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#塩レモン
comi
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にこにこオタク
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屋上の風はまだ冷たかった。
月だけが、静かに二人の距離を照らしている。
🤍「……ほんとに、誰にも言わないよ」
🩷「当たり前だろ」
佐野勇斗の声はまだ少しだけ荒い。
けれど、さっきよりは確かに落ち着いていた。
柔太朗は隣に座ったまま、夜空を見上げる。
少しの沈黙。
🩷「なあ」
🤍「ん?」
🩷「お前さ」
🤍「うん」
🩷「ずっと俺のこと“佐野”って呼ぶよな」
🤍「うん、佐野でしょ?」
当たり前の返事。
その一言に、勇斗は少しだけ眉を寄せる。
🩷「それさ」
🤍「うん」
🩷「なんか距離ある」
🤍「距離?」
🩷「他人みたいなんだよ」
柔太朗の指先が止まる。
風が髪を揺らした。
🤍「他人……?」
🩷「名字で呼ばれるのってさ」
🩷「壁ある感じする」
責めているわけじゃない。
ただ、少しだけ寂しそうだった。
柔太朗はしばらく黙る。
🤍「じゃあ」
🤍「何て呼べばいいの」
勇斗は一瞬止まる。
🩷「……名前」
🤍「名前?」
🩷「勇斗」
柔太朗はその名前を一度だけ確かめるように呼ぶ。
🤍「勇斗…?」
🩷「それでいい」
🤍「なんか急に距離近いね」
🩷「今さらだろ」
🤍「いや、今までは佐野だったし」
🩷「それが遠いって言ってんだよ」
少しだけ拗ねた声。
でも本気じゃない。
柔太朗は小さく笑う。
そしてふと気づく。
🤍「じゃあさ」
🩷「ん」
🤍「勇斗は、俺のこと何て呼ぶの」
勇斗が止まる。
🩷「……は?」
🤍「ずっと“お前”じゃん」
🩷「それ普通だろ」
🤍「普通だけど、ちょっと距離ある」
🩷「お前が言うなよ」
さっきの言葉を返されて、勇斗は少し詰まる。
🩷「……めんどくさいな」
🤍「かもね」
柔太朗は少し困ったように笑う。
その笑い方は柔らかくて、どこか儚い。
勇斗は視線を逸らした。
🩷「じゃあ……」
少し考えて。
🩷「……柔太朗」
🤍「え?」
柔太朗は一瞬、呼ばれたことに気づかないように目を瞬かせる。
🤍「今の……俺?」
🩷「他に誰がいるんだよ」
少しだけ気まずそうに視線をそらす勇斗。
でも、その呼び方には迷いがなかった。
柔太朗は少しだけ笑う。
🤍「急だね」
🩷「お前が言ったんだろ」
🤍「うん」
🤍「でもさ」
月を見上げながら、柔太朗は小さく続ける。
🤍「名前で呼ばれるの、ちょっと変な感じする」
🩷「嫌か?」
🤍「ううん」
🤍「嫌じゃない」
少し間。
🤍「むしろ」
🤍「ちゃんと見てくれてる感じする」
その言葉に、勇斗は一瞬だけ固まる。
胸の奥が少しだけ詰まる。
🩷「……そういうこと言うな」
🤍「なんで?」
🩷「意識するだろ」
🤍「何を?」
🩷「……全部」
ぼそっと言って、勇斗は視線を逸らす。
柔太朗はそれを見て、少しだけ笑った。
🤍「変なの、勇斗」
🩷「うるさい」
でもその声は、もうさっきよりずっと柔らかい。
月明かりの下。
“佐野”と呼ばれていた少年は、その夜から少しだけ変わった。
呼び方ひとつで、距離はほんの少しだけ近くなる。
それが、まだ始まりだった。
コメント
2件
すきー
うわ、めっちゃいい距離感の変化だな…!名字呼びから名前呼びへのステップ、すごく繊細でリアルに描かれててグッときた。「俺のこと何て呼ぶの」って返す柔太朗、ちょっと甘えた感じだけど嫌味じゃなくて、そこから二人の空気が自然にほぐれていくのが読んでて気持ちよかった。月明かりの下の静かな会話、すごく好き。