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「…そろそろ、だな…」
夜の静寂が温泉宿を包み込む頃、風呂のぞきは再び動き出す。彼の長い指はねっとりと壁を撫で、まるで獲物を狙うように、女湯へと忍び寄っていく。今宵も彼は、女の裸を求めてやってきた。
「ふひひひ…ああ…早く見たい…あの肌…あの曲線…」
彼の舌は唇を濡らし、目には狂気と欲望が混じり合っている。何世代にもわたり、風呂のぞきはこの瞬間を待ち続けていた。毎晩繰り返される覗きという行為が、彼にとっては生きる目的そのもの。
風呂のぞきは女湯の壁を這い上がり、細い隙間を見つけ出す。その瞬間、彼の全身は緊張し、手足が痙攣するかのように震える。目はぎょろりと動き、湯気の向こうに浮かぶ裸の女性たちを見つめた。
「見える…!ああ、素晴らしい…!」
彼の目に映るのは、湯船に浸かる滑らかな肌、髪が肩に張り付く様子、そして湯気に包まれながらも艶やかな曲線を描く体。
「もっと…もっと見せてくれ…!」
風呂のぞきは、体を壁に押し付け、覗くための角度を必死に探る。彼の呼吸は荒く、吐息が湯気のように漏れ出し、壁越しに届きそうなほど。
「その肌…その胸…その足…!」
風呂のぞきの興奮は頂点に達していた。彼の全身が欲望に燃え、体は奇妙に膨れ上がっていく。彼の長い舌がだらりと垂れ、よだれが湯船の縁にまで届きそうだった。
「これだ…!これが俺の生きる意味だ!」
彼は声を潜めながらも、鼻息は荒く、目が血走っている。何度も何度もその目に焼き付けるかのように、彼はその光景に陶酔していた。女たちが無防備に身を委ねるその瞬間――彼の心の中で渦巻くのは、狂ったような欲望。
「誰にも…誰にも邪魔はさせない…!」
しかし、突然、背後から重い足音が響いた。風呂のぞきが振り返ると、そこには剛志の姿があった。
「また貴様か、変態妖怪が!」
剛志の声が響き渡る。しかし、風呂のぞきは歯を剥き出しにして笑い、目はますます興奮に満ちていた。
「ふふ…お前には分からないだろう。悦楽を…美しい裸を前にして、どうして邪魔をするんだ…!」
「黙れ!貴様のような妖怪はここで終わりだ!」
剛志は刀を抜き、風呂のぞきに向かって突進する。しかし、風呂のぞきはその異様なスピードで壁を這い上がり、まるで蜘蛛のように俊敏に逃げ回る。
「俺はまだ…満足していないんだ…!」
風呂のぞきは再び女湯の壁を越え、湯気の中へと飛び込んだ。彼の手が湯に触れると、その瞬間、彼の全身が熱で膨れ上がり、肌がまるで火に焼かれたように赤く染まる。
「これだ…これが俺の…!」
その恍惚の表情は、狂気そのもの。彼は湯の中で身を捩り、全身を濡らしながら女たちに迫っていく。しかし、剛志はその姿を許さなかった。
「これで終わりだ!」
剛志は一気に刀を振り下ろし、風呂のぞきを斬り裂いた。風呂のぞきは断末魔の声を上げ、全身が黒い煙となって溶けていく。
風呂のぞきは消え去ったが、その執念は温泉の湯気の中に残り続けていた。剛志は湯を見つめながら、どこからともなく聞こえてくる囁きに耳を澄ます。
「もっと…もっと女の裸を…」
その声は遠く、だが確かに聞こえた。風呂のぞきの欲望は、決して終わることはなかった。