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■03■
「落ち着けっ!!散らばるなっ!!」
「陣形を崩すなっ!!」
旅団の先頭に居たシンハは、慌てて馬を向かわせる。
山賊達は、シンハの動きを止めようと襲い掛かってきた。
シンハは、一人目の剣ごと腕を薙ぎ払い、二人目の頭蓋を唐竹割に、
三人目は肩口と首の間、骨の無いやわらかな部位へ剣を突き立てた。
シンハと部下の二人は、集結すると山賊達を次々に血祭にあげてゆく。
「個々は大した事はないっ!!」
「敵の数は多いが、分散させるんだっ!!」
馬を大きく歩ませ山賊を散らし、シンハは怯んだ山賊の首を叩いて頸動脈を断つ。
所詮は烏合の衆、動揺せずに対処すれば全滅は無理でも、撃退出来ない事はない。
そうシンハは判断した。
馬の首へすがりつこうとした山賊の胸へ剣を突き立て、そのまま引きはがす様に上へ跳ねあげた。
衣服ごと胸を切られた山賊は、怒号をあげつつ地面へと大の字に倒れる。
その男の胸には、大きな翼の入れ墨が彫られているのが目に入った。
ハッと、シンハはそれを確認すると、付近に転がった山賊の死体を見渡した。
シンハの近くに転がる男には、頬に大きく入れ墨された翼。
その隣で痛みにのたうつ男、その手の甲に彫られた翼。
俯せになって呻く男の両足のふくらはぎに彫られた翼の入れ墨。
全ての山賊の体には、どこかしらに翼の入れ墨が刻まれていた。
「まずいぞ…っ」
「コイツラっ!山賊じゃないっ!!」
「コイツラは、ザジー教徒だっ!!」
シンハは大声で仲間たちに警告を発した。
山賊達が体に入れていた入れ墨は、”ザスグリィフ鷲”の翼を模したものであり
バトラマールナ女神と、それを崇拝するザジー教のシンボルマークだ。
バトラマールナ女神は、破壊と死を司る。
その信徒達もその神の特性を尊重し、死と破壊を行うことを教義にしている。
所謂、狂信者達だ。
このパルヒ地域で猛威を振るう山賊に、ザジー教徒が多数出没する話は聞いていた。
自らの死ですら、救済と考える狂信者達と戦う。
敵の数を減らせば退却する…。
そんな考えは、彼らザジー教徒達を相手にした場合には、当てはまらないかもしれない。
ぞぉっと冷たい物がシンハの背中に走った。
しかも、この場での兵力は圧倒的にザジー教徒の方が多い。
でも、彼等の戦い方は玉砕覚悟の特攻が基本で素人同然だ。
商会の私兵と、|戦《いくさ》を生業としている我々が緊密に連携すれば、まだ勝てない戦いではないと踏んだ。
実際に多数の山賊が、この場で倒れてのたうっている。
「よぉしっ!押し返せっ!!」
「我々が先方に立つ!!」
脳裏に湧いた懸念を払しょくし、シンハを中心にして旅団側は迎撃体勢を整えた。
その矢先にシンハの乗った馬は、大きく体勢を崩す。
倒れ込む馬から手綱を離し、シンハは馬から飛び降りた。
馬の後ろ脚は幅広剣でスッパリっと両断され、土煙と悲鳴をあげて馬は倒れる。
「どうやら、アンタが一番エライ奴だねっ!!」
そう告げるのが早いか、ジャイラダは大きく幅広剣を振り被る。
そして、着地した直後で不安定なシンハへと切りかかった。
剣での防御が間に合わず、シンハは手甲で鉈を受ける。
ズシンッと強く重い一撃がシンハの腕へ伝わり、受けきれない衝撃で自らの腕が兜へとぶつかった。
全体重をかけたジャイラダの一撃に、シンハの意識は身体から弾き飛ばされそうになる。
だが、彼は反射的に剣を横一閃に振るい反撃を繰り出す。
鋭い反射神経でジャイラダは飛びずさって、シンハの剣をよけた。