱ぎ始めた。
自分の家の風呂場だと思っているので当たり前だが、ここは人がたくさんいる公園だ。彼女の姿は全部丸見えなのだが、本人は全く気付いていない。ただ周りの人たちは普通の過ごすよう命令しているので、彼女が公園の真ん中で服を脱ぎ始めるのを見て騒ぎ始めた。俺はその様子を見て大笑いしていた。これだよ、これがやりたかったんだよ!
「おい、あの子なんであんなところで脱いでるんだ!?」
「痴女なのかしら?」
「すげぇ体してるぜ!」
どうやらみんなも楽しんでくれているみたいだ。しかし、本人は平然としていて、全く恥ずかしそうなそぶりを見せない。これはなかなかの見ものだ。十分楽しんだし、そろそろいいか。俺は女性の錯覚を解いてやることにした。「ちょっと、お姉さん、ここは公園の噴水ですよ。何やっているんですか?」
私がお風呂に浸かっていると、なぜか周りからざわめきが起こった。
「あれ、うちのお風呂、こんなに大きかったっけ?」
それによく見るとここの景色おかしいような……。
「うわあああっ!! 私の家じゃない!!」
そうだ、私はさっきまで公園にいたはずだ。なのに今まで自宅のお風呂にいると思い込んでいた。どうして? 混乱して何も考えられない。
「きゃああああっ!!!」
全裸であることに気付いた私は思わず悲鳴を上げてしまった。
「もうっ! どういうことなのよっ!!」
私はあせって、服を持ってその場から走り出した。どこかに隠れなきゃ……。
俺は女性が服を持って逃げ出す様子を見ていた。それにしても面白いものが見られた。
俺が女性にかけたのは、「自分が今いる場所が自分の家で、そこにあるものは自分の家にあるもので、それは普通に見える」という催眠術だ。つまり、彼女は「自宅の風呂場」だと思い込んでいるのに、実際は「公園の噴水」だったのだ。そりゃパニックにもなるだろう。
「はははっ、面白れえなぁ」
俺はしばらく一人で笑っていた。周りの人々には、今日起きたことは家に帰ったら忘れるよう命令している。だから今のが大きな事件になることもない。やはり派手に活動できるのは楽しい。今は公園ひとつだが、早く「催眠術の町」計画をすすめないとな。(続く)