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【Tb-1】
紗栄子には、ついこの間まで付き合っていた彼氏がいた。
紗栄子曰く。その彼氏とやらは、若くして自分の会社を経営し、年間一千万を優に稼いでしまうほどの勝ち組エリートなのだという。
おまけに、かなりのイケメンらしい。
私は正直、その彼氏と『どこで知り合って』その彼氏を『どうやってオトしたのか』について、気になって仕方なかった。
けれど、私が質問をしたところで「ダメダメ、個人情報だから」と、紗栄子はなかなかにしぶとく、最後まで口を割ることはしなかった。
多分恐らく、色々と訳アリなのだろう。
そう思った私は、余計な口出しをするのは辞めておくことにした。
彼女の方から話してくれるまでは『彼女と彼氏の関係』についての一切合切を、私からは切り出さないことにした。
そうして、私が二人の関係に干渉しないでおこうと心に決めてから、約数ヶ月後。
正確な期間は完全に忘れてしまったけれど、確か、去年の秋くらいの時期にとんでもないビッグニュースが私の耳に入り込んできたのだ。
“紗栄子がゴールインするかもしれない”
その噂を聞いた私は、まず一番に驚いた。
そして、それまで紗栄子から何も聞かされていなかった分、私はその噂に無性に腹が立ち、無性にモヤモヤとした。
「親友なんだから婚約することくらい直接教えてくれたって良いじゃない」と思ったのだ。
すぐに電話を掛け文句を垂れようとしたけれど、久しく連絡をしていない私は、紗栄子にどんな言葉を掛ければ良いのか分からなかった。
しばらく考え倦(あぐ)ねていると、携帯にピコンと、紗栄子からラインの通知が届いた。
ちょうど良い。私に婚約したことを言わなかった理由を問い詰めてやろうと。
そう思いながら、開いたラインのトーク画面には「お願い、助けて」と、不穏な文面が浮かんでいたのだ。