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泰輝さんと別れた後、走って陽雅さんの家に向かう。
中に入りリビングの扉を開けると、ソファーに座って俯く陽雅さんの姿が見えた。
俺が陽雅さんに近づくと、こっちを見た。
「恭也。なんで?」
「陽雅さんが心配で来ちゃいました。さっき泰輝さんから、陽煌さんの事で傷ついてるって聞いて。陽雅さん、大丈夫ですか?」
「ちょっと…いや、結構大丈夫じゃないかも」
陽雅さんはそう言って苦笑いする。
「じゃあ、今日は俺がそばに居ますね」
俺は、陽雅さんの横に座る。
「…ありがとう」
陽雅さんは前を向いて俯いた後、呟く。
「…兄ちゃんがね、小さい時から俺を騙してたんだって」
「小さい時からですか?」
「うん。俺が生まれてきたから」
「え?」
「昔の俺は、独占欲なんてなかったんだって。でも、兄ちゃんは独占欲が強かった。それで、父さんと母さんが俺ばっか可愛がって。それが嫌だったみたいで、ドルの力で俺の独占欲を強くしたんだって」
「じゃあ、陽煌さんがドルの力を使わなかったら、陽雅さんは独占欲が無かったって事ですか?」
「うん。今まで俺が苦しんできたのは、兄ちゃんのせいだって知って。あんなに優しいお兄ちゃんだったのに、裏で俺の事苦しめてたなんて。本当は信じたくないけど、信じなきゃいけないんだよね」
俯いたままそう言う陽雅さんは、どこか寂しそうだ。
(そっか。陽煌さんも…)
「陽煌さんは寂しかったのかもしれないですね。お母さんとお父さんに相手にされなくて」
「そうかもしれないけど、寂しかったなら寂しいって言って欲しかった。ドルの力使って俺を縛るのは違うよ。そのせいで優真も恭也も傷付けちゃったし」
陽雅さんはそう言った後、俺を見る。
「恭也、ごめんね。たくさん傷付けて」
そう言う陽雅さんを俺は抱きしめる。
「いいんですよ。陽雅さんのせいじゃないですし、仕方ないです」
俺がそう言うと、陽雅さんは俺を抱きしめ返す。
「…朝まで一緒に居てくれる?」
「はい。もちろんです」
「ありがとう」
陽雅さんはそう言って俺の服をギュッと掴んだ。
寝る時間になり、二人向かい合ってベッドに寝転ぶ。
「恭也、おやすみ」
「おやすみなさい。陽雅さん」
そして俺は眠りについた。
鳥のさえずりで目が覚める。
目の前では、陽雅さんが眠っていた。
俺は、陽雅さんの頭をそっと撫でる。
「ん…」
陽雅さんの目がゆっくり開く。
「おはようございます」
「ん…おはよう…」
陽雅さんはそう言った後、ぼんやりと遠くを見つめる。
そして、一瞬目を大きく開いたあと、慌てた様子で言う。
「恭也、大学大丈夫?」
「今日は昼からなんで大丈夫です」
陽雅さんは、俺の言葉を聞いて、安堵の表情を浮かべる。
「良かった。じゃあ、昼まで一緒に居られるね」
「そうですね」
そう返事すると、陽雅さんは俺の胸に自分の顔を埋める。
「ちょっとだけ、こうしてていい?」
「もちろんです。好きなだけこうしててください」
俺はそう言いながら陽雅さんの頭を撫でる。
「…ありがとう」
そしてしばらく、そのままでいた。
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恭也が大学に行って少しすると、玄関の扉が開く音がする。
そして、リビングの扉が開くと、泰輝が入って来た。
泰輝はソファーに座る俺の前まで来て、立ち止まる。
haru
46
ラムネ@夏目様教者
629
「陽雅さん。すみませんでした」
泰輝はそう言って頭を下げた。
そんな泰輝を見て、俺は慌てて立ち上がる。
「ちょっと、頭上げてよ。急に謝ってどうしたの」
「陽雅さん騙してたのは俺も一緒なので。ちゃんと謝りたくて」
「まぁ…それはそうだけど、兄ちゃんに逆らえなかったんでしょ?」
「別に逆らおうと思えば逆らえましたよ。ただ俺が、陽煌さんの言う通りにしたかっただけなので」
「でも、悪いと思って俺に全部話してくれたから、そんなに怒ってないよ」
俺の言葉を聞いて、泰輝は安堵の表情を浮かべる。
「ありがとうございます」
「うん」
俺の返事を聞いて、泰輝はソファーに座る。
そんな泰輝を見て、俺も座った。
