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2024 11⁄01 22時31分 投稿
2024 11⁄03 19時49分 迷宮の入口を変更
2024 11⁄08 15時20分 描写変更
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話の区切りの事情で少しこの話は短めになっています
◆◇◆◇
「そんなに急かすな。言われなくてもわかっている。」
そう言ってガルードは遺跡の中心部、崩壊した神殿へ歩き出した。
「アル、行くよ」
俺は足元で大人しくじっと待っていたアルに声をかけた。
そして少し離れた所に置いてある背嚢を急いで掴み、ガルードの後ろ姿を追って走り出した。
◇◇
「この奥に迷宮の入口がある」
前を歩いていたガルードが、そう言って突然立ち止まった。
そして俺達の目の前に聳え立っていたのは、あの崩壊していた巨大な神殿だった。
ついさっきこの神殿の中を少し探索したが、そんな迷宮のようなものなんてあったっけな。
「なあ、本当にこんなところに迷宮があるのか?あるようには思えないんだが」
「あと少しだ。」
ガルードはそう言って神殿の内部へ足を進めた。
急いでガルードの背中を追おうとして、俺は足を止めた。
アルが居ない。
やばい、と一瞬焦ったが、ふと思い当たることがあって背嚢を背中から下ろした。
途中からなんか重くなってたんだよな、この背嚢。
背嚢を掴んで勢いよく開けると、そこには丸くなって寝ているアルの姿が。
こいつ、一体いつの間に潜り込んだんだ、、、
◇◇
暫く神殿の内部を進んでいると、突然ガルードが崩れかけている石壁に手をかざした。
すると驚くことに、ガルードが手をかざした石壁に刻まれた奇妙な模様が淡い青白い光を放ち始めた。
ガルードは壁が光り始めたのを見て、数歩後ろに下がって言った。
「、、、お前さんは幸運だな。てっきり、もうとっくに迷宮の入口は崩壊してると思っていたが、、、まだ辛うじて残っていたようだ。あと、少し下がったほうが良い。巻き込まれるぞ」
にやりと笑ったガルードが青白く光っている壁に目線を移した瞬間、突然神殿の床が震え出した。
壁の周囲の石が僅かに持ち上がってまるで生き物のように動き始めたかと思うと、俺たちのついさっきまで立っていた場所が一気に沈み込む。
床に転がっていた石壁の残骸が、バキバキと音を立てながら地面に飲み込まれていった。
、、、ガルードの言う通り、後ろに下がっていてよかった。
もし俺達が巻き込まれていたらどうなっていたか、、、想像もしたくない。
そこからしばらく石は生き物のように動いていたが、じきに落ち着いてきて石と石の間から重厚な扉が現れた。
「この階段の先が迷宮だ。この扉の中に足を踏み入れたら、秘宝の間に到達しない限りここに戻っては来られない。あ、死ねば戻ってこれるかもしれんがな。」
口では冗談を言いつつも、ガルードの表情は真剣だった。
「わかった、ここまで案内ありがとな。じゃあ、行ってくる。」
俺はそう言って迷宮へと続く扉へ手を掛けようとした時、ガルードが俺を呼び止めた。
「そういえばお前さん、ここまで来るときに一度も見てなかったが武器は持ってるんだろうな?」
「あー、、、」
完全に武器のことを忘れてた。
一応攻撃手段として闇鎖はあるけど、、、いや、ガルードに闇鎖のことを言うと色々と面倒くさそうだ。けどなぁ、、、
黙り込んだ俺を見たガルードは小さく溜息を付き、自分の肩に掛けていた槍を俺に向かって放ってきた。
「ほら、これでも使いな。もうそろそろ作り直そうと思っていたやつだから気にせず暴れてこい。」
俺は思わずガルードの顔を二度見した。
俺の手に収まっている槍を見ると、素人から見ても分かる程使い込まれていた。
きっと、この槍を使用してここまでやってきたのだろう。
だが俺はそのことについて触れず、ガルードに感謝の意を込めて頭を下げ、迷宮へと続く扉に足を踏み入れた。
俺の身体が完全に扉の内部に入ると、扉の外に再び散らばっていた石が浮かび上がって扉を塞いでいくのと同時に、扉がゆっくりと閉まり始めた。
そして扉が完全に閉まる直前、ガルードが突然にやっと笑ったのが見えた。
そしてその次の瞬間、神殿と迷宮を結ぶ扉が轟音とともに閉じられた。
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