テラーノベル
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とある日の放課後。帰りの挨拶を終え、教室にはまだ数名残っている状態。夏休み1週間前頃からは短縮日課と決まっているせいで、外を見ると日ざしが照りつけていた。
あの暑い中を帰るのか、と少し憂鬱になりながらも、イギリスは荷物を鞄に詰め込む。
ふと、離れた席にいる彼を見た。すると向こうもこちらに気付いて駆け寄ってくる。毎回このタイミングで声を掛けられるから反射的に確認してしまうのだ。
「イギリス!支度終わった?」
「あぁ、はい。もう帰れます。」
「よし。あ、この後何か用事ある?」
「えー、と、委員会、、、は、無いですね。真っ直ぐ帰ります。」
「そっか。おっけー!じゃあ今日も一緒に帰っていい?」
「ふふ、当たり前じゃないですか。、、、というか、一人で行ったところでどうせ同じ道でしょう?」
「それもそうだよね。っそれじゃー、 帰りますかー!」
そう言って、二人は同じ歩幅で歩き出した。
彼はフランス。家が近くの、いわば幼なじみだ。昔はお互い親が忙しく、共に遊んでいたその関係がだらだらと今でも続いている。
学校でもまあそれなりに仲良くはしているし、帰る所が同じなので登下校は一緒に行っている。 その比較的明るめな性格のお陰か、数少ない友人の中でも気さくに話しかけやすい方だ。 まあ本人には伝えたことはないが。
帰り道、他愛もない話をしていればフランスがふと口を開く。
「あっ、そういえば、夏休み、花火大会やるんだって!」
「花火大会?」
「そ!あそこのでっかい川の近く!確か屋台とかも出るらしいよ。ちょっと前からやり始めてたらしいんだけど、まだ行ったことないんだよね。、、、もし良ければなんだけどさ、夏休み、一緒に行かない?」
「!はい!行けるなら是非行きたいです!」
「ほんと?やったー!じゃ、日にちとか時間とか、そういうの決まったら連絡するね。あ、じゃっまた明日!」
気づけば分かれ道まで来ていて、言葉を惜しみながら別れることとなった。
申し訳程度に振った手を下ろして考える。
(、、、花火大会か、、、)
子供の頃に数回行ったっきりなので、こんな歳になってから行くなんて思ってもみなかった。それもフランスと二人で。
今までは家に帰ったら普通に居る、とか親の代わりに飯を買ってくる、とかそういう事が当たり前になっていたから、ちゃんとした約束をして遊ぶ、というのは大分珍しいかもしれない。
相手にとっては友達を遊びに誘っただけかもしれないが、自分にとってはかなり貴重なことだ。正直ちょっともう浮かれ始めている。
(、、、楽しみ、、だな、、、)
そんな気持ちを胸に抱きながら、玄関のドアを開けた。家には誰もいないが、心なしか、いつもよりもただいまが明るい声になっていた気がする。
コメント
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やっぱり神だった