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私
の妹は今、恋をしている。妹曰く『初恋』らしい。しかも、一目惚れをしたとのこと。……正直言って驚いた。まさか妹の恋愛対象になるような人物がこの世にいるとは思ってなかったからだ。いや、よく考えてみれば当たり前のことかもしれないけどね。だって、あの子は昔からそういうことに関しては奥手で、異性との交際経験なんて全く無いはずだもん。
だから、私が驚くのは無理もないと思う。うん。
それにしても、一体どんな男の子なんだろう? すごく興味がある! だけど、いくらお姉ちゃんとはいえ、勝手に人のプライバシーに立ち入るのは良くないよね。そう思った私は、妹に直接訊いてみることにした。
「ねえ、ちょっと教えて欲しいことがあるんだけど」
「んー? なぁに?」
リビングでテレビを観ていた妹は、こちらを振り向くことなく返事をする。どうやら、よほど夢中になっているらしい。
「あー……うん。ちょっとね」
歯切れの悪い答え。その声音からは、隠し事をしているような雰囲気を感じ取れた。何かあったのか? そう尋ねてみたところ、妹の身体が小さく震えていることに気づく。
「大丈夫か?」
「……大丈夫だよ」
「本当に? 無理していないか?」
「平気だってば! しつこい!」
怒鳴るように言い放つと、妹は再びテレビの方に向き直った。テレビの中では、どこかの国の大統領が演説をしていた。
「……あのさあ」
僕は言った。
「なんでそんなこと言うんだよ」
「だってお兄ちゃん、そう思ったんでしょ?」
「そりゃ思うよ! 当たり前じゃないか!」
僕たちは兄妹なのだ。血を分けた、たったふたりきりの家族なのだ。その家族のひとりが、「自分はもう長く生きられないかもしれない」なんてことを言っているのだ。心配するなって方が無理ってもんじゃないか。
「どうしてそんなこと言えるんだよ!あんただってわかってねえじゃねーか!」
「お前がそう言うんだったら俺だって同じだよ……お前が何考えてるかなんてわかんねぇよ」
「俺が何を言っても信じることができないんじゃなかったのか?」
「俺は信じたいと思ってるさ。けど、お前を信じることで今の関係が崩れるかもしれないって思うと怖いんだ」
「別に、今のこの関係に固執しているわけじゃないんだけどね」
「ああもうわかったよ!そこまで言うんならやってやんぜ!!」
「……なんでこうなった」
「そりゃあ、君が僕のことを好きだって言ったからだろ?嘘つき」
「うるせえよバーカ!!つか、なんでお前こんなことになってるんだよ!?」
「それは僕の方が聞きたいくらいだけど」
「さて、それじゃあ聞かせてもらおうかな」
「……うん。そうだね」
「実は僕は──」
***
『君』のことが好きだったよ。
ずっと好きだった。
いや、『今も』好きなままだよ。
だって君は僕の初恋だから。
あの時のことを思い出そうとするだけで胸の奥がきゅっと苦しくなって、顔が熱くなる。
でもきっと、もう二度とあんな風に話すことはないと思う。
なぜなら僕らは今、別々の道にいるからだ。
同じ場所にいた頃とは色々変わってしまったから。
例えば身長とか、体重とか、体型とか。
声変わりをした時期が違うせいか、喋った時の印象は昔に比べて少し変わった気がする。
でも本質は違う。この世界の人間じゃない。
だからなんでもありなんだろ? さあ、ゲームを始めようぜ! お前らが望んでるのはこういう展開なんだろ? ああ、そうだよ! 俺が欲しいのはこの先にある未来だけだ!! お前らはそこで指くわえて見てればいいんだよ!!! 俺はもう止まらねぇぞ? 絶対に止めさせねえからなぁッ!? ははは