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また明日

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彼のはなし

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2022年08月25日

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〜彼のはなし〜犯人は捕まって、重い刑になった。その事件から僕は彼女と一度も会っていない。いや、会えない、何度か彼女の家に行ったが、断られた。「何度も来てくれて申し訳ないけど、彼女とは距離を置いて欲しいの。それが華帆の、気持ちだから…、ごめんなさいね。」「……はい。失礼します。」もう……会えないのか、僕がもっと早く助けられたら…!ごめん。ごめんな…。大学は家から通っていたが、逃げるように僕は、大学の近くのアパートに移った。





春――もう僕も卒業か…。まだあの事件が頭の中から、消えない……。「卒業生の皆さん!ご卒業おめでとうございます。これからは君たちは社会人となるね。」社会人か……、何社かうちで働かないかと話はきているけど、、、どうするか。母さんと父さんからの呪縛は取れたけど…、何をすればいいんだ?「これから卒業祝いしに行くんだけど、シュンも行くだろ?」「ごめん……、このあと用事があるんだ。だからまた誘ってくれ!」「そうかそうか!じゃあまたな!」「おう!またな!」


桜が舞う季節――。僕はこの季節が嫌いだ。父さんと母さんが事故で死んだんだ、葬式に出て、何故か涙が出なかったんだ。心のどこかでホッとしている自分がいる。「ほら、あの子よ。かわいそうね、まだ若いのに…。」「親が死んだって言うのに、涙の一つも出ないのかよ…」「どうする?誰が引き取るの?うちは無理よ。子供が三人いるし…。」「ウチだって無理よ。子供嫌いだもの。お金が沢山かかるじゃないの。」「高校卒業しているし、何とかなるんじゃない?」うるさい。五月蝿い。みんな嫌いだ。「遺産は誰が貰うのかしら。」みんな自分のばかりで……うんざりする。「皆さん…大丈夫です。父さん達の遺産もあるし、今まで貯めてた分もありますから。」「そう。そうだわよね!」「そうだな!」「今日は本当にありがとうございました。」父さん達が亡くなったのは大学二年生の時だった。交通事故、相手が飲酒運転と無免許だったらしい。酒飲んでしかも無免許で運転なんかすんなよ。と最初は腹立たしかったが。人間は慣れるもんだな笑笑。



母さん、父さん、オレ大学卒業しました。だからもう安心してください……。オレを解放してください。「…………。また来ます……」オレってどんな子供だった?

「ママただいま!!今日テストで100点取ったの!」「あら!すごいじゃない!」初めて褒められた。でも――。「でも、呼び方”ママ”じゃないでしょ?お母さんでしょ!気持ち悪いからもう呼ばないで!」気持ち悪い……気持ち悪い気持ち悪い「はい。次から気をつけます。お母さん。」「そう。それでいいのよ。」「お母さん!またテストで100点取ったんだ!」「そう。あなたは当たり前よ!そのぐらい普通でしょ。そんな事でいちいち騒がないでちょうだい。」あの時以来、僕はお母さんに褒められなくなって、僕はお母さんにみて貰いたくて、褒められたくて……。「今日テストだったでしょ?何点だった?」「90点。」「はー??何やってんの?!今日ご飯抜きよ!明日から塾通わせるから!」「もう、中学生って言うのにどうするのよ。その点数で!」「えっ?」全然、僕をみてくれない。なんならわざとやるんじゃなかった……。








「ごめんなさい!ごめんなさい!もうしないから!もっと頑張るから!お母さんの言う事全部守るから!」「だから、その泥団子だけは……!」「あなたが悪いのよ。こんなゴミまで持ってきて、あなたがお母さんを困らせるから、言う事聞かないから、恨むなら自分を恨むのね!!!」グシャ――。彼女から、初めて人からもらった大切なものなのに。最初から大切なものなんか集めるじゃなかった。なんなら全ていらない……。もうやめよう。こんな感情があるから、こうなるんだ!「偉いわね〜また満点じゃない、やればできるじゃない、!」「この前ねあなたのクラスのお母さん達から、シュンくんは優秀なのね、凄いわー、うちの子も見習って欲しいわ。どうやったらできたの?」「そんな〜私は何もやっていませんわ〜ただあの子が勝手にやっているのよ〜。時々心配なのよね。テストも全部満点なのよ。」「あら〜そうなの。素晴らしいお子さんね。」「へー。」なんだ…簡単じゃないか。感情なんかいらない。


「お兄ちゃん、助けて!」「おっと動くなよー」また、僕は大切なものを助けられないのか?そもそも、大切なのか?助ける必要……!何を考えているんだ僕は!!一瞬自分が恐ろしくなった。

「偉いわね〜シュン、人助けなんか、中々出来るもんではないわよ〜、おかげでお隣さんから感謝状も沢山貰っちゃたわ〜。」「…お父さんは?」「仕事よ。いっつもいっつも私にばっか押しつけて!」「あまりお父さんの話はしないでちょうだい。ホント気分悪くなる。」「ごめんなさい。」勉強しないと。「あっ、そろそろ高校も卒業ね、大学は東大に行くのよね。あっハーバードでもいいけど…。」「いや、東大にするよ。」「そう。あなたなら。できるわよね??」「うん。」「なら安心だわ。」

高校卒業前――僕は担任の先生に、こう言われた。「本当にやりたい事がないのか?大学はここでいいのか?」「はい。いいんです。ここで。母が喜ぶので。」「またそれか…。シュン。君には自分の意思、感情がないのか?君はロボットか。」その時初めて気づいた。ロボット。人間ではなくて。何してんだろう。僕は。「それと、僕ではなくオレって言ってみ?自信持つぞー笑笑強くなれる気がするぞー笑」「僕ではなく…オレ…ですか。わかりました。」「またか。断ると思ったんだが…」「いいんです。オレ大学は行って頑張ります。」「……!そうか!」いい先生だったな……。

「おいっ!お前か?首席代表の人は。」「そうですけど……。なにか?」「いやーすげーなと思って、そんないい点数だったのか?何点だ?」「500点。」「はー?マジかよ…。すげぇーな!」「別に…凄くなんか」「なあ?俺ら友達にならねぇか?いいよな??」「いいけど……。」「よっしゃー!」大学生活――。高校と何が違うのか…わからなかった。でも少し違うのは、友達ができた事だな。変なやつだけど。「なな、なんで一回も表情かわらねぇーし、全部YESなの?ロボットみてぇーだそ?」君はロボットか――「おいっーやめれよ。別にいいだろう。」「えーだってよー怖くねぇか?」「………………。」「ごめん…。」「ちょっ…どこ行くんだよ!」

そんなの。オレが知りたいよ。いつからだろう。笑わなくなったのは。ゴホッ――ガハっ……うぇっ気持ち悪い――。うるさいうるさい!!感情なんかいらない。ないはずなのに……なんで……こんなにも……わからない。わからない。「ふぅ――。よし。オレなら大丈夫だ。」

「おい、大丈夫か?顔色悪いぞ?」「平気です。気にしないでください。」「そうか。」また敬語、壁が出来てしまったんだな。まぁいいか。



四年後オレは大学を卒業して、社会人三年目になる。そろそろお金貯まったし、仕事辞めて自営業にするか。確か、父方の祖母達がやっていた、お店がまだ残ってたはず。電話してみるか。プルルルルっプルルルっ――ガチャ……「はい。」「あっおばぁちゃん?シュンだけど元気?」「シュン!久しぶりね。元気よーどうしたの?」「あのさ、ばぁちゃんがやってたお店どうなってる?」「まだ残ってるわ。もうしめたのだけど、どうしようかと思ってたの。どうして?」「それ、オレに譲ってくれないか?お金は払うから。」「えっ!いいけど別に払わなくていいわよ。私たちのものだし…何かするの?」「うん。今やっている仕事を辞めて、自営業でもしようと思って、自立したいんだ。父さんからも母さんからも……」「そう。ごめんなさいね、うちの息子が……」「あの人頑固だから、あなた方に勘違いさせてたと思うし。応援するわ。」「うん。ありがとう。」まだオレは感情が戻ったわけではないけど、少しずつ、自分の意思が出来るようになった。「うん、また。」ふぅー

「あの、社長、辞めさせてください。これ辞表です。」「そうか、理由を聞いても?」「自分一人で頑張りたいと思ったんです。」「そうか、やっと自分の意思が出来たんだな。頑張れよ」「はい!お世話になりました。」

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