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夜の学校。
放課後の静けさが残る屋上に、美羽は立っていた。
胸の奥で心臓が暴れる。
_「 もしも会うなら、屋上で 」
その言葉だけを頼りに、彼女はここに来た。
風に髪を揺らされながら待っていると、扉がきしむ音がした。
ゆっくりと姿を現したのは___
「 やっぱり君だったんだ 」
橘 蓮 だ っ た 。
蓮の声は、静かで、それでいてずっと隠してきた感情がにじんでいた。
美羽の目が大きく見開かれる。
『 え……蓮くん……? 』
蓮は一歩、彼女に近づいた。
「 ずっと、ノートで君に言葉を届けてた。
名前を出さずに、正体を隠して……
でも本当は、最初から分かってほしかった 」
美羽の胸が熱くなる。
( あの優しい言葉。
迷ったときに寄り添ってくれたのは……
やっぱり、この人だったんだ )
「 陽向も君に想いを伝えてるのは知ってる。
だから……君が誰を選ぶかは、君の自由だ 」
蓮は視線を落としながら、かすかに微笑んだ。
「 でも、俺は美羽のことが好きだ 」
その言葉に、美羽の瞳から涙がこぼれた。
破れたページの続きが、今ようやくつながった気がした。
『 私も……あなたが好き。
ページの向こうで支えてくれたのが、蓮くんで
よかった 』
蓮は驚いたように目を見開き、次の瞬間、安堵のように柔らかな笑みを浮かべた。
二人の間に、夜風が優しく吹き抜ける 。
これまでノートの中でしか交わされなかった想いが、ついに言葉となって響き合った。
美羽は心の中で呟いた。
( もう、ページの向こうじゃなくていい。
これからは隣で、一緒に歩いていくんだ_ )
屋上の空には、一番星が静かに瞬いていた。