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先輩とオレだけの約束

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先輩とオレだけの約束

10 - 第9話 夢に酔いしれて

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2024年05月27日

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電車を降り、病院まで走り続ける。近場とはいえ、急がなくては。せっかく、ここまで色々な人に助けて貰ったのだから。

病院の自動ドアが開く。時刻は9時半をまわっていた。


「あらぁ、天馬くん!?」

🌟「はぁっっ、はぁっっ、はぁいっ!」

「こんな遅くに大丈夫なの!?」

🌟「連絡は、はぁっっ、してますっ!」


通い続け、慣れたこともあり、看護師さんとは仲良くなっていた。


「夜遅いから、てっきり来ないかと…」

🌟「ま、毎日、行くと決めてるのでっ!」


息を整えつつ、ケーキ片手に先輩が入院している病室へと急ぐ。


「本当、熱心な子なのね…」


階段を上がり、病室のドアに手をかけた。



🌟「神代先輩っ!!」


病院特有の匂いが肺の中に入ってくる。やはり、先輩は寝ていた。そうそう、目を覚まさないだろう。何本の管にも繋がれ、呼吸しているのか分からない。


🌟「このまま、眠ったままなのか??」


ポツリと呟いた言葉が病室内に響く。容態はそこまで悪くない。医師が言っていた通り、目覚めるのを待つだけとなった。


🌟「先輩、聞いてくださいよ、」


横たわるベットの横に椅子を置き、先輩の手を握る。


🌟「今日は色々な人と仲良くなったんです。暁山に翼に。2人ともすごく優しかったんです!」


待ち望んだ声が返ってくることはない。


🌟「それで、お土産に柑橘系ケーキ買ってきたんですよ〜。先輩の口に合えばいいんですが…。」


食べれるはずがない。眠ったままなのに。


🌟「学校では体育で…」


毎日毎日、同じ日々を繰り返す。出来事を全て話す。聞いてるか分からないのに。


🌟「_____だったんですよ〜。ほんとに面白いですねっ!!」


ニコッと笑ってみせるが、窓に反射する自分の顔はとてもだが見せられない。


🌟「ッッ、それで…、それで、」


先輩の前では泣かないと決めていた。あの日、助けてくれと本音を聞けた時に決意したのだ。泣かない、弱いところは見せないと。

だがッッ、だがッッ、。

思いが込み上げてくる。…苦しい、。


🌟「いつになったら、起きるんですか、」


苦しくて苦しくて。言葉が詰まる。


🌟「先輩がいない学校なんて、何一つ楽しくないですよ、。」


話したあの教室も出会った校門の前も。ショーユニットに入ってくれると決断したあの屋上も。

いないと分かっているのに。分かっているのに。探してしまう。


🌟「どうして、どうして、大切な人だけが奪われていくんですか、」


白いシーツに丸い模様が出来る。


🌟「理不尽、ですよっ、。こんな、世の中っ、。」


シーツに肘を置き、先輩の手を自分の額に当てる。なぁ、頼む。頼むから。


🌟「類、目を覚まして、オレに微笑んでくれ。…寂しいよ、。」


寂しくて、寂しくて、


🌟「くるしい、、。ずっと、ずっと、。」


生きた心地がしなくって。空気が薄い。

呼吸するのでやっとだった。


🌟「たす、けて、」


絞り出された声に唇を噛む。

声が届かないのがこんなにも苦しいものなのか。願えば願うほど胸が締め付けられる。


🌟「は、ふわ…ふわ、す…る」


もう…限界、かも…な

不思議と体や脳が浮遊感を覚え、ここで気を失ってしまった。



🌟「ん、」


寝ていた…?それとも気を失って…。

スマホの電源を入れるがつかない。充電がきれたのか。あくびをし、時計を確認する。


🌟「は、??」


25時…、つまり1時すぎ。焦りで頭を抱える。オレは一体何時間寝ていた、?いや、まずいだろ。電車やバスはない。

