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1.春
まだ少しだけ寒い春、私が通学しているS中学では、きょう、入学式が行われていた。
入学式が終わった後、私はすぐに生徒玄関へ向かい、クラスの確認をした。
「またひとみちゃん同じクラスだー!」
「えーっ、達也(たつや)と同じとかマジ無理…」
その声の間をすり抜けて私は教室へ向かった。
「え~っ、新しくD組の担当になりました…………..」
担任が軽く挨拶をした後、私は私立図書館で借りていた本を読んだ。
「その本好きなの?」
席替えで横になった子にそう聞かれた。
「まぁ…まあかな」
「そっかー…」
彼女はそう言い落ち込む仕草をしていた。
「あーっ、ごめん!まず自己紹介が先だったよね…」
「私の名前は夏希(なつき)!」
「あなたは?」
「私は絵里(えり)、よろしくね」
「よろしく!」
私は、人とのコミュニケーションなんてどうでもいいと思ってきた。
席が近くでも私は交流を控えていた。
正直…私にとって夏希ちゃんは苦手な人に分類されるほうだ。
早く帰りたい。早く帰りたい。そう願いながら下校の合図の音楽が鳴った。
私はすぐにカバンに必要なものを詰めこんだ。
そして教室から出ようとした瞬間、彼女が話しかけてきた。
「ねーねー、絵里さん!」
「絵里さんってどっちの方向から帰るの?」
「私は校門を出て右の方から帰るけど…」
「私と同じだ!!」
「一緒に帰らない…?」
私は断るつもりだった。
だが、興味本位だったのだろうか、
「わかった。」
と返事してしまった。
言ってしまったものは仕方がない。そう思い私は校門の前で彼女を待っていた。
「お待たせー!!」
元気な声が聞こえたほうを向くと、彼女がいた。
「全然」
私は、そう言いながらも少し苛立っていた。
「どこの中学だった?」
「部活何?」
「好きな食べ物何?」
鬱陶しい、ただそう思っていた。
何も考えずに彼女について行っていると、知らない場所にたどり着いた。
「ここはどこなの?」
「私のお気に入りの場所」
「海が見えてきれいでしょ!」
そこには青色の踏切があった。
その場所は確かにきれいだったが…春に見るような場所じゃなかった。
だが、なぜか見とれてしまうようなきれいな景色だった。
「君は友達」
彼女がそう言うと、周りの音がすべて消えた。
「う、うん…」
私は戸惑いながらもそう返答した。
私はその海の写真を撮った後、スマホのマップを使って家に帰った。
…友達って何だろう。
そう思いながら帰った。