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4 - 第四話「侵食」

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2025年07月25日

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朝の光が、やけに眩しかった。

目が覚めたないこは、天井を見ながら動けずにいた。

身体は重く、頭の奥で何かが鈍く響いている。


ないこ: ……なんか、変だな。


時間を確認して、慌てて支度を始める。

今日もやるべきことは山積み。

でも、どこか現実感が薄い。足元がふわふわしているような感覚。


ないこ: ……夢、だったのかな。昨日のも。


ぼんやりと鏡を覗く。

そこに映るのは、無表情な自分。


――いや、「自分」じゃなかった。


鏡の中の闇ないこ: おはよう。今日も、苦しそうだね。


ないこ: ……夢じゃ、なかったのか。


鏡の中の闇ないこ: 君が「僕」を認識した時点で、もう夢じゃないよ。

僕は、ずっとここにいる。ただ――今までは君が、見ようとしなかっただけ。


ないこ: ……どうして、そんなことを言うの。


鏡の中の闇ないこ: 優しさだよ。君が壊れ切る前に、ちゃんと向き合わせてあげてる。


ないこ: ……やめて。


目を逸らして、無理に笑う。


ないこ: 今日も配信、あるから。笑ってれば、なんとかなる。


鏡の中の闇ないこ: 笑ってれば、何が「なんとかなる」の?

ねえ、ないこくん。君、本当はもう、限界なんじゃない?


ないこ: ……っ。


自分の部屋の空気が、急に冷たく感じた。

視界の端に、黒い“もや”のようなものが揺れている。

鏡の中だけじゃない。部屋の隅に、床の影に、気配がある。


それでも、ないこは目を逸らす。

それが自分の中から生まれているものだと、気づきながら。


ないこ: 僕は、平気だよ。大丈夫。

……今までも、全部ひとりでやってきたんだから。


鏡の中の闇ないこ: そう。君はずっと、ひとりだった。


その言葉が、心の奥でぐさりと刺さった。

孤独に慣れていたはずなのに――

その一言が、どうしようもなく痛かった。


その日から、ないこの周囲で小さな異変が増え始める。


録音していた自分の声が、一瞬だけ別人のように低くなる。

寝ている間、無意識に何かを呟いている。

鏡に映る“自分”が、笑い方を間違える。


でも、誰にも話せなかった。

それを話した瞬間、「壊れた人」になるのが怖かった。


ないこ: ……大丈夫。これは、僕の中だけの問題だから。


だけど、そう繰り返すたびに、

“闇ないこ”は少しずつ――確実に、この世界に染み出していく。




次回:「第五話:境界」へ続く。



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