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外伝A
「完成」を復活させようとする新部署の失敗例
新部署の名称は、
完成管理推進室。
誰が名付けたかは、
もう覚えていない。
1
設立趣意書(抜粋)
当社の成長鈍化は、
「完成」という到達指標の喪失に起因する
よって本部署は、
再定義された「完成」を
提供側・管理側双方に再実装することを目的とする
誰も反対しなかった。
理由は単純で、
反対の仕方がわからなかったからだ。
2
最初の試み
完成管理推進室は、
まず定義を作った。
完成A:業務達成率95%以上
完成B:顧客満足度4.5以上
完成C:感情安定度スコア良好
三段階。
これで、
すべて解決するはずだった。
しかし、
現場から質問が出た。
「AとBは満たしていますが、
Cが不明です。
どの時点で測定しますか?」
推進室は答えた。
「完成時点です」
質問者は、
少し黙ってから言った。
「完成時点を
どう判断するんですか?」
3
二度目の試み
推進室は、
完成宣言者を設定した。
管理職が宣言
システムが補助
異議申し立て不可
その週、
完成宣言は一件も出なかった。
理由は簡単だった。
宣言した瞬間、
責任が確定するからだ。
なぜ今なのか
なぜ未達を許容したのか
なぜその人なのか
誰も、
署名したくなかった。
4
三度目の試み
推進室は、
完成という言葉を
柔らかくした。
準完成
擬似完成
実質完成
その結果、
現場ではこう呼ばれた。
「まだ終わってないって意味ですよね?」
完成管理推進室は、
半年で縮小された。
最終報告書の結論は
一行だけ。
「完成」は
指標として
再利用不可能である
誰も、
反論しなかった。
本編
「完成後」を想定していた管理職が全員フリーズする回
1
異変
朝の会議で、
部長が言った。
「……で、
この案件は今、どこまで?」
誰も答えなかった。
資料には、
こう書かれている。
状態:進行中
評価:保留
完了判定:未設定
部長は、
もう一度聞いた。
「完成は?」
沈黙。
2
管理職の思考停止
彼らは、
完成後の仕事しか
設計していなかった。
成果発表
評価配分
次案件への割り振り
完成しない状態は、
想定外だった。
課長が言った。
「じゃあ……
まだ様子見で」
それを聞いて、
全員が安心した。
様子見。
それは、
何もしない理由として
完璧な言葉だった。
3
問いに弱い
若手が、
恐る恐る言った。
「この作業、
何をもって終わりなんでしょう?」
管理職たちは、
一斉に目を逸らした。
誰かが言った。
「現場で判断していいよ」
その瞬間、
若手は理解した。
管理職は、
答えを持っていない。
4
フリーズ
それから、
管理職たちは
会議を増やした。
決めるためではない。
決めないために。
・次回持ち越し
・検討中
・前向きに調整
完成後を想定していた彼らは、
完成しない世界で
動けなかった。
5
静かな露呈
ある日、
評価シートが返ってきた。
全員、
同じ文言。
「総合評価:判断不能」
それを見て、
誰かが呟いた。
「……完成してないから、
評価できないんだよな」
その言葉を聞いて、
誰も否定しなかった。
否定できなかった。
彼らは、
完成がないと
管理できない人たちだった。
それが、
静かに、
全社に共有された。