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こんな所でSSランク冒険者と遭遇か。それはこの際気にしないことにして、ルティに矢を放って彼女を弱らせた報いを受けてもらうとしよう。


「SSランク冒険者に警告する。今すぐその場を離れろ! さもなくば辺り一帯を沈める!!」

「――ハッタリ野郎め。やれるものならやれ! こちらはいつでもお前に矢の雨を浴びせられるぞ」


口ぶりを聞く限り、どうやらこの辺りに近づく冒険者を手当たり次第に襲っていると思われる。そういう相手ならば遠慮なく発動出来そうだ。まずは、ルティに毒矢を射った輩から仕留める。


詠唱は省略、手の平を上に向けて精霊魔法をイメージ……。属性は水、テイムしたラーナが持つ水属性攻撃魔法を展開。範囲は見えない敵から半径100メートル以内とする。


「【水属性魔法 ハイドロウェーブ】」


これの効果は範囲の敵の全装備を強制的に剥がし、一帯を沈下させることが可能だ。発動は即時、効果は無限でいいよな。


よし――


その直後。


「うわぁぁぁっ!? し、沈む……沈んでいくだと!? な、何だこの魔法効果……あっあぁぁぁ」

「ああああ……っ!! 装備が消えたぁぁぁ! た、助けてくれー」


少し離れた場所から聞こえて来たのは男たちの声だ。


物見も兼ねて好戦的な奴らが独断で攻撃を仕掛けて来たようだが、どうやら砦の仲間とは別働隊らしい。沈んだ様子も見ておきたいし、そこに行ってみることにする。


敵意を向けた相手はどんな奴なのか。


そう思いながら近づくと――


「アック様~た~す~け~て~!! あぷぷ……わぷぅっ」


何でルティが溺れているんだ?


「た、大変です、アックさんっ! ルティちゃんが!!」

「……見れば分かりますよ。どうして溺れたのか聞いても?」

「さっきまで近くに隠れていたのですが、突然地面が沈んだのです。カエルの女の子がすかさず私たちを守ってくれたのですが、運が悪いことにルティちゃんの真後ろが崩れまして」

「あ~」


姿が見えない相手に対して魔法を発動したのが裏目に出たようだ。威力は凄まじく、地面だった所が見る影も無くなっているのが何よりの証。その光景は、まるで初めから水底だったかのよう。


ルティの装備が外れていなかったのは幸いか?


全て外れていれば間違いなく彼女は素っ裸だ。とりあえずルティを助けてやる前にラーナに聞いておく必要がありそうだ。だが、肝心のラーナは何も気にするそぶりを見せずに水底をひたすら眺めている。


「……ラーナ、何故ルティを守らない?」

「あれはアックが発動した魔法。あの娘に害、無い。助けず、助かる」

「しかし、見て分かる通り溺れてるぞ?」


そこまでは手を出さないということだろうか。


カエルの化身だからなのか人間が持つ感情は持っていないようだが――


「無用、無用。アックから受けた魔法効果を得る。得られる……魔石の娘、得られる」

「おれの攻撃だからダメージを受けないってことか? 魔石の娘って?」

「魔石から呼ばれた娘……娘」


ラーナが言うことは相変わらず意味が分からないままだ。どう見ても今にも溺れて沈んでしまいそうではあるが、どうすればいいのか。溺れるルティの姿は確認出来ているが沈めた男たちは装備を全て失ったまま姿を消している。命を奪ったかまでは分からないが、泳ぐことが出来たならどこかに逃げたはずだ。


そいつらよりも今は――


まさか沈んでしまったんじゃないよな?


何とも言えない予感のまま水底をのぞきこもうと近付くと、何かが視界を遮った。


そして――


「アック様っっ!! わたしですわたし!!」

「のわっ!? ル、ルティ!? な、何で目の前に現れた!? さっきまで溺れていたんじゃ……」


必死になって溺れていたはずのルティが突然目の前に現れた。しかも何故か嬉しそう。


「覚えちゃいましたっ! アック様のおかげなのです!!」

「何だって?」


アクセリナもおれと同じように驚いていて腰を抜かしている。


「アック様、わたしに触れて下さいっ!」

「……どこにだ?」

「ここですよ~!」

「――うっ」


ルティの両手に引っ張られ、おれの手は彼女の下腹部に触れていた。


すると――


【ルティシア・テクス 水属性耐性強化 否:溺れ 主に依存】


そういえば息を吹き込んで毒の耐性が強化されたが、まさかだよな。


おれからの攻撃に巻き込まれたルティだったが、まさかそれら全てに耐性がつくようになったのか?


そうだとしたらルティだけが特別な力を与えられたということになる。


「アック様、わたしの状態はどうなってますか?」

「あぁ、うん……良くなっているぞ」

「本当ですか!? もっと、も~っとアック様から……えへへ」

「お、おぅ」


不思議な力を与えてしまったものだが、魔石で呼んだ娘だからだとすれば合点がいく。とにかくアクセリナを休ませたら砦に向かってみるしか無さそうだ。

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