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みなさんは事故物件というものをご存じだろうか?
マンションなどで、前の住人が死亡した部屋などのことだ。私の仕事は、そんな「事故物件」と呼ばれる部屋に対して、何か異常がないかを調査することだ。方法は簡単で、その事故物件にしばらく実際に住んでみるのだ。その際、様々な機材を駆使して記録を残す。それを見せて、「ほら、何もなかったでしょ?」ということを証明するのが主な仕事だ。
が、たまには「何かあってしまう」こともある。それがこの仕事の難しいところだ。といっても、私が実際に事故物件に住むわけではない。昔はそうしていたが、今では内もなかなかの規模になったので、私一人ではまわせない。そこで、「調査員」という名目で、バイトを雇っているのだ。
今も一件、松本さやかという女子大生の調査員の報告を待っているところだ。ところが、その松本から、
「調査員辞めます。もう無理!」
という連絡があった。ああ、今回は「何かあった」パターンか……。こういう場合、私が代りに機材を回収し、残された記録を確認して報告書を作らなければならない。面倒だ……。私は調査事務所の椅子に座り、ため息をついた。
だがいつまでもこうしていられない。私はさっそく調査を開始した。まず、過去の報告書のファイルを取り出し、目を通す。
「なになに……前の住人は女性、だが死んでいないな。普通に引越している。ではいったい誰が死んだんだ? ええっと……ああ、これか。女性が引越す前、強盗が侵入している。その男が、近所の人の通報で駆け付けた警察官から逃げようとして、ベランダから落ちて死んでいるのか。迷惑な話だ」
部屋で何があったかは把握した。後は現場に行って、機材を回収し、記録を確認しなければ……。私は車で事故物件に向かった。車ならそう遠くはない。部屋はすぐに見つかった。私は車を降り、部屋に向かうと、預かった鍵を使って扉を開けた。部屋には機材がそのまま残されている。
「さて、記録を回収するか」
内で使っている機材は、普通のカメラが一台、サーモグラフィー機能付きのカメラが一台の計二台。それからなんという名前か知らないが、電磁波の異常を感知したら警報が鳴る装置、それと音声記録用のレコーダーが一台だ。音声はカメラでも記録できるが、レコーダーの方が故障が少ないので、念のための予備だ。それらを回収すると、私は又また事務所に戻った。
「さて、まずは早送りできる録画画像から確認するか……」
ということで、私はさっそく早送りしてみた。まずは松本調査員が機材を設置、録画のスイッチをいれるところから始まっている。何か異変があるまで早送りしをする。
機材を設置し終わった松本調査員がちょこんと座っている。まあ特にすることもないので、何もなければ楽な仕事だ。松本調査員も、最初こそ大人しくしていたが、やがて退屈してきたのだろう。スマホを見ながらくつろぎ始めた。しばらくは何事もなく、時間が過ぎる。
「やはり、何か起こるとしたら夜かな」
やがて夜になり、松本調査員は寝てしまう。そして深夜、異変は突然訪れた。
「な……なんだ? 」
松本調査員の寝ている布団が、不自然に動き出した。私はサーモグラフィーで布団をチェックした。すると、何か冷気の塊のようなものが布団の上に漂っていた。
「これは……何かが松本調査員の寝ている布団に乗っているのか?」
私は早送りをとめ、じっくりと画像を注視することにした。早送りのときには気づかなかったが、電磁波観測装置が異常を感知し、警報音を鳴らしている。そんな中、布団がゆっくりと動いていき、寝ている松本調査員の体が露出した。
それだけではなく、今度はゆっくりと松本調査員の服がめくれ始めた。
「これは……寝ている女性に悪さを働く幽霊が出たということなのか?」
そんな状態でも松本調査員は目を覚まさない。だが、画像を拡大してみると、苦しそうな表情をしている。これは、もしかしたら寝ているのではなく、意識はあるが金縛りで動けないのかもしれない。画面の中ではあいかわらず何かが松本調査員の服をまくりあげている。さらに下着もめくれ始め、松本調査員は真っ裸にされてしまった。
(続く)