帰る手段がない…、。

スマホの充電器も持ってきてない。それよりも、親が心配してることが気がかりだ。


🌟「やら…かした、」


窓は真っ暗で小さな明かりがオレを照らしていた。


🌟「とにかく、病院を出るか、」


流石にどうにかして帰らなくては。椅子を後ろに引き、立ち上がろうとした時だった。

手首を掴まれたのだ。


🌟「ヒッッッ、」


おばけか幽霊か、はたまた未確認生物か、。怖い、怖い、怖い、。いまさっき、目を覚ました頭では認識出来なかった。後ろに愛しい人がいるというのに。


🌟「ゆう、れい、???」


ゾッとして後ろを振り向いて、目を丸くした。


🌟「〜ッッ、、」

🎈「ん、おはよ」

🌟「せんぱ、い」


管がたくさんある腕でオレの手首を掴んでいたのだ。月みたいに美しい眼がオレを捉えていた。


🌟「………か。」

🎈「ん??」

🌟「ばかっ!!!」

🎈「うわ!?」


神代先輩に飛びつく。あまりの勢いに下にあった椅子を蹴飛ばした。


🌟「ばかっ、ばかっ、」

🎈「うん?」

🌟「どれだけっ、またされたことかっ」


甘い花みたいな匂いが肺に広がった。あぁ、生きていたんだ。ここに先輩がっ、。

子供に戻ってしまったみたいに胸の辺りをポカポカたたく。


🎈「ふふふ、痛いよ」

🌟「う”ぅ”っ、」


思いが溢れて、何を伝えるべきか分からない。どうして、突然、。


🎈「僕もよく分かってないけど、君の声が聞こえてね、。」

🌟「オレ、の?」

🎈「うん、起きなきゃってなったんだ。」


やんわりと笑う。生きていたんだ。神代類は存在していたんだ。


🎈「やっぱり、君といると落ち着くね。ありがとう。助けてくれて。」

🌟「そんな、オレはなにも…。」

🎈「でも………ごめんね」


握られている先輩の拳は一層強くなる。ハッとし、顔を見れば…。


🎈「ごめんねっ、ごめんねっ、」

🌟「どうして、そんな悲しい顔をして、」


何かを我慢し、自分の気持ちを押し殺しているようにも見える。いやだ、笑ってくれ。先輩にはそんな顔似合わない。


🌟「わ、わらって…」

🎈「…あれを見てほしい、な」


力なく指さした方向に目を向け、固まってしまった。声にならない悲鳴。


🌟「じか、ん、が、」

🎈「…わかった、かな」


時刻は1時半を表し、秒針が止まっていた。勢いよく立ち上がり、病室のドアを思いっきり開けるが誰もいない。電気すらついてない。


🌟「どうなって、」

🎈「少し、頬を引っ張ってみたら、どうだい?」

🌟「頬??」


左手で思いっきり引っ張る。……が、痛くない、。


🌟「じゃあ、これはッッ、」

🎈「君の夢の中…だよ。」


意味が分からない。夢の中?先輩は起きているのに??頭が混乱する。


🎈「病室の外に出たら、時期に君は目を覚ます。現実に戻るってわけさ。」

🌟「っ、どうして、どうして、そんな冷静にいられるんですかッッ!!!」

🎈「どうしてだろうね、。」


取り乱すだろう。普通。だけど、先輩からしてみれば眠ったままってわけなのか。


🎈「なぜ、こうなったか僕にも分からないけど…。天馬くんの思いはすごく強いからね。神様が猶予をくれたのかなぁ。」

🌟「神様って、」

🎈「君は信じないかい?神様。いると思うんだよねぇ。この世界作ったのは神様って言うし♪」


また、呑気に。いまさっきまで悲しそうにしていたとは思えない。久しぶり話したせいで先輩の調子を忘れてしまっていた。これが通常運転か、と少し安心する。


🌟「…ほんとに起きたと思ったのに、」

🎈「あはは、見間違えてもおかしくない」

🌟「笑い事ではないですよ!!」


クスッと笑いが込み上げてくる。…懐かしいなぁ、。


🎈「っ、天馬くん、??」

🌟「え、あれ?」


頬を何かが伝って落ちる。


🌟「あれ、おかしいな、オレ。どうして泣いてっ、。」

🎈「〜っ、」


しきりになりやまず、落ちてくる涙。感情がコントロールできてない。


🎈「大丈夫、かい?」


優しく微笑む姿はこの世で生きている誰よりも美しく見えた。

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