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リアムが手を伸ばし、僕の腕を掴んで引き寄せる。引き寄せられるままにリアムの胸に顔をつけた。
「衣装、似合ってたぞ」
「…ありがとう。リアムも似合ってたよ。すごくかっこよかった」
「そうか。フィーにそう言われると嬉しいな」
僕の額にキスをして、リアムが笑う。
リアムの衣装は、白地に金糸の刺繍がある。それぞれの髪と同じ色に合わせてくれたようだ。ただ、リアムの衣装は軍服に似た作りだけど、僕の方は袖や上着の裾にレースがついて、華やかだ。そのことをリアムに言うと「おまえの魅力を際立たせている」と指で頬を撫でた。
「伯父上に挨拶した時に、部屋の隅にノラもいただろう?あの時にフィーを見て、一番似合う服を急いで作ってくれたんだ。俺はもっと派手にしてもいいと思ってるが、あれくらいの方がフィーの魅力を引き出せていいのかもな」
「みんな僕を褒めすぎじゃない?なんか…恥ずかしいよ」
「ふむ…おまえが辛い環境で育った欠点はそこだな」
「なに?」
「自分を過小評価するところ。フィーを知れば誰だって好きになる。それくらい魅力的だぞ」
「そんなこと言うの、リアムとラズールだけだって…」
イヴァル帝国の王城にいた頃は、誰も褒めてくれなかった。ラズールは褒めてくれたけど、僕の従者だからだと思っていた。
リアムが褒めてくれるのも、僕を好きだからよく見えてるだけだと思うのだけど。
口の中でブツブツと呟く僕を抱きしめたまま、リアムがベッドに近寄り飛び込んだ。
「わあっ」
「フィー!明日が楽しみだな」
「リアム、機嫌がいい?」
「そりゃあそうだろ。やっとフィーと伴侶になるんだ。嬉しくてたまらない」
「ふふっ、僕も嬉しい」
「ん」
リアムが唇を突き出して、僕の唇に触れる。
軽くキスをして、僕の首を舐めてハッと顔を上げる。
「まずい」
「どうしたの?」
「ラズールに注意をされてたんだった。アイツ怒ると何するかわからないからな。フィーに触りたいが明日にする。今夜はもう休もう」
「…うん?」
ラズールに注意なんてされてたっけ?
そういえばリアムが目覚めた後に、怖い顔で睨んでいたなと思い返す。
それに僕もリアムに触れたい。だけど疲れて明日、起き上がれなくなっては困る。
僕はリアムの頬を撫でると「わかった、おやすみ」と形の良い唇にキスをした。
昨夜はリアムの腕の中でよく眠れた。きっとリアムが強力な治癒魔法をかけてくれたおかげだ。
鳥の鳴き声を耳にしながら隣を見ると、リアムの姿がない。シーツがまだ暖かいから、つい先ほどまではいたんだろう。
「どこに行ったのかな…」
ポツリと呟いて起き上がり、ベッドを降りて窓辺へ行く。鳴き声の主を探そうと外を覗いていると「おはよう」と背中から抱きしめられた。
「おはようリアム。どこに行ってたの?」
「ゼノのところへ。頼んでいたことがあったからな」
「ふーん?起きたなら僕も起こしてくれればよかったのに。目覚めた時に隣にいなくて寂しかった…」
「うぐっ…」
「どうしたの?」
変な声を出して、リアムが僕の肩に顔を埋める。
僕は振り向き首を小さく傾けた。
「いや…。フィーは何をしていたんだ?」
「ほら、鳥が鳴いてる。どこにいるか探してたんだ」
「…本当だ。鳥の鳴き声など気にしたこともなかったが、こうやって聞くとかわいらしいな。さて、そろそろ朝餉を食べて準備をしようか」
「うん。晴れてよかったね」
「ああ。きっと良い日になる」
僕とリアムは見つめ合い、そっと唇を合わせた。
城の東側にある礼拝堂は、真っ白な壁に太陽の光が反射して、とても神々しく輝いている。それに礼拝堂の周りには、緑豊かな木々や色とりどりの花が植えられており、とても美しい。
僕が声も出せずに礼拝堂に見とれていると、リアムに笑われた。
「フィー、ぼんやりするなよ?今日のことはしっかりと覚えていてくれよな」
「…え?あ、わかってるよっ。礼拝堂があまりにもキレイで…本当にここで式を挙げてもいいのかな」
「いいに決まってる。なあジル」
「はい」
扉の前で待機しているジルが、笑って頷く。
僕とリアムは、ジルとノラに案内されて礼拝堂の前に来た。
礼拝堂の中では、ラシェットさんとゼノ、ラズールの三人が待っている。
ラシェットさんに仕えるユフィやテラ、他の騎士や使用人達のたくさんの人が式に立ち会いたいと願い出たらしいけど、ラシェットさんが却下した。二人だけで静かに式を挙げさせてやりたいと言ってくれた。でもラズールが絶対に見届けたいと譲らなかった。だからバランスを取って、リアムの側近のゼノが参加することになった。そして神父の役をラシェットさんが担ってくれる。
ラシェットさんには、感謝しかない。リアムのことを、実の息子以上に思ってるからだろうけど、僕にもとても親切に接してくれる。これからは本当の父親のように甘えてほしいとも言われた。僕には父上の記憶がない。常にラズールが甘えさせてくれたが、ラズールは父というより兄のような存在だ。だからラシェットさんの言葉は嬉しかった。
「どうした、静かだな。緊張してる?」
「…してる。だって一生に一度のことだよ?つまづいたりしたら…どうしよう」
「ははっ!心配するな。俺が受け止めてやる」
「うん…リアムは緊張しないの?」
「ああ。嬉しくて仕方がない。ずっとこの日を待ち望んでいたからな!」
「うん、そうだね。僕も嬉しいっ」
「では行くか。永遠の愛を誓いに」
「リアム、僕を放さないで」
「何があっても放さない」
僕はリアムの腕をしっかりと掴んで前を向く。
ジルとノラの手によって、重厚な扉がゆっくりと両側へと開く。
正面奥にある大きな窓から差し込む光が眩しくて、一瞬目の前が真っ白になった。