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8 - 第8話 冷やし茶漬け

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2025年03月29日

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店主「ほれ、これ食って元気出しいね」


お盆に乗って出されたのはしらすと梅干しが乗った冷やし茶漬けだった。


(本当に美味しいの?)


恐る恐る口に運んだ瞬間その疑問は吹き飛ばされた。


涼香「美味しい!!」


口へ運ぶ手が止まらない。

初めて食べた冷やし茶漬けはとても美味しいかった。


店主「だろ〜、梅干し食べりゃ元気なるよ」


(確か梅干しには疲労回復の効果があるって聞いた事があるような…)


パクパクと食べ進め気付けば完食していた。


店主「元気なったね〜。良かった良かった」


店主は空になった茶碗を持って台所へ行ってしまった。

周りを見渡すとどうやら他に家族は住んでいないようだ。

ふと壁に飾られている古い写真が視界に入った。


(小さくてわかんないや)


立ち上がり写真を近くで見ると店主の家族写真だった。

まだ若い店主の隣に写っている夫らしき人物とその子供2人が笑顔でピースしている。


店主「それが気になったかい?」


涼香「若い時の写真ですか?」


店主「もう随分昔のだね。もう何年も前に旦那が死んで私がこの店を引き継いたんだよ。息子達は何年も会ってないねぇ。そのせいでかね、毎日味がしなくて美味しく感じないんだよ」


店主は寂しそうな眼差しで語る。


涼香「じゃあ、これからは私が一緒に食べますよ 」


店主「いいのかい?」


涼香「どうせ家に帰っても私の分だけ出されませんから」


店主は私が家族から酷い扱いを受けていると思っているのかとても心配していた。


店主「そうなのかい?そいつは酷いね〜。でも嬉しいよ。やっと味のある飯を食える」


その日から私は一日の殆どを駄菓子屋で過ごすようになった。

家に帰る時は寝る時のみ。相変わらず母とは言葉を交わしていない。

一応祖父母達には事情を話した。


祖父「ごめんなおじいちゃん達力になれなくて。美里さんにはワシらからも言ったんだが聞く耳を持たんくて」


祖母「里山さんのところなら安心して涼香を預けられる」


翌日、祖父母に店主への御礼として採れたて新鮮の野菜達を持っていくよう手渡された。

店主の作る料理はどれも美味しく暖かい気持ちになる。

食べさせて貰ってばっかじゃ悪いと思い店を手伝うことにした。

と言っても品出しや店番などやる事は少ないが今までバイトをした事がない私にとってはなんだか新鮮で楽しく思えた。


涼香「今日も暑いなぁ」


セミの鳴き声は止むことを知らずさらに増えていく。


(うるさいな…)


店主「町内会行ってくるから店番頼むね」


涼香「はーい」


(暇だなあ…お客さんも来ないし…)


店番をしながらパタパタとうちわを扇ぐ。

今日の最高気温は30度を優に超えていた。

店先に飾る風鈴が風に揺れて音が鳴る。


チリンッ


涼香「風鈴の音って聞くだけで涼しく感じる。アイス食べたいなぁ……」


代金箱にアイス代を入れ冷凍庫からアイスを取り出す。


(ちゃんとお金払ったからいいよね…)


袋を開け中身を取り出す。

ソーダ味のアイスバー懐かしの味である。


涼香「うま!」


ピロンッ


携帯には秀斗から1件の通知が来ていた。


秀斗:どこにいるの?


涼香:神社の近くにある駄菓子屋にいるよ


秀斗:今から行く


(そういやおじいちゃん達にしか言ってなかったなあ)


数分後秀斗がやって来た。

なぜ店番しているのかと驚かれたが訳を話すと納得してくれた。


涼香「で、秀斗はなんでここに来たの?」


秀斗「モリピーの事について作戦会議しに来たんだよ」


涼香「そか。とりあえずここ座りな」


店番なのでどうしてもその場を動けないので秀斗を隣に座らせた。


涼香「それでどうくっ付けるかだよねー」


秀斗「自然な感じで二人にして告白させるとかどうかな?」


涼香「いいねー!確か来週の土曜日に夏祭りがあるってチラシで見たよ」


秀斗「二人っきりで行かせるより皆で行った方がモリピー達も来るでしょ」


涼香「実は私も皆で行きたいなあって思ってたんだよね。浴衣着てく?」


秀斗「え〜、僕は似合わないよ」


涼香「そんな事無い!!着てみようよ〜。ね?絶ーっ対似合うから!絶対に!本当に!似合うから!!!」


照れくさそうに言う秀斗を私は必死に説得する。

少し引いているが私の説得に負けて浴衣を着てくれる事になった。


(なっちー達にも教えよ!)


皆夏祭りを楽しみにしている様子だった。

私も浴衣や髪型をどうしようかと悩む。


(メイクとかもしちゃったりしてー(笑)楽しみー!)


秀斗「そういえばまだ進路考えて無かったって言ってたよね?」


涼香「あー…笑わない?」


秀斗「うん、笑わない」


涼香「本当はね、カメラマンになりたいの。でも、お母さんからは『弁護士になれ』ってしつこくて」


秀斗「僕知ってるよ。涼香ちゃんが昔から撮るの好きだってこと。カメラマン向いてるよ!好きな事してる時の顔が一番幸せそうだもん」


涼香「そ、そうかな///私初めてお母さんに反抗したんだ。それで、自分の生きたいように生きるって決めたの!自分の人生だもん、好きに生きたいじゃん」


秀斗「涼香ちゃんらしいね」


涼香「今日家に帰ったら言うつもり。『カメラマンになりたい』ってね。それで反対されても私は突き通すつもりだよ」


秀斗「もしなんかあったらまた僕に電話して。力不足だと思うけど話ぐらいなら聞くからさ」


涼香「ありがとう」


話し終えると秀斗は帰って行った。

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