二階へ上がり、俺の部屋へ。
これが初めてではないのに酷く緊張する。先輩のシスター服が魅力的すぎるせいだな。
「どうぞ、入ってください」
「お邪魔します……」
ぎこちない動きで先輩は、俺のベッドに腰掛けた。その隣に俺も座る。
「「…………」」
変に緊張しまくって、お互いに何を話していいか分からない状態におちいった。イカンな……せっかく先輩がコスして来てくれたんだ。なにか話さないと。
必死に思案するが、思い浮かばない。
こういう時ってネタが中々出てこないものだな。けれど、それでも俺は思考を巡らせて言葉を絞りだした。
「先輩……朝、食べました?」
そう聞いた瞬間――“ぐぅぅ……”と音が鳴った。先輩のお腹からだ。
思わず見つめると、先輩は顔を真っ赤にしてお腹を押さえた。
「……た、食べてない」
「あー、えー…そうっぽいですね。親父に頼んでおくので、あとで一緒に食べましょう」
「う、うん……ありがとう」
「食べて来なかったんですね」
「普段は朝食抜きなんだ」
「どうしてです?」
「ダイエット……してるから」
「はい? 先輩、こんなに手も足も……ウエストだって無駄がなくきゅっと引き締まっているじゃないですか。これ以上、痩せなくてもいいのでは」
「プリンとか甘いものが好きだから、ついついデザートを食べ過ぎちゃうの。だからね、体型維持の為にがんばってる」
そういうことか。へえ、先輩って甘いものが好きなんだなあ。それで水泳と朝食抜きを……他にも無茶していそうだな。
でも、それが先輩の美貌の秘密か。やっぱり、美人でも努力はしているんだな。
「そういうことでしたか。ちなみに、俺はちょっとムチっとしているくらいが好きですよ」
「え、愁くんってそうなんだ。じゃあ、ちょっとくらい食べても平気かな」
先輩は満足そうに納得していた。すっかり緊張も解れ、俺も自然となっていた。
こうして話せば何とかなるものだな。
「いいと思いますよ」
「少しだけ愁くん好みになってみるね」
「それは楽しみですね」
――って、アレ。
俺好みになってくれるって……それは、俺の為に努力してくれるってことだよな。……つまり、えっと……どういうことだ。
聞いてみようとすると、先輩はベッドへ寝転んだ。
「……ねえ、愁くん。今、部屋に二人きりなんだよ」
「は、はい……そうですね」
「しかも、わたし男の子の部屋に連れ込まれちゃってる」
「えっと、はい……」
「なにかしてくれないの……?」
「!?」
なにかってなんだー!?
……いや、分かってはいるけど。いるけれどっ。
これ、冗談だよな。
まさか先輩が望んでいる……?
馬鹿な、そんなはずは――いや、ワンチャンあるのか。今こそがその時なのか。選ぶ時が来たのか。人生最大のチャンスが訪れたというわけなんだよな。
なら、ここは漢として『YES』を選ぶ。
「ゲームとか」
「って、そっちでしたか……」
ですよねぇ、ちょっと期待したが……先輩がそんな淫らな発想をするわけがない。
「愁くん、もしかして変なこと考えてた?」
「そ、そんなわけないですよ。先輩とは純愛です!」
「……え」
「……あ」
俺はつい勢いで『純愛』だなんて柄にもないことを口走ってしまっていた。なに言ってんだ、俺ぇ。
「良かった。わたしって優しくしてくれる人の方が好きだから」
ひょっとして俺は試されていたのだろうか。だとしたら、耐えた俺、エライ! なんて自画自賛してみるものの内心では『YES』を選んでしまっていたんだけどな。
先輩が最強に魅力的すぎるのがいけないんだ。このシスター服のコスは本当に素晴らしい。現代芸術だ。
「先輩、俺は……」
「大丈夫。言いたいことは分かってるから。愁くんが優しくしてくれるなら、わたしも優しくするね」
腕を伸ばし、俺の頭を手繰り寄せる先輩。
俺の耳元がちょうど先輩のお腹に触れる。
……こ、これは。
凄い体勢になってしまった。
先輩のお腹はフニフニで柔らかくて、なんだかとても癒された。……って、先輩のお腹に触れてしまっている。顔が、耳が。
幸せすぎる……。
「あ、あの……先輩」
今度は頭を|撫《な》でられた。
なんてことだ……先輩の優しさしか感じない!
これが“純愛”かぁ……。
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