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「五億回の動きの向こうに。」
偶然、隣のベッドにやって来たのは──幼馴染のkamo
耳に届いたのは、誰にも見せなかったkamomeの弱さ。そして願い。 心の奥で、翔は静かに決意を固めていく──。
翔編 第二話「重い一言、再来の向こうに。」
病室の時計の針が、ゆっくりと音を立てて進んでいた。
入院生活にも、少しだけ慣れてきた頃。
それでもやっぱり、学校に行けず、部活にも出られない退屈な日々は、俺にとって息苦しかった。
「……はあ」
ため息をつき、カーテンに視線をやった。
ちょうどその時だった。
廊下から足音と、かすかな話し声が聞こえてきた。
──新しい患者が入ってくる。
そう思った瞬間、胸の奥が妙にざわついた。
そして、ガラリとドアが開く。
「……ここ、でいいですか?」
聞き覚えのある声。
一瞬で心臓が跳ねた。
俺は慌てて目を閉じて、寝ているフリをした。
(……まさか、ほんまに?)
布団の中で息を殺しながら耳を澄ませる。
小さな足音。
ベッドの横に立つ気配。
「えっ?……翔ちゃん…?…」
掠れた声。
震える吐息。
やっぱり、かもめんやった。
──何年ぶりやろ。
中学校に入学から、ずっと顔を見てへんかったのに。
よりによってこんな場所で、また会うことになるなんて。
布団越しに、かもめんの気配を感じる。
しばらく黙ったあと、小さな声が零れた。
「……俺だけだと思っとってたのに…もしかして…翔ちゃんも、病気…?…」
その言葉が胸に突き刺さった。
苦しそうな声。
ひとりで抱えてきた不安。
それでも俺の前では泣かずに、必死に耐えてきたんやろう。
(……あいつ…あいつだってしんどそうやのに……なんで人の心配ばっかしてんねん)
目を開けて声をかけたい。
でも今は、あえて動かなかった。
自分が何を言えばいいのか分からなかったからだ。
──ただ、寝息を装いながら、俺はkamomeの小さく震える声を聞き続けた。
「……俺、頑張るから……だから翔ちゃんも……」
小さな声が、俺の胸を熱くする。
思わず拳を握りしめる。
(ほんまに……負けてられへんな)
自分も苦しいのに、人のために願える奴。
──あいつは昔から、そういうやつやったなぁ。
カーテンの隙間から差し込む光が、ぼんやりと瞼を照らす。
その光の向こうで、確かにまた二人の時間が始まろうとしていた。
今回はここまでです😄
kamome視点もあるので、是非見てみてください!
いいねもお忘れなく!
それでは時間を下さり、ありがとうございました。