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南やよい🫧💫@ペア画中
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#怪異
イキリ火の玉
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■第1章「消えた少女の再会」
昼休みの教室は、いつも通り騒がしかった。
「なあ神代、今日の数学の小テスト、やばくなかったか?」
三浦大和が机に突っ伏しながらぼやく。
「普通じゃない?あれくらい」
さらっと答えるのは、神代恒一。
明るくて軽い雰囲気だが、成績は常に上位。クラスでも一目置かれる存在だ。
「普通って言うな普通って!お前の普通はバグってんだよ!」
そのやり取りに、周囲が笑う。
「まあまあ、大和。神代基準で生きてたら倒れるよ」
そう言って笑ったのは、篠宮玲奈。クラスのまとめ役だ。
「てかさ、聞いた?昨日の盗難事件」
藤咲悠真が声を潜める。
「あー、職員室のやつ?」
「そうそう。現金が消えたらしい」
空気が少しだけ変わる。
「犯人まだ捕まってないんだろ?」
「らしいなー。鍵も壊されてないって話だし」
「内部犯ってことか?」
話題は一気にミステリーじみてくる。
その時――
「なあ神代、お前どう思う?」
振られた神代は、少しだけ考える素振りを見せてから、
「……犯人、鍵使ってるよ」
「は?」
大和が顔を上げる。
「いや、だからさ。鍵壊されてないなら、普通に考えて“開けた”んでしょ。無理やりじゃなくて」
「いやいやいや、だからそれができるのが内部の人間って話で――」
「違う」
神代は笑ったまま言った。
「“鍵を持ってる人間”じゃなくて、“鍵を使える人間”」
「……どういう意味だよ」
「鍵ってさ、持ってなくても使える場合あるよ」
そこでチャイムが鳴った。
「続きはあとで」
神代はそう言って、席に戻った。
放課後。
神代は一人、人気のない旧校舎へ向かっていた。
コツ、コツ、と足音だけが響く。
やがて、とある教室の前で立ち止まる。
ドアを開けると――
「遅い」
そこには、一人の少女がいた。
長い黒髪に、無機質な眼鏡。
静かな目をしたその少女は、振り返る。
「見回りに引っかかったらどうするの」
「大丈夫大丈夫。慣れてるし」
軽く笑う神代。
少女はため息をついた。
「相変わらずね、神代」
「そっちこそ、元気そうで安心したよ――」
一瞬、間が空く。
「……白瀬」
その名前は、本来“呼ばれるはずのない名前”だった。
白瀬零。
数ヶ月前――死亡したとされている少女。
「で、例の盗難事件」
白瀬は机に腰かけながら言う。
「どう思うの」
「ほぼ確定だね」
神代は壁にもたれながら答える。
「犯人は教師の誰か」
「根拠は?」
「鍵の管理」
神代は指を立てる。
「職員室の鍵は基本、職員しか触れない。でも“触れられる機会”はある」
「……掃除当番」
「正解」
白瀬は小さく頷く。
「でも、それだけじゃ弱い」
「だからもう一個」
神代は続ける。
「“盗まれた金額”」
「……3万円」
「そう。中途半端すぎる」
「確かに」
「外部犯なら、もっと取る。内部犯でも、“バレない額”にしては多い」
白瀬は目を細めた。
「つまり?」
「“急いでいた”」
神代の声が少し低くなる。
「そして、現金の場所を知っていた」
「……限定されるわね」
静かな空気。
「で、誰なの?」
白瀬が聞く。
神代は少しだけ笑った。
「さあね。証拠がまだ」
「嘘」
即答だった。
「もう分かってるでしょ」
「怖いなー」
「いいから」
神代は肩をすくめる。
「……生活指導の佐伯先生」
「理由は」
「今日、右手に切り傷あった」
「……それだけ?」
「いや、それだけじゃないよ」
神代はゆっくり言う。
「“鍵を落とした”って朝言ってた」
白瀬の目がわずかに揺れる。
「つまり――」
「“鍵を拾ったフリをして使った”」
完全に繋がった。
「で?どうするの」
「どうするって?」
「突き出すの?」
白瀬の問いに、神代は少し黙る。
「……いや」
「は?」
「今回は、やめとく」
「理由」
「理由は――」
その瞬間、
ガタッ
教室の外で音がした。
二人の視線が一斉に向く。
「誰かいる」
白瀬が小声で言う。
神代はすぐに電気を消した。
足音が、近づいてくる。
一歩、また一歩。
ドアの前で止まる。
息を殺す二人。
そして――
ガラッ
ドアが開いた。
夕焼けの逆光の中、立っていたのは――
「……やっぱりここか」
低い声。
見知らぬ男だった。
教師ではない。
生徒でもない。
「見つけたぞ」
その目は、まっすぐに――
白瀬を捉えていた。
「……嘘でしょ」
白瀬の声が、わずかに震える。
神代は一歩前に出た。
「誰?」
男はゆっくり笑う。
「やっとだ」
その言葉には、執着が滲んでいた。
「“消えたはずの少女”――白瀬零」
空気が凍る。
神代の目が変わる。
(来たな――)
ただの事件じゃない。
これは、“あいつら”だ。
「逃げるぞ」
神代が低く言う。
「でも――」
「いいから」
白瀬の手を掴む。
その瞬間、男が一歩踏み出した。
「逃がすと思うか?」
鋭い気配。
普通じゃない。
「神代」
「分かってる」
二人は同時に動いた。
窓へ。
そして――
ガシャン!!
ガラスを割り、外へ飛び出す。
風が頬を切る。
二階からの着地。
転がりながら体勢を立て直す。
「走れ!」
二人はそのまま走り出した。
背後から、追ってくる気配。
(始まったな)
神代は思う。
ただの推理ごっこじゃない。
これは――
「命懸けだ」
夕焼けの中、
二人の影が長く伸びていた。
■第2章「偽りの目撃者」
夕暮れの街を、二人は走っていた。
アスファルトを蹴る足音が、やけに大きく響く。
「はぁ……っ、はぁ……っ」
白瀬の呼吸が荒い。
「あと少し!」
神代は振り返らずに言う。
だが――
背後の気配は、消えない。
(速すぎる……)
ただの追跡じゃない。
“慣れてる”。
その時、
「右!」
白瀬が叫ぶ。
神代は反射的に曲がる。
次の瞬間――
ドンッ!!
さっきまでいた場所に、何かが叩きつけられた。
「……っ!」
コンクリートにヒビが入る。
(マジかよ……)
人間の力じゃない。
やっとの思いで人通りの多い通りへ飛び出す。
ざわざわとした空気。
制服の高校生、帰宅途中の会社員。
その中に紛れた瞬間――
気配が消えた。
「……撒いた?」
白瀬が小さく言う。
「いや」
神代は首を振る。
「“引いた”だけだ」
「……どういうこと」
「人目があると面倒なんだよ、あいつら」
神代の声は、妙に冷静だった。
その頃。
「おっそ!!」
校門前で三浦が叫ぶ。
「どこ行ってたんだよ神代!」
「ちょっとな」
何食わぬ顔で現れる神代。
その後ろには――見知らぬ女子。
眼鏡をかけ、髪型も変えている。
「誰?」
篠宮が眉をひそめる。
「あー、転校生の親戚。ちょっと用事で来てて」
「雑すぎない?」
即ツッコミが入る。
白瀬は軽く会釈する。
「……白石です」
(名前も変えてる)
藤咲がじっと観察している。
「へぇ〜」
ニヤッと笑う。
(こいつ、勘いいからな……)
神代は内心ヒヤッとする。
「でさ、聞いた?」
三浦が話を変える。
「今日の事故」
「事故?」
「駅前でひき逃げ」
空気が一瞬で変わる。
「被害者、重体らしい」
篠宮の顔が曇る。
「しかもさ――」
三浦が声を潜める。
「“目撃者がいる”んだってよ」
その夜。
「絶対おかしい」
旧校舎。
白瀬は断言した。
「何が?」
「ひき逃げ事件」
「どこが」
「目撃者が“完璧すぎる”」
神代は少し笑う。
「やっぱそう思う?」
「ええ」
白瀬は腕を組む。
「犯人の特徴、車種、逃げた方向――全部揃いすぎてる」
「普通、あんな冷静に見れない」
「つまり」
二人の声が重なる。
「“作られた証言”」
「問題は誰が」
神代が言う。
「決まってる」
白瀬の目が鋭くなる。
「“あいつら”」
翌日。
「ねえ神代」
篠宮が声をかける。
「昨日の事故、ちょっと変じゃない?」
ドクン、と心臓が鳴る。
「……どこが?」
「目撃者の話、ニュースで見たけど」
篠宮は言う。
「なんか、“台本読んでるみたい”だった」
(鋭すぎるだろ……)
「で、ちょっと調べてみたの」
「は?」
「その人、事故の時間“別の場所にいた記録”ある」
空気が凍る。
「……それ、どこ情報」
「秘密」
にやっと笑う篠宮。
「でもさ」
少し真剣な顔になる。
「これ、普通じゃないよね」
放課後。
「やばいわね」
白瀬が言う。
「篠宮、気づき始めてる」
「だな」
「どうするの」
「……巻き込む」
「は?」
「もう無理だよ。隠しきれない」
神代は静かに言う。
「むしろ、中途半端が一番危ない」
白瀬は少し黙る。
「……信じるの?」
「信じるしかない」
その頃。
とあるビルの屋上。
「失敗ですね」
黒いスーツの男が言う。
「対象の確保、未達成」
もう一人の男が、無表情で答える。
「問題ない」
「ですが、“存在確認”はされました」
「それでいい」
男は空を見上げる。
「“ゼロ”は、見つけた」
その目には、感情がなかった。
「次は確実に回収する」
その一言が、すべてを物語っていた。
そして――
夜。
神代のスマホが鳴る。
知らない番号。
「もしもし」
出た瞬間、
『神代恒一くん』
低い声。
「……誰だ」
『君、面白いね』
背筋が凍る。
『どこまで守れるかな?』
「……何の話だよ」
一瞬の沈黙。
そして――
『“白瀬零”を』
通話が切れた。
静寂。
神代はゆっくり息を吐く。
「……クソ」
完全に、狙われている。
■第3章「消された記録」
パソコン室。
放課後の静けさの中、キーボードの音だけが響いていた。
「……これ、マジでやってんの?」
三浦が不安そうに周りを見る。
「今さら怖がるなよ」
藤咲が軽く笑う。
「学校のサーバーに入るくらい余裕」
「余裕って言うな!」
神代はため息をついた。
「騒ぐなって。見つかるぞ」
その隣で、白瀬――ではなく、“白石”は無言で画面を見ている。
眼鏡越しの目が、鋭い。
「で、何探してんの?」
篠宮が腕を組む。
神代は一瞬だけ迷った。
(ここで誤魔化すか……?)
いや、無理だ。
もう気づかれてる。
「……一人の生徒の記録」
「誰」
静かな圧。
神代は、ゆっくり言った。
「白瀬零」
空気が止まる。
「……は?」
三浦が固まる。
「え、ちょっと待って、それって――」
「数ヶ月前に亡くなった子でしょ?」
篠宮が言う。
神代は頷く。
「なんで今さら」
「それを調べてる」
「出た」
藤咲が声を上げる。
画面に表示される、生徒データ。
顔写真、基本情報、出席記録。
そして――
【死亡:〇月〇日】
無機質な文字。
白瀬は、その画面をじっと見ていた。
「……完璧ね」
小さく呟く。
「え?」
「作り物として、ってこと」
白瀬の声は冷静だった。
「出席記録、成績、医療記録、事故報告書」
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コメント
4件
今回は、読切で作らせていただきました!
くまちゃんさん、この作品…重くて、でもすごく引き込まれました。死亡したはずの白瀬が生きているっていう設定、最初からゾクゾクしました。神代の「鍵を使える人間」って台詞、すごく頭に残ってます。篠宮の直感も鋭くて、仲間が増えそうな展開が気になる…。でもやっぱり最後の「白瀬零を」って電話が一番鳥肌立ちました。もう続きが読みたくて仕方ないです。丁寧に紡がれる闇の表現、すごく刺さりました。ありがとうございます。