「痛っ…!」
首筋に、ひりついた灼けるような痛みが走る。
「シュウ……貴様っ!!」
カイが声を荒げ、ナイフを持つシュウに頭から突っ込んでいこうとする。
「ダメッ……カイ!」
「黙ってろ、ミクル! おまえを、俺が助けてやるから!」
カイがシュウに正面切ってぶつかり、つかみかかると、必死にナイフを奪おうとする。
2人で揉み合う内、シュウの突き出したナイフの刃を、カイがつかんだ。
「離せよ…カイ…」
シュウがつかまれたナイフの刃を、力ずくで引き戻そうとする。
「離さねぇよ…」
刃を握りしめているせいで、キリトの手からは血がポタポタと垂れ落ちるのが見えて、私は思わず目をそむけた。
「その手が、使い物にならなくなっても、いいのか……」
「いい……手が使えなくても、声があれば、歌える……」
口にしたカイが、強い力で刃先を握りしめると、
抵抗して柄をつかみ直そうとするシュウの手から、そのままグッとナイフを引き抜いた。
カイが、奪ったバタフライナイフを今度はシュウに差し向ける。
「今やめるなら、何も聞かない……」
カイの言葉に、シュウがチッと舌打ちをする。
「おまえらも……!」と、カイがヒロとジンに鋭い眼差しを向ける。
「……これ以上何かすれば、警察沙汰にもするが、いいのか……」
低く怒りをはらんだカイの声に、
「…それは、困るかも…」
ヒロがひるんだように後ずさる。
「……シュウ、そろそろ潮時なんじゃない? ……こっちは、この辺で抜けさせてもらうから……」
ジンが口にするや、2人は揃って逃げるように廃屋から走り出て行った。