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「会長、これを使うとすると無傷で捕まえるのは無理です。売り物にならなくなりますよ」
「かまうもんか。腕一本斬り落としたっていいぞ。そういう女に興奮するという物好きな男もいるからな」
「了解です。遠慮なくやらせてもらいますよ」
男がニタニタ笑いながら陛下の方へにじり寄る。
陛下が懐からフルーツナイフを取り出すと、極星会の男たちが腹を抱えて笑い出した。
「戦車に竹槍で立ち向かうようなもんだぜ」
「馬鹿だ。真剣で斬られることがどういうことか分かってねえみたいだ」
「十分後には斬られた痛みに泣き叫びながら命乞いしてるんだろうな。見ものだぜ」
男が一度素振りをすると、ビュッと音がした。うん、当たったら死ぬだろう。
相変わらず陛下は自信ありげだが、見ているこっちは気が気ではない。
「陛下、大丈夫ですか?」
「邪魔するな。余は血に飢えておる。おまえは黙って撮影していればいい」
それにしても、血に飢えてるって女子高生のセリフではないな。ああ、そうだった。この方は異世界最強の大魔王だった――
わたくしがちょっと考え事をしている間に戦闘は始まっていた。男が陛下の脳天めがけて真剣を振り下ろす。陛下はそれをフルーツナイフで受け止めた。
「真剣をフルーツナイフで受け止めた?」
わたくしも極星会の男たちも目が点になった。だが衝撃はそれで終わらなかった。
キン!
陛下がフルーツナイフで真剣を弾き飛ばした。弾みで男も吹き飛んで、畳の上で尻もちをついた。真剣は雄大の目の前をかすめて床に突き刺さった。
「終わりだ」
陛下が横たわる男の顔をフルーツナイフでものすごいスピードで切り刻んでいる。正直恐ろしくて男の顔を正視できなかった。
「ヤクザにとって顔の傷は勲章らしいな。喜べ。もともとあった傷と同じくらいの傷を十ヶ所ほど増やしておいたからな」
男は喜んではいないだろう。顔を切り刻まれた痛みでとっくに失神していたからだ。