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 なにかが足りなくて、なにかを忘れている。


 無意識のうちにこぼれる「ショッ𑀱゚」の名前が、誰の名前かもわからなくて、でも、とにかく大切で愛しい存在だったということだけは、わかっていた。


 ㅁꎛ゙ㅁとシャꠀㅁンは死んだらしい、ということを人伝に聞いた。この研究所は狂ってる。俺も狂ってる。みんな狂ってる。だって、ゴールデンブラッドだからというだけで、軟禁され、あろうことか殺されるなんて、あっていいはずがない。


 でも、冷淡な思考は可哀想とは思わない。やっと、開放されたのかな、なんて勝手に思っただけだった。やっぱり俺もこのとちくるった施設の、政府の一部だ。狂ってることに変わりはない。


 がっちゃん、と扉を開くと、いつもと全く変わらない位置に、あいつがいる。


「੭ੇᘄ〜」

「…」


 こいつも、とっくに壊れた。最近になってようやくわかった。耐えられなかったんだろうと思う。


 誰も救えなかったと、こいつも勝手に申し訳なく思っているんだ。


 虚ろな目は、虚空を見つめて、戻らない。たぶん、こいつがちゃんと俺を見ることはない。紺色の髪は、艶をなくして、ボサボサのまま。ときどき起こる過呼吸も、治らない。強制的に産ませた子どもはもう三人目。体力的にも限界が来ているんだろう。


 何も話すことなく、彼の定位置の隣に居続ける。


「…雨やな」


 じっとりと湿った室内は、これまでも、これからも。明るくなることはない。





 朝早く、ባ゙ㄦッᨚ゚ンに呼び出された。


「教育係の総入れ替えを行う」


 俺だけじゃない。もうひとり、教育係が揃っている。けれど、俺とゾㄙとの間は、ぽっかりと不自然に空いていた。


 本当はもうふたり、いたはずだった。ひとりは反逆により殺され、もうひとりは脱走した。脱走したほうは、詳しくはしらないが、研究していた個体と共同脱走し、警察に捕まったらしい。


「へえ…」


ゾㄙは特に興味なさげに答えた。


「ちなみに、理由は?」


俺も、とくに興味はない。一応、聞いておこうと思って尋ねると、ባ゙ㄦッᨚ゚ンの口角があがった。


「研究は、もう十分だからだ」


「…もう研究は必要ないってこと?」


「少し違う。今の研究員はもう必要ないということだ」


にやりと怪しげに笑う。個室の電気が点滅する。


「優秀な研究員が入ったからな。お前たちはもう用済みだ」


バシュッ、とባ゙ㄦッᨚ゚ンの袖から麻酔銃が発射される。それに気付いたときにはもう遅くて、地面に膝をついていた。意識が急速に遠のく。ゾㄙも、あっけなくやられたらしい。視界の端で倒れたのが見えた。


あかん、もう……。視界が暗転する。




「おい、起きろ」


バシャッと水の音。冷たい感触で目が覚める。


自由がきかないからだ。おそらくまだ麻痺していて、腕は後ろで拘束されている。


「おはようさん。随分呆気なかったな」


トン、とポリバケツが置かれる音。


もうちょい粘るかな思っててんけど、と目の前のᡰンᡰンは薄く笑う。ようやく鮮明に見え始めた目で、周りを確認する。確かここは──


「ここは、A棟の地下牢獄や」


A棟地下牢獄。脱走を試みたやつや内部機密を漏らそうとしたやつはみんなここに入れられて殺される。そいつはもういらないから。なんて、ባ゙ㄦッᨚ゚ンに散々聞かされていた。


上に比べて最悪な環境。換気も十分にされておらず、悪臭が漂い、そこらじゅうに血の跡があった。気持ちが悪い。


見当たる限りゾㄙはいない。別の場所にいるのだろうか。


「さて、お前はここで死ぬわけやけど」


ちゃきんとᡰンᡰンが愛用するダイヤ剣が首の真横につけられる。冷たいその刀身に、己の命はもう長くないと悟らざるをえなかった。少しでも寄せれば切れる薄皮なのだから。冷や汗がつうっと伝う。


