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落ちながら周りを見回して思考する時間がたっぷりある程の、深い穴に落下し続けている。
まずは下を見て落下先の地面を確認しようとしてみたが、よほど深いため下は暗すぎて何も見えなかった。
横を見てみると、私を中心におよそ半径3m離れたところに岩石の壁が囲むように連なっている。
こんなに落ち続ける体験をしているなら、私が生前住んでたマンションの屋上から飛び降りる勇気ぐらい簡単にでるだろう。
しかし、今落ちてる穴は落ちた先の地面が見えないし既に死亡済みでもある為あまり怖くないが、マンションの屋上からだと落ちた衝撃の痛みが予測できるから勇気はでないかもしれない。
……もう死んだのだから、マンションの屋上から飛び降りる機会なんてないのに何故こんなこと考えているのだろうか。
閑話休題、両脚にまだ噛みついている2匹の魚の様子を見てみる。
魚は噛みつく以外の一切の行動をしておらず、触っても微動だにしない。
暇だから魚を食べてみようと思い、脚を口の方に持っていく。
そのときようやく地面に着いて、頭と背中が叩きつけられた。
「∆∏∇↾■○☆◁△!?」
痛い。物凄く痛い。
死んでるんだから、痛覚なんていらないだろ。なんで痛覚が働いてるんだよ。
地面はコンクリートでできていて、隙間から奇妙な雑草らしき植物が少し生えてる部分もある。
落下しても痛くないような地面にできなかったのかよ。クソ。
まあ、あんなに深く落ちればどんな地面でも痛いことに変わりないが。
「寝転んだままでいないで早く立て、人間。」
声にする方を見ると、オレンジ色のおさげにしている髪でツノの生えた額、空色の目をして羽の生えてる人がいた。
いや、コイツははたして人なのだろうか。
「こんな深い穴に落ちて痛いのですから、中々起き上がれなくて当然でしょう。落ちてくる人を痛い思いさせる現状を改善しない貴方に文句言われたくないんですけど。」
「これも罰の1つじゃからなぁ……。恨むなら、生前に悪行をした自分自身にしろ。」
開いた口からは牙が覗いている。
「改めて、妾はお前さんのような罪のある死人に罰を与える存在の獄使じゃ。妾の個体名はガルムじゃぞ。この説明はお前さんで627835回目じゃな。627835はどんな数字じゃ?」
ガルムの後ろにある壁には、錆びた扉が見えた。
「627835?自然数で奇数で、足して31になる6桁の数……ってことぐらいですかね。」
「つまらんな。まあ良い、お前さんの罪を見るぞい。」
ガルムは長い爪の生えた人差し指を、私の額に突っ込んだ。
「んなっ!何……してるんですか。というか、爪切ったらどうです?」
「妾が記憶を見てるときに話しかけるでない。これは……久しぶりの重罪人じゃ!」