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14 ◇心強い助っ人現る
いつ頃だったろうか!
まだ私が結婚する前の頃だったと思う。
自分からマリリンにしかけて互いの認識度を改めてチェックした
ことがあった。
自分が持っているある感情をマリリンにも持っていてほしいっていう
気持ちがあったのだと思う。
「ね、マリリン……覚えてる?」
「答えらんないね。そんな聞き方じゃ」
「マリリン、私に真剣告白したことあったでしょ?」
「『僕ね、 姫苺 ちゃん……男の子のことが好きなんだ』って言ったこと?」
「はぁ~、すごい一字一句同じで 姫苺 ……感激感動ぉ~。
やっぱりあれ? ゲイっていう意味合いのことだったのかな?」
「 姫苺はお利巧さんだね。そだよぉ~。
俺なんで 姫苺 に告白したのかねぇ~」
「そりゃあ、あたしのこと信頼してて、愛してたからだよ」
「信頼してて……は分かるけど、何で俺が 姫苺を愛してるって
思うんだよ」
「マリリン、両親を愛してないの?」
「う~ん、よく分らんけど愛してないことはない……かな」
「じゃぁ、私のことは愛してないの?」
「まずその質問おかしくない?
恋人同士でもないのに愛が存在すんのか?」
「う~ん、私もそう思うけどさぁ……私はマリリンの恋人じゃないけど
マリリンを愛してると思うんだ。
何愛だろうねぇ~。へへっ。
マリリンがいきなり天に召されたりなんかしちゃったら
号泣するくらいにはね。
肉親愛に近いのかもね」
「肉親愛か。
あんまり考えたことなかったし、 姫苺に愛があるかどうかなんて
分かんないよ」
「そっか、 姫苺 超ぉ~さびしっ」
私は泣き真似をしながら言った。
「 姫苺 ……」
「何?」
「困った時はいつでもいいから、俺を頼れ!」
「うん、ありがと」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
あの時、マリリンは私の予想を遥かに超えたことを私に言ってくれた。
小さな頃、マリリンより身体の大きかった私はマリリンを弟のように
思っていたが、身長も私を遥かに抜き、逞しい大人の男になった時には
マリリンのことを兄のように感じたものだ。
「困った時はいつでもいいから、俺を頼れ!」という、力強いセリフは、
私が困難に陥った時、いつでも頼れる人がいるというお墨付きをくれたも
同然でうれしかったな。
そして……この私の一世一代の大ピンチに『俺に話してみる?』と
促してくれる目の前の男に、あの時の言葉通り私は、
慎を頼り、転がり込むことにしようとの企みを胸に、今までの
私たち夫婦の混迷経緯を話すことにした。
「 姫苺 の中では冬也さんとのことどうするか決まってんの?」
「どう考えても元鞘は無理!」
「じゃあ、離婚することに決めてるんだ?」
「うん、そこはねもう何も迷いはないのよ。
ただ……離婚って一口にいっても相手のあることだから、最小限冬也と
この問題で対峙しないといけなくなると思うのね。
私はそこが一番嫌なんだ。
だからできるだけ離れた場所から……
夫の顔を見なくて済む場所から……
離婚までの話し合いをして進めていきたいと思ってるのよ。
それと中途半端な状態の中で両親に伝えるのも何だか嫌なんだぁ~。
どうすればいいか、悩むわぁ~」
「オーケー。
ならさ、問題が片付くまで行く当てがないなら俺ん家へ来れば?」
「マリリン~、ほんとにいいのぉ~? 彼氏に振られたりしない?」
「おま……お前ねぇ……今それ言うか!
一緒に誰かと住んでたらこんなこと言わんだろ?」
「そうだよねぇ~、ゴメン……怒んないで。
何か申し訳ないっていう遠慮がわたくしめの中にありまして、
つい思ってもないのにおちゃらけてしまったの。スマヌ」
「……ったくぅ」
「今の私には慎さまが神、仏に見えます……デス」
「そんなに恐縮しなくてもいいぞ!
困った時はお互いさまって言うだろ?」
「ありがと、持つべきものは幼馴染だよねぇ~。
んでね、私日曜の夕方までは実家にいるつもりなのよ。
だから実家を出たらそのままマリリン家に行かせてもらってもよい?」
「おぅ、いいぜ! 合鍵も作っとくよ」
マリリンの今住んでる所なんて知らないから、家に取りに帰って
持ってきた私の手帳に、マリリンに住所と行き順やらいろいろと
書いてもらった。
マリリンはマンション暮らしで、お客様用駐車場っていうのもあるらしく
すごく助かる。
これでひとまず、自分のねぐらをどこにするかという心配事が消えた。
空飛ぶ鳥で例えるなら、空を飛び続けなくても済む止まり木が出来た
ようなものになる。
緊張のほぐれた私は、ほっと安堵の吐息をもらした。
まだまだ先が見えず不安だらけだけれど、少なくてもひとり
私に今起きている悲しい出来事を知っている人がいて、
私を支えてくれようとしている人がいることは有難いことだ。
そんな風に心からそう思えたことで、私は少し勇気と力が湧いてきた。