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るるくらげ
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#再会
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私たちは彼に心理的な揺さぶりをかけた。匿名アカウントから近江にメッセージを送る。
『君の秘密、知ってるよ。彼女との遊び、婚約者には言わない方がいいね?』
『彼女、セクシーだよね。有名モデルと遊んで楽しかった?』
添付するのは、彼と私のツーショット写真――彼が私の髪に触れる瞬間、公園のベンチでの口付け、ベッドでシーツに包まる笑顔。そのどれもが幸せに溢れ、輝いていた。けれど今は、パソコンのキーボードを叩くたびに黒く塗り替えられ、悲しみへと変わった。
彼の返事は滑稽なくらい、パニックに満ちていた。
『誰だ! 何が目的だ!金か!?』
雪絵は笑いながら、次のメッセージを打つ。
「まだ始まったばかりよ」
その夜、私のスマホに彼から着信が何度も来る。無視するたび、心臓の鼓動が速くなる。彼は今、何を考えているのか? いつ、こちらに牙を向けるのか?
婚約者の女性に、匿名で証拠を送る。
私のSNSの投稿を引用し、『この人、あなたの婚約者よ。浮気してるわ』彼女の反応は速かった。婚約者はSNSで、婚約破棄――を匂わせる投稿をし、近江の会社に抗議の電話とメールが殺到した。木原建設株式会社との提携は、即座に凍結。近江コーポレーションの株価は急落した。
ニュースが流れるたび、私たちは画面を凝視する。雪絵が囁く。
「次は、家族よ」
彼の両親に、息子の不倫と不正を、匿名の手紙で送る。家族の崩壊が、ゆっくりと始まる気配を感じる。夜中、近江から匿名アカウントに絶望的なメッセージが届く。『お願い、止めて……やめてくれ』読むだけで、吐き気がする。
でも、止まらない。
雪絵がハッキングで入手した裏帳簿を、記者にリーク。匿名メールで、複数のメディアに送る。送信の瞬間、部屋の空気が重くなる。
翌朝、新聞の見出しは「近江コーポレーション、脱税疑惑」。取引先が次々と離れ、臨時株主総会で彼は追及された。彼のスマホに、リアルタイムで監視アプリを仕込んでいた私たちは、彼が一人オフィスで頭を抱える姿を、画面越しに見ていた。彼の息遣いが、聞こえてくるようだった。いつ、限界が来るのか? 彼は自らを壊すのか?
クライマックスは、直接対決。私たちは彼を呼び出した。
場所は、初めてのデートをした三つ星レストラン。夜の石段を登る彼の影を、監視カメラで確認する。彼は青ざめた顔で現れ、テーブルに座った。周囲の視線が、針のように刺さる。
「紅子……誤解だ。全部、ビジネスなんだ」
彼の声が震える。私は冷たく笑い、雪絵が隣でスマホを操作する。白塗りの壁に、彼の全証拠が映し出された。メール、写真、財務データ。レストランの空気が凍りつく。
「あなたは、私を愛したって言ったよね? でも、全部嘘。婚約者には、何て言ってるの?」
彼は土下座し、許しを乞う。
「お願いだ……もう……壊さないで」
雪絵が最後に棘を刺した。
「遅いわ。あなたは、もう終わり」
私たちはレストランを出た。彼の叫びが、背後で響いた。
外の闇に溶け込みながら、雪絵が囁く。
「これで、終わらないわ」
最後の仕上げ――彼のSNSをハックし、すべてを暴露。近江はマッチングアプリで複数人の女性と関係を持ち、バカラ賭博にも手を染めていた。彼の人生は、完全に壊れた。
翌日、近江龍彦は会社を辞め、失踪した。新聞は「元CEO、疑惑で雲隠れ」と報じた。彼の人生は、完全に壊れた。
でも、私たちは知っていた。
彼はまだ、どこかで息を潜めている。いつか、復讐を返してくるかもしれない。その予感が、私たちをさらに結束させる。