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近江の失踪から半年――。
近江龍彦は、誰もが忘れかけた頃に、影から牙を剥いた。最初は小さな違和感だった。私のSNSに、見知らぬアカウントからのDM。
「西園寺紅子さん、あなたの過去を知ってるよ」
そこには卒業した高校の音楽室の写真が添付されていた。真っ先に連想したのは高橋悠斗だったが、今更……と無視した。
けれど小さな違和感は徐々に広がり、雪絵のインフルエンサーアカウントへの攻撃が始まった。突然、過去の投稿に無数のコメントが殺到した。
『姉を操ってるのはお前だろ』
『双子で男を狩ってるサイコパス』
証拠らしきスクリーンショットが拡散され始めた。高橋悠斗への復讐の痕跡――私たちが匿名で流した近江コーポレーションのデータの一部が、巧妙に編集されて、私たちを加害者に見せる形にされていた。
私たちのフォロワーが減り、ブランドの仕事がキャンセルされる。メディアが嗅ぎつけ、週刊誌の見出しに「美人双子インフルエンサーの闇」。連日のようにマスコミのカメラやマイクが玄関で待ち構え、私たちは眩しいフラッシュに晒された。テレビのワイドショーでは両親の交通事故死にまで言及された。
怒りに燃えた雪絵はパソコンに向かい、必死にハッキングを試みた。
「近江よ……生きてたのね」
そして、決定的な一撃が来た。深夜、私のスマホに動画が届いた。送信元は、近江龍彦の新しいアカウント。動画には、ペントハウスのリビングが映っていた。隠しカメラの映像――私たちが復讐を計画している場面。雪絵が「今までで一番残酷に壊すわ」と笑う瞬間。私の涙。そして、私たちが証拠をリークする様子。
どうやって?
この部屋は、私たちだけの聖域だったはずだ。動画の最後に、彼の声が低く響く。
『紅子、雪絵。僕も学んだよ……裏切りは許さない……』
私たちは凍りついた。雪絵が初めて、恐怖の色を浮かべた。
「紅子……私たち、監視されてた。……いつから?」
揺れるカーテン、柔らかな陽光、3人で過ごした週末。近江は私たちの目を盗み、部屋に監視カメラを設置していた。あの日から私たちは近江に監視されていたのだ。
翌朝、警察がペントハウスに来た。
「近江龍彦氏からの告発です。ストーカー行為、名誉毀損、サイバー犯罪の疑い……署までご同行いただけますか?」
私たちは黙って連行された。狭く、埃くさい取調室で、雪絵と目が合った。姉の瞳に、再び棘が宿っていた。でも、今度は少し違う――絶望と、狂気じみた輝き。姉は小さく呟いた。
「紅子……逃げられないわ。だったら、最後まで戦う」
私は頷いた。近江龍彦の逆襲は、まだ始まったばかりだった。彼は闇から、私たちを見据えている。私たちは檻の中から、彼を見据える。
誰が、誰を壊すのか。それは、まだわからない。ゲームは、逆転した。そして、終わりは見えない。