テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
それから、瑞稀は事あるごとにに屋上に来た。彼女曰く、授業がだるいからサボってるらしい。まあ、私も同じようなもの、か。
「奏。奏ってさ、好きなものってあるの?」
「好きな、もの?」
「うん!ぼくは、可愛いものが大好きなんだー!」
ー好きなもの、。そんなものが私にあるの?今まで何もしてこなかったし、何も感じなかったのに?ここは適当、でいいか。
「音楽、を聞くこと、かな。」
「音楽?」
瑞稀はキョトンとしていた。
「音楽か!いいね。いい趣味持ってるじゃん!」
その言葉に胸が痛くなった。また、嘘をついた。本当は趣味でも何でもない。だって音楽は、お父さんを苦しめて死に追いやったから。私の音楽は誰にも届かなかった。お父さんにさえ、届けられなかったのだから。
「奏?どうしたの?大丈夫?」
瑞稀が私の顔を覗きながら、そう、聞いてきた。
「苦しそうだけど、大丈夫?ぼく、何か変なこと、言っちゃったかな?」
「いや、瑞稀は何も悪くないよ。悪いのは、全部私、だから。」
「え、?どういう、こと?」
瑞稀の目は驚きに満ちていた。
ーあ、やっちゃった。最悪だ。
「奏、奏がずっと暗い目をしてるのってそれが原因なの?それならさ、ぼくに話してよ。何か力になれるかもしれないからさ!」
話したくない。話したら迷惑をかける。でも、話さなかったら後で後悔する気がする。それなら、話してしまった方が楽になれるかもしれない。
「お父さんが、死んじゃったんだ」
「え?」
「一年前にね。お父さんね、作曲家だったんだ。その縁もあって、私も曲を作ってた。それでね、私、頑張ってるお父さんに曲を送ったの。その時は、すごく喜んでくれた。だけど、お父さんは、ストレスが原因で倒れた」
「そう、だったんだ」
「お父さんは私のせいで倒れた。私の作った曲がお父さんを苦しめて。その結果、お父さんが死んじゃった。お父さんは、私が殺しちゃったんだ。私の曲が、お父さんを死なせた!私が曲を作ったせいで!お父さんは死んだの!だから私は、私は、。もう二度と曲を作らないって決めた。」
「そうだったんだね。奏。今までずっとその重圧に耐えてきたんだ。でも、もう、大丈夫だよ。」
「え?」
すると瑞稀が笑って言った。
「ぼくが奏を受け入れるからさ。奏が苦しいなら、ぼくに吐き出していい。それで奏の心が少しでも楽になれるなら、そうして欲しいな。」
そう言って優しく私を抱きしめてくれた。その温もりに、涙が出た。
「ごめん、瑞稀、。ごめん」
「謝らないでよ、奏。奏は何も悪くないんだから」
そう言って私の頭を優しく撫でた。
53