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💙青椒肉絲🧡
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#あべさく
うめぼし
439
楪羽*yuzuriha*
1,542
緊急搬送のために駆けつけた救急車の中。
応急処置を受け、落ち着きを取り戻した春菜の横には、佐久間が寄り添っていた。
救急車の警告音が鳴り響き、病院へと急ぐ。
「ねぇ、佐久間くん……」と、春菜は口を開いた。
「あの人、玄関の鍵は閉めたって言ってた。 警察の人たちも、管理人さんにマスターキーで開けてもらったって……。佐久間くんは、どうしてあんなに早く部屋に入って来られたの?」
問いかけられた佐久間は、少しきまずそうに頭を掻きながら、ふっといつもの悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「あー……実はさ。俺、管理人さんを待ってられなくって。隣の部屋の人が様子を見にドアを開けた瞬間に、勝手に上がり込んでさ。そのまま隣のベランダの避難はしごの仕切りを蹴り破って、春菜のベランダへ飛び移ったんだ」
「えっ……!?」
「で、春菜のベランダにあった散水ノズル?あれでリビングの窓ガラス、力任せに叩き割って入ったんだよね。あはは! 春菜の部屋のガラス、めちゃくちゃにしちゃってマジでごめん!」
隣の部屋の人にも今度謝りに行かないとなー、と、あっけらかんと笑う彼。
その常軌を逸した行動力に、驚きと同時に愛おしさが春菜の胸に込み上げる。
しかし、彼のその「右手」が視界に入った瞬間。
「っっ!!」
春菜の言葉は完全に凍りついた。
「待って……佐久間くん、その手……!」
彼の右手の甲や腕には、無数の鋭いガラス片で傷ついた赤い血がじわりと滲んでいた。
頑丈なガラスを無理やり叩き割ったのだ、無事で済むはずがない。
「た、大変…っ、すぐ手当しないと!どうしよう、 私のせいで、怪我までさせて……っ!!ごめん…っ!本当に、ごめんなさい……つ!」
また視界が涙でボロボロと歪み始める。
自分の不用意さのせいで、彼を傷つけてしまった。
そんな春菜を見て、佐久間は慌てて左手をぶんぶんと振った。
「謝らないで、だいじょーぶ! こんなのただの擦り傷だって! 春菜が無事だったんだから、俺の怪我なんてノーカウントだから!」
いつもの眩しい笑顔で、春菜を安心させようとする彼。
でも、春菜は気付いてしまった。
「大丈夫」と笑う彼の手が、小刻みにガタガタと震えていることに。
彼女を助けるために我を忘れ、ベランダを飛び移りガラスを叩き割る恐怖も痛みもすべて置き去りに飛び込んできた彼。
男を殴り倒し、彼女を安全な場所へ運び出し、警察と救急隊に引き継いだ今――。
ようやく彼自身の緊張の糸が切れ、抑え込んでいた恐怖が押し寄せてきているのだ。
「佐久間くん……っ!」
春菜は震える佐久間の手を両手でぎゅっと握り、そのまま彼の胸に顔を埋めた。
「ごめんね……本当にごめんね……っ」
「春菜……」
佐久間は一瞬驚いたように息を呑んだが、すぐに傷がない方の腕で、春菜を壊れ物を扱うように、だけど強く、強く抱きしめ返した。
「……怖かった。本当に怖かったんだよ、春菜」
彼女の髪に顔を埋めながら漏れ出た佐久間の声は、ひどく震えていた。
「春菜からの電話が切れた瞬間、頭の中が真っ白になって……もし間に合わなかったらって思ったら、今でも心臓がバクバクして止まらない。でも……本当によかった。春菜を守れて、本当によかった……っ」
彼の背中に回した春菜の手にも、自然と力がこもる。
走る救急車の中で、2人はお互いの体温と、まだ激しく波打つ鼓動を確かめ合うように、静かに、静かに抱きしめ合っていた。
コメント
1件
第10話、読み終わりました……!佐久間くん、まさかベランダ飛び越えてガラス叩き割って突入してたんですね。常軌を逸してるのに、その行動力に胸が熱くなりました。でも何より刺さったのは、あの後の「震える手」。強がって笑う彼の緊張の糸が切れる瞬間、春菜と一緒に泣きそうになりました。互いの鼓動を確かめ合う抱擁がもう……尊すぎて、しばらく動けませんでした。本当に素敵なシーンでした🌷