テラーノベル
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13時。
マリノアルは自室を後にし庭園へと向かう。クオールは1歩後ろに下がりマリノアルに着いていく。
屋敷の中は静まり返る。マリノアルが庭園を見て周る際の約束事。
マリノアルが自室に戻るまで決して部屋から出てはならない。
2年前倒れて以降、専属執事のクオール以外誰1人としてマリノアルと顔を合わせていない。マリノアル本人が拒絶をしたからである。
何度も会いたいと申し出ても全て拒絶される。その理由はずっと、分からないまま。
「マリノアル様、私はここで待機していますので何か御座いましたらすぐに鈴を鳴らしてください。」
庭園の入口までなら、と同行を許されただけ僥倖。本当ならば庭園の中まで共に行きたいがマリノアルは1人を好むようになった。
クオールは本音を隠すように鈴を揺らす。
クオールが持つ鈴とマリノアルが持つ鈴は2つで1つ。マリノアルが創ったこの鈴は見た目はどこにでもある普通の鈴。
チリンと小さな音だが魔法で作られたこの鈴はどこにいても鈴を持つ者の耳に音が届くようになっている。
庭園に出る時はこの鈴をお互いに所持することでクオールを入口までの同行に許可する条件とした。
「分かっている。お前の方も何かあればすぐに鈴を鳴らせ。いいな?」
「承知しております、マリノアル様」
マリノアルはそのまま庭園に足を踏み入れその姿が見えなくなるまでクオールは微動だにしなかった。
本日は快晴。雲1つなく時おり風が吹き木々が戦ぐ。
とても心地良い。
広大な庭園にはいくつかガゼボがある。見て周る、などと言ってもガゼボから庭園を眺めるだけ。
様々な花が庭を彩る。風が戦ぎ鳥が囀り、ひらひらと蝶が舞う。
静かで穏やかで緩やかな時間。
こんな日々を送れる毎日を3年後、絶対手に入れる。誰にも邪魔されない俺だけの時間。
その為の準備を怠るわけにはいかない。誰にも悟られてはいけないのだ。
微睡む中、ふとテーブルの上にある本が目に入る。そうだ、今日は本を持ってきていたんだった。
ただの植物図鑑ではあるけれど、穏やかな日々を送れている今、心に余裕が出来たのか図鑑の内容も面白く感じる。一緒に持ってきていた手のひらサイズの砂時計を逆さに返し、読み始めた。
チリン
「……ん…?」
チリンチリン
チリチリチリチリチリーーーーーーーー
小さいはずの音は激しく鳴り続ける。
これ程激しく鳴るというのはクオールの身に何かあったということだ。マリノアルは急いで入口に戻ろうと立ち上がった時クオールがこちらに走って来るのが見えた。
「っマリノアル様っ!!!!」
その顔は青ざめ、声には焦りがはっきりと現れている。
「何があったクオール」
「っあのっ……」
息を切らし言葉に詰まるクオールははくはくと口を動かすだけで音にはならない。
「クオール」
マリノアルの落ち着いた声にクオールは冷静さを取り戻し意を決して言葉を紡ごうと口を開いた途端、別の声に遮られた。
「君がマリノアルか?」
ドクンと激しくなる心臓。
忘れもしないこの声。
幾度となく聞いてきた声。
声変わり前の自分より少しだけ高い幼さが残る声。
「……っルノ……ラズファル……殿下……」
声が、掠れる。
何故、ここに?
ルノと初めて顔合わせをするのは3年後の俺の誕生日のはず。
ずっと変わらなかったのに、何故こんなに早く現れた?
ぐるぐると頭の中で疑問が沸いてくる。何故?何故?何故?何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ
ただ1つ分かるのは
おそらく俺はまたこの男に殺される。
それだけだった。
月咲やまな
877
つばのさら
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植まどか
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コメント
1件
つばのさらさん、第4話、読み終えました。まず、ルノの声が聞こえた瞬間のマリノアルの「ドクン」という心臓の描写。彼の世界が一瞬で歪む感覚が伝わってきて、鳥肌が立ちました。クオールが青ざめて走ってくる姿も、あの鈴の伏線がここで効いてくるのか、とじわじわ来ますね。それにしても、ルノとの再会が本来の予定より早い――「3年後」の約束がなぜ破られたのか。この違和感が、これからどう暴かれていくのか、続きが気になって仕方ありません。