テラーノベル
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最終回!!!!!!!!
題名ちょっと思いつかないんですよね
どそ
長い夢
『あいつは死んだよ』
電話越しに、軽い声。
まるで天気の話でもするみたいに。
まるで価値のない物の処分報告みたいに。
その一言が、会議室の空気を完全に止めた。
誰も動かない。
誰も、息すらできなかった。
意味を理解したくない。
理解した瞬間、何かが壊れてしまう気がした。
嘘だ。
冗談だ。
脅しだ。
そうであってくれ。
そう願っても、電話口の男は楽しそうに笑っている。
『腹刺したらさぁ、すぐ静かになってさ』
『抵抗もしねぇし、つまんなかったわ』
アメリカの手からスマホが落ちた。
床にぶつかる乾いた音。
中国の目が見開かれたまま動かない。
ドイツは拳を握りしめすぎて、関節が白くなっていた。
イギリスは椅子を倒して立ち上がる。
「……っ」
喉が詰まる。
フランスは口元を押さえたまま、その場に座り込んだ。
韓国は舌打ちしようとして、音にならなかった。
ロシアだけが静かだった。
静かすぎて、逆に恐ろしかった。
『もしもし? なんか言えよ』
男の笑い声。
その瞬間。
通話が切れた。
誰が切ったのかも分からない。
沈黙。
重い。
痛い。
現実だけがそこに残った。
日本が死んだ。
いつも時間通りに来る日本が。
頼めば断れない日本が。
嫌われても礼儀を崩さない日本が。
死んだ。
北朝鮮の耳元で、ピアスが小さく揺れた。
昨日。
ぴんぽーん。
玄関のチャイム。
……出ない。
日本だし。
そう思って、息を潜めた。
しばらくして聞こえた声。
「ピアス忘れてましたよ。
ポスト、入れておきますね〜……」
優しい声だった。
少し気の抜けた、あの声。
北朝鮮は立ち上がった。
意味を理解したくない。
やだ。
やだやだやだやだやだやだやだ。
視界が歪む。
誰にも見られたくなかった。
こんな情けない顔。
こんな弱い姿。
走った。
椅子を蹴り、扉を開け、廊下を駆ける。
背後で誰かが名前を呼んだ気がした。
構わずトイレへ飛び込む。
個室の鍵を閉める。
その瞬間、膝から崩れ落ちた。
……あれ?
なんだかこれ。
見たことある気が――
視界がぐにゃりと歪んだ。
床が揺れる。
耳鳴り。
頭の奥で何かが砕ける音。
暗転。
◇
ぴんぽーん。
チャイムの音。
北朝鮮ははっと顔を上げた。
自室のソファ。
つけっぱなしのテレビ。
飲みかけの缶。
夜。
……は?
ぴんぽーん。
また鳴る。
鼓動が跳ねた。
知っている。
この音。
この時間。
この、嫌な胸騒ぎ。
ぴんぽーん。
外から声がする。
「ピアス忘れてましたよ〜」
血の気が引いた。
前のと同じ。
ポスト、入れておき――
バン!!
勢いよくドアを開け放つ。
外の冷たい空気。
玄関灯の下。
そこに。
日本が立っていた。
ハンカチに包まれたピアスを持って。
きょとんとした顔で。
「……え?」
次の瞬間。
北朝鮮は日本を抱き締めていた。
強く。
腕が痛くなるほど。
逃げられないように。
消えないように。
もう離れてほしくなくて。
もう刺されてほしくなくて。
「ちょ、え、北朝鮮さん?」
日本が慌てる。
「どうされました?」
声が、生きている。
温かい。
ちゃんとここにいる。
北朝鮮の肩が震えた。
「……うるせぇ」
掠れた声。
「黙ってろ」
「は、はい……?」
意味が分からない顔。
それでも日本は抵抗しない。
困ったように立ち尽くしている。
北朝鮮は顔を埋めた。
服から、ほんのり柔軟剤の匂いがする。
昨日――いや、夢の中で感じた匂いと同じだった。
「……なんだか」
日本が小さく笑う。
「長い長い、夢を見ていた気がします」
北朝鮮の体がびくりと揺れる。
「……は?」
「いえ、変な話ですね」
日本は首を傾げる。
「嫌な夢だった気もするんですが、内容は思い出せなくて」
覚えていない。
でも 。
きっとどこかで、日本も見ていた。
最悪の未来を。
北朝鮮はゆっくり顔を上げた。
涙でぐしゃぐしゃの顔。
日本は目を丸くする。
「えっ、泣いて……」
「見んな」
「す、すみません」
「謝んな」
「すみません」
「だから謝んな!!」
日本はしゅんとした。
その顔がおかしくて。
北朝鮮は泣きながら笑った。
日本はさらに困った顔をする。
「と、とりあえず中、入れてもらっても?」
「……入れ」
「え?」
「今すぐ入れ」
「は、はい!」
日本はぺこりと頭を下げ、靴を脱いで入ってきた。
その後。
路地裏には行かなかった。
刺されることもなかった。
死ぬこともなかった。
翌日の会議で、日本はいつも通り十分前に来ていた。
資料も完璧。
飲み物も人数分。
アメリカが目を細める。
「……なんか今日のお前、妙に生きてて安心するな」
「? 私はいつも生きてますが」
中国が鼻で笑う。
「変なこと言うアル」
ロシアは静かに日本を見る。
「君、昨日どこにいた?」
「北朝鮮さんのお宅です」
全員が止まる。
北朝鮮が机を叩いた。
「うるせぇ黙れ!!」
会議室が騒がしくなる。
日本はきょとんとしていた。
誰も死ななかった。
誰も後悔しなかった。
やり直せた未来。
True end 〜☆。.:*・゜
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