「どうせ最後や。聞きたいことはあるか? 出血大サービスでもれなく答えたるで」


ᡰンᡰンが、少し剣をずらす。緊迫感が一気になくなって、心臓の鼓動が安心したかのように速く波打った。


「…せやな…。ባ゙ㄦッᨚ゚ンが言うてた〈優秀な研究員〉って誰のことや」


「…政府の方らもそろそろ待ってくれなくなってきてな。裏の方たちに手伝ってもらうことにしたんや。それはそれは優秀でな。もうお前たちはいらへんのや」


「情報もらされたら困るってことか? ハッ、ባ゙ㄦッᨚ゚ンも随分怯えてる様子やな」


「黙れ!」


挑発してやると、目を鋭く細め、剣を振りかざしかけた。本当にこいつはባ゙ㄦッᨚ゚ンが絡むと短気になる。


「あとは…逃げた教育係はどうなったん?」


対して気にもせず、飄々と聞いて見せると、ᡰンᡰンは多少頭が冷えたらしく、剣を鞘にしまった。


「殺したで。一足先に。ቻᯇ𐩀と一緒に捕まってな」


教育係はባ゙ㄦッᨚ゚ンが殺したらしいが、ゴールデンブラッドの方は自ら命を絶ったという。


「そういえばアイツ、あんたが記憶消したはずなんに、しっかり覚えてやがったで?」

「、え?」

「おまえ、あいつと兄弟やからって情がうつったんちゃうよな? ショッ𑀱゚に」


ショッ𑀱゚…?




頭に激痛が走る。ショッ𑀱゚と、兄弟?


知らない記憶が流れ込んでくる。紫色の目をしたやつが、幸せそうに笑う場面。一緒に手を繋いで帰る場面。喧嘩した場面。泣く場面。そして、遠くで悲しそうに俺を見つめる場面。絶望したような顔……


あいつと兄弟だった?


いや、違う。あいつはただの亡命者で、関係ないやつで…


ただの研究者仲間で、全部全部たまたまで…






違う






違う、違う






違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うッ!!!!




「ショッ𑀱゚…ッ」





 ボロボロと涙がこぼれていく。


なんで、なんで忘れていた? 薬なんて、大したことないのに。


最後まで、守りきれなかった。助けてやれなかった。見殺しにしてしまったも同然じゃないか。


「やっぱり、⊐⺭シꛒが代わりに使っただけか」


油断しとったわ、とᡰンᡰンが呆れたようにいう。


「返せよ…ッ、ショッ𑀱゚を返せ…!!!!」


「八つ当たりはやめてもらえますかね。お前が全部招いたことや。ショッ𑀱゚に忘却薬を打っておけば死ぬこともなかったんに」


ため息をついて、もう一度剣を構えられる。


「もう面倒くさくなってきたわ。時間もないし。んじゃ、今までありがとさん」


 激痛が、遠のいていく。


ごめん、ごめん…ショッ𑀱゚、守れなくてごめん。


 ੭ੇᘄも、ちゃんと寄り添えなくてごめんなぁ…ッ。辛い思いばっかりさせたよな。俺が、お前ときちんと向き合えていたなら。同情はできなくても、せめて近くで頼れる存在になれていたなら。




後悔ばかりの人生だった。



もしも、来世があるのならば。

ふたりを守れる世界でありますように。







質問・次の次は新人組、四流どっちがいいですか?


コメントで答えてくださると嬉しいです!


(なおストーリーに矛盾が発覚しましたので、「白猫のお導き」を少し変更します)


だいたい2500文字くらいの分量で書いているんですが、どうなんですかね…? ちょうどいいくらいなのかな? 色々試行錯誤しながら頑張ってます。


やべえな…相棒組のはずなのに、先輩後輩が目立つ…まずい。まあね! 転生後でめちゃくちゃ絡ませるつもり(ここ大事)ですから。


ちなみに前回と違ってまだ転生していないのは、まぶは先に死んじゃってるけど、相棒(というか⊐⺭シꛒさん)はまだ生きてるからです。


次は相棒組・੭ੇᘄ先生の予定です。とんでもなく暗くなりそうだし、短くなりそうですが…。


ᰔとフォローしてくださる方がいて感謝感激です…ありがとうございます。


ᰔ、コメントお待ちしております!


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ゴールデンブラッド〈輪廻転生〉

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コメント

2

ユーザー

ありがとうございます!!了解しました、四流ですね👍️

ユーザー

圧倒的文章力と、内容が面白すぎて次が楽しみです🫠 個人的には四流が気になるなー🙃

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