「…俺、陽煌さんに本気で愛されてないと思ってたんです。陽煌さん、いつも陽雅さんの事聞いてきてたから」
俺が泰輝の方を見ると、泰輝は話を続ける。
「でも、違ったんです。陽煌さんはちゃんと俺の事愛してくれてて、むしろ陽雅さんの事をするのは、俺を守るためだったんですよ」
「え?」
「俺が大学の人の話して、嫉妬したみたいで。嫉妬し過ぎると、俺に危害を加えるかもしれないって、話逸らすために陽雅さんの事聞いてきてたみたいですよ」
「でも、俺を苦しめるために泰輝をスパイにしてたんじゃないの?」
「それは正直、否定できないです。でもそれは、俺が陽煌さんにちゃんと愛を伝えないで、陽煌さんを不安にさせちゃったせいだと思います。俺がちゃんと愛を伝えてたら、陽雅さんをもっと早く苦しみから解放出来てたのかなって」
「それは違うよ。泰輝が兄ちゃんを愛してても、兄ちゃんが俺を恨んでるのには変わりないんだし。変わらず俺を縛ってたと思うよ」
「陽煌さんは陽雅さんの事恨んでるかもしれないですけど、それ以上に陽雅さんの事大好きなんです。この前も、寝言で”陽雅”って優しい笑顔で言ってて。ちゃんとお兄ちゃんの顔してましたよ」
泰輝はそう言ってニコッと笑う。
「でもそれは、偽物のお兄ちゃんなんでしょ?」
「違います。陽煌さんは陽雅さんの事大好きですよ。陽雅さんも陽煌さんと一回ちゃんと話してみてください。俺達もお互いすれ違ってた所とか分かりましたし」
泰輝の話を聞いて、俺は俯く。
本物の兄ちゃんが俺の事をどう思っているのかを知るのが正直怖い。
兄ちゃんに独占欲を操られて、本当にムカついた。
大嫌いだって、あの時は本気で思った。
でも、完全に嫌いにはなれなくて、むしろまだ好きで、兄ちゃんも俺を好きでいて欲しい。
だからこそ、本音を聞くのが怖いのだ。
「…それと、零斗さんの事なんですけど」
その言葉で俺は再び泰輝を見る。
「俺、あの人の事は正直苦手です。変態だしうるさいし。でも、いないといないでなんか寂しいんですよね」
泰輝はそう言って苦笑いする。
「俺も寂しいよ。零斗に会いたい」
「だったら、仲直りしましょう。陽雅さんがちゃんと謝れば、陽雅さんと零斗さんなら仲直り出来ると思いますよ」
「でも、零斗は多分、俺の話なんて聞いてくれないよ」
「なんでそうやって決め付けるんですか。話してみないとわかんないですよ。ほら、やらない後悔よりやる後悔ですから」
その言葉を聞いて、俺は優真の事を思い出す。
“やらない後悔よりやる後悔だよ”
「俺は陽雅さんには、陽煌さんとも零斗さんとも仲直りして欲しいです。でも、それはただの俺の願望なので。一番は陽雅さんの気持ちです。でも、少しだけ考えてくれたら嬉しいです」
泰輝はそう言ってニコッと笑う。
そんな泰輝を見て、俺は携帯を取り出した。
零斗に電話を掛けるが、繋がらない。
俺は、LINEを開き、メッセージを送る。
『零斗、話したい』
少しして、返事が来る。
『俺は話すことなんかねぇ』
『お願い。話聞いて』
『悪ぃけど無理だわ』
『もう連絡してくんな』
『お願い。ちゃんと謝りたいの』
そう送ったが、それから返事は来ない。
俺は、恭也のLINEを開く。
恭也に連絡をして、大学が終わったら、みんなで快くんの家に行く事になった。
そして夕方、俺は恭也の大学の門の前で待っていた。
少しして、二人が出てくる。
「恭也」
「陽雅さん」
そう言う恭也の横いる快くんに言う。
「快くん、ありがとう」
「いえ。俺も二人には仲直りして欲しいので」
「ありがとう」
「いえ。じゃあ、行きましょうか」
快くんがそう言い、俺達は歩き出した。
コメント
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寺島あおいです🤍 第53話、拝読しました。 泰輝くんが陽雅さんにきちんと謝ったのが良かったです。そして"やらない後悔よりやる後悔"という言葉で、陽雅さんが一歩踏み出そうとしているのが伝わってきました。零斗さんにLINEを送って、たとえ拒絶されても「ちゃんと謝りたい」と思える陽雅さんの気持ちの変化に胸が熱くなりました。恭也くんと快くんも一緒に動いてくれるところがまた温かくて…。 次が気